良くも悪くも筋を通すタイプの聖女様
俺が昨日一日で悪魔を四体、仕留めたこととか。それを受けて愛知さんが相当高位の概念存在をも喚び出せることなんかをも受けつつ、ヴァールはふむと考え込んだ。
おそらくは俺が捕縛した悪魔達……セーレに続いて時止めの悪魔アガレス、少女悪魔オノスケリスについてどう扱ったものか判断しているんだろう。
彼ら彼女らは大変貴重な情報源だ。場合によってはサークルや過激派どころか、委員会にまで直通で辿り着けてしまいかねないほどに。
取り調べない理由はないわけなんだけど、ここでそれをやるのもって話だ。だって現状、システム領域の話をするにあたって適さない人達がこの場にはいるんだもの。
そうだねシャルロットさんと愛知さん、あとオールストレムさんだね。
この人達だけは俺の正体とかその他諸々この世の真実について知らないので、そんな人達の前で軽々に権能絡みの話とかウーロゴスが絡む話をして良いようには思えないのだ。
ヴァールも同じことを思ったんだろうね。
ちらりと彼女らを一瞥して、なんでもないことのように言ってのけた。
「ふむ……それら悪魔についてはこの際、別口の話として後で考える。今問題とすべきはやはり昨日、アンドヴァリに何が起きたかだ。話を進めよう」
まあ、そうなるよね。その人達がいると踏み入った話ができない、となると一旦脇に置いて、ひとまずの本題を進めるしかない。
すなわち昨日、アンドヴァリが何をしたのかということだ。昨夜ヴァールが言っていた、ウーロゴスとの融合……とんでもない話だが、それは何を意味しているのか。
その情報共有こそが今は大事なんだ。
「お待ちください統括理事。我らがダンジョン聖教にも悪魔から吐かせた情報についての共有は──」
「止めなさい騎士団長、その要求はあまりにも厚顔無恥。ダンジョン聖教の恥になります」
「一方的に迷惑をかけた挙げ句、連携を拒否しておいて情報だけは要求する。厚かましい真似は七代目様とダンジョン聖教の名をいたずらに貶めるだけですよオールストレム騎士団長」
「む、う……! 失礼しました。どうぞ、話の、続きを」
悪魔達から得た情報を、身内だけで秘匿するつもりだと思ったんだろう。オールストレムさんが抗議しかけたところですかさずシャルロットさんと神谷さんが制止した。
まあ、そうだね。連携しませんってスタンスを今に至るまで崩してないのがダンジョン聖教なのに、情報だけよこせってのはちょっと都合が良い気はするかな?
ただ、俺個人としては問題ない範囲なら共有しても良いとは思うんだけどね。別にこれは競争とかしてるわけじゃないし。
一番大切なのはなるべく早く、なるべく被害を抑えて過激派やサークルの野望を食い止めることだ。それを成せるならぶっちゃけ、ダンジョン聖教の独断だろうが暴走だろうが俺としては全然構わないよ。
とはいえヴァールの立場からは当然そうもいかないし、そもそも今止めた通り二人の聖女さん達とてさすがにそれはないわーと思っているみたいだし。
シャルロットさんまで止めるのはちょっと意外なような気がしたけど、そろそろ俺にもなんとなく分かってきた。
彼女を見る。
「……どうされましたか? 私の顔に何か付いていますか、山形さん」
「あ、いえ……失礼ながら、モリガナさんは情報を必要とされているのかなーと思いまして。意外だなーと」
「たしかに必要ですが、それは筋が通りません。ダンジョン聖教聖女としてWSOとの連携を拒否した意味は、これでもこの私が、誰よりも一番理解しています」
「モリガナさん……」
……やっぱりだ。
この人、とにかく筋は通すタイプなんだな、本来は。
律儀と言うか真面目というか、アンジェさんが言うところの堅物でさえあるというか。とにかく自分の行動に一貫性を持たせようとしている人のように俺には思えた。
だからこそ認定式の日、わざわざWSO統括理事の下に向かい面と向かって連携拒絶を宣言したんだ。
黙って勝手な行動を取るなら取るで、先んじて周辺組織に断りを入れに来たんだね。
遡れば日本政府との密約を逆手に取っての独自行動も、裏を返せば密約を破らない形でどうにか己の意志を貫こうとした形になっているし。
ルールの穴を突きはしても、横紙破りそのものはしない。背くなら背くで筋は通す、少なくとも自分なりに──それがシャルロット・モリガナという聖女なのだと、俺はなんとなくそんなふうに察せられた。
「情報については後日、そちらにも多少の融通は利かせるがともかく今は置いておこう。ともあれ門前をアンジェリーナ達に、施設前の悪魔達を山形公平に任せたワタシと愛知、シャルロット、そして御堂香苗は施設内に入り、アンドヴァリと神谷、両者を発見した」
「アンドヴァリと神谷さんはすでに交戦状態に入っていました。狭い室内というのと、別に何か理由があったのか《土魔導》を使わず《風魔導》のみで戦っていたアンドヴァリと、それに対して形勢不利ながら渡り合っていた神谷さん、という印象を受けましたね」
そんなシャルロットさんのスタンスはともかく、WSOとしてもある程度情報共有はするつもりらしいヴァールが本題に戻った。
門を越え、入口を抜けて施設内。発見した頃にはすでにアンドヴァリと神谷さんが戦っていたのだ。
愛知さんが当時を振り返りご自身の印象を語られた。アンドヴァリ、あの《土魔導》を使わなかったのか。
でも考えてみれば昨日のあの部屋、戦闘痕はあっても大規模破壊の痕跡はなかったしな。自然公園をめちゃくちゃにしかけたことを思えばアレはたしかに《土魔導》を使ってなかったんだろう。
つまりは片手落ち。二つある武器の内一つを封じたまま、それでもやつは神谷さん相手に優位に立って戦っていたことになるんだな。
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