サークル、カレチャ、竜虎大学……何も起こらないわけもなく
とりあえず話に一段落をつけたところで解散となり、俺とリーベ、シャーリヒッタ、ミュトスは山形家に戻ってきた。
そしていつものごとく飯食ってお風呂入って、落ち着いて俺の部屋に集合してこそこそ話だ。これもなんだか定例じみてきている気がしなくもないけど仕方ないよね、話の内容が話の内容だし。
「さて……なんていうかその、えらいことになったなあ」
「きゅうー?」
昨日今日といろいろあったし、明日も学校だしでもう寝たいよーってのが本音なんだけど。そこはグーッと堪えて俺ちゃんが切り出せば、何も知らないし気にする必要もないアイが俺に抱かれつつ鳴き、精霊知能達は難しい顔をして黙り込んだ。
この三人さえこういう顔をする、それほどの事態なんだ……ウーロゴスを取り込んだアンドヴァリってのは。人間がモンスターになったのも大概なのを、さらに超えて概念存在の権能と融合したってんだからね。
実際、概念存在の力を手に入れる人間ってのも過去にはいたとは思う。神話とかにもそういう逸話がなくもないだろうし、悪魔憑きだって限定的ながらその分類に入ると言える。
だからアンドヴァリの場合も、たまにはあるよね! と言ってしまえなくもないんだけど。この際問題なのは、やつの場合は異世界の神の権能を勝手に取り込んだということだ。
言っちゃうと異世界の時点でシステム領域案件だし。
融合にあたっての触媒というか要石にまんまアウトなスレイブコアを使ってもいるし。
そもそもからしてアウトなことしかしてない100%テロリストだし。
──そして最後に、今においてはすでに精霊知能であるミュトスの権能を無断で奪い取ったに等しいし。
もうね、完全無欠。全方位全角度どこからどう見ても完璧にアウトだわアレクサンドラ・ハイネン。
どうあがいてもシステム領域が直接出張る対象にやつ自身も入ってしまった。元々ウーロゴスをメインに相手する予定だったのが、そのウーロゴスって定義の中にわざわざ自分から入っていったんだもの。
相手するしかないよね。
「アンドヴァリの元々の目的からしてウーロゴスと一体化することだったんだろう。つまりどうあがいても遅かれ早かれ、俺達システム側もアンドヴァリを抑えなきゃいけなかったんだなあ」
「意味が分かりませんねー……システム領域を抜きにしても、なんで人間であることを捨てて概念存在になろうとするんでしょうかー? 権能だけが取り柄の、それ以外は現世のイメージ次第という虚ろなのが彼らなのにー」
「力が欲しかったとかかァ? いや、にしてもアンドヴァリは単純な戦闘力ならそんじょそこらの概念存在より上だしなァ」
リーベとシャーリヒッタがアンドヴァリについての疑問に首を傾げる。そう、そもそもアンドヴァリは何を目的にウーロゴスと一体化したんだ?
概念存在の力を得ることで得られるメリットが、S級探査者でもあるやつにはあんまりないように思えるんだよなあ。言われてるように戦闘力的にはすでに高位の概念存在に匹敵してるし。
おそらくは概念存在、神になりたいってのはなんとなく分かるんだけど。それにしたってあんなもん現世のイメージで容易く悪魔になったりもする不安定なものでしかない。
ああ、でもやつにそのへんの事情は分からないのか。だから一見して絶対的存在に思える神という概念存在になることを目論んだ、とか。ありえなくはないな。
「権能由来の現象を起こしたかったとかでしょうか? いえそのー、不肖私の権能なんぞが、こちらの世界でどれだけこれだけカエンダケって感じではごぜーますけどもー」
「権能を使って何かをすることが目的、かァ。その線も考えられるなァ……何がしてぇんだか、アンドヴァリってのは」
「口振りからするとー、ソフィアかヴァール、エリスちゃんにヒントがありそうですねー……不老体質ー?」
「やっぱそこ、思いつくよなあ……」
語られたアンドヴァリの言葉、そこで名指しされていたのがソフィアさんあるいはヴァール、エリスさん。あと俺。
このうち俺だけは単純にやつから見て心底迷惑な存在だから挙げたと思われるため除外するとして、残る三人に共通する点を挙げるとすると……リーベの言うように不老であること、ってのがまず目立つんだよね。
不老。不死まで併せて不老不死。人類にとっては未来永劫見果てぬ夢として掲げるものの一つだろう。
アンドヴァリもそれを狙っているのだとしたら、なんとなく動機が見えてくる気はしなくもない、のか? 判断材料が少ないから、コレと断言するのも危険だが、さて。
「────ん、メッセージ?」
「誰からですー? ミッチーから伝道通信vol.168とかですかー?」
「いや違、ってか何それ怖ぁ……」
メールマガジンまでやってんのかあの人!? 手ぇ広すぎないか!?
サラッと当たり前のように謎の、そしてvol.168まで続いているらしい何かを示唆されてビビる。救世の光の事業が大分手広いぞ……
それはともかくメッセージは宥さんからだ。実際にお会いする機会が多いわけじゃないけど、割と頻度高くやり取りしてる人だね。
なんならネットだとほぼ毎日香苗さんと一緒に救世の光チャンネルに出演していたりして、たぶん会っても久々感はないと思う。
あと認定式の次の日とか、句読点が飛んだメールをくれたりもしたし。宥さんの伝道師化が止まんねー。
まあそんな話は置いといて、俺はメッセージを見た────見て、そして静かに呻いた。
「…………マジか」
「? どうしたんですか公平さんー、何かトラブルでもー?」
「いや、トラブルってか……宥さん経由で、竜虎大学のカレチャから依頼が来た。サークルの拠点を、一緒に探ってほしいってさ」
それは思いがけない、けれどよくよく考えればあってもおかしくない話。
サークルの前身とも言えるカレチャ、カレッジサーチャーズ。7月にお邪魔した竜虎大学にある探査者同好会から、宥さんを通じて俺宛に依頼が来たのである。
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