アレクサンドラ・ハイネン─ルビコンを渡ろうとするモノ─
宣言通りちゃぽっと入ってサクッと風呂を上がる。と言って、ちゃんと頭も身体も洗いましたし湯船に浸かって100も数えたけどね。いいお湯でしたー。
ってなわけでパジャマに着替えて香苗さんに交代。俺はリーベ達が待つ、俺の自室へと向かったのである。
「というわけでただいまー。みんな悪いな、集まってもらっちゃって」
「おかえりなさーい! いえいえ、お気になさらずー」
勝手知ったる俺の部屋、なんだけど美女美少女が3人もいるとなんだかいつもと違って見えるよね。なんかフローラルな匂いも漂うし。
そんな中でリーベ、シャーリヒッタ、ミュトスに迎えられて俺は、ベッドの上に腰掛けた。
するとシャーリヒッタが抱きついてくる。
最近ちょっと慣れてきたけど、やっぱりこの子だけはスキンシップが多いなあ、アイみたいだよ。
「父様! おかえりなさいませ!」
「うん、ただいま。改めて今日は助かったよ、家の周りを見ていてくれて」
「お安い御用です! 父様のお言葉なら悪魔の百匹二百匹、たちどころに全滅させられますよ!」
「怖ぁ……ま、まあほどほどにね、うん」
俺が絡むとたまに物騒なこと言うな、この子。さすがに元々の精霊知能としての役割が処刑人なだけはある。
悪魔にしろなんにしろ、今日俺がいないからとこのへんうろつかなくて正解だったな。この調子だとこの子は本当に侵入者に容赦はしなかったろう。
その頭を優しく撫でて労いつつ、俺はリーベともう一人、ミュトスを見た。
リーベと二人で何やらスマホで動画を見てキャイキャイ騒いでいて楽しそうだし、香苗さんが来るまでしばらくはこうしておこうか。
アイもいるかな? って思ったけど今日は父ちゃん母ちゃんと一緒に寝るみたいだ。すっかり山形家の一員になってくれて何よりだよ、あの子も。
そんなわけで30分ほどこんな感じで過ごしていると、香苗さんが風呂から上がったんだろう、移動の気配を感知する。
さすがにシャーリヒッタを、なんか悪役のボスがペルシャ猫を撫でてるようにあやしている姿のまま迎えるわけにもいかないので彼女を元の位置に戻らせる。
そら、そろそろ来るぞ。
「──お待たせしました。いいお湯をありがとうございました、みなさん」
「お疲れ様です香苗さん。それじゃさっそくですけどヴァールに連絡しましょうか」
「明日の予定についてですね。分かりました、お願いします」
客人用のパジャマに身を包みタオルを首から提げた、ラフなスタイルの香苗さん。ドライヤーでしっかりと乾かしていても湿気を帯びた銀髪が、どことなく色気があってちょっとドキドキだ。
それはともかく俺はさっそくスマホを取り出した。もう22時前だよ、いい加減ヴァールも待ちくたびれてるかもね。
電話をかけると、すぐに応答があった。ヴァールだ。
いつもながらの冷淡でクールな声で、夜ということもあってか比較的静かなトーンで応じてくる。
『ワタシだ。今日は急な予定に巻き込んで済まなかったな、山形公平』
「いや、こちらこそ悪かったよ、いきなりな話を持ち込んで。シャルロットさんの容態は?」
『安定している。今はもう就寝しているが明日になればもう元通りだろう。神谷やアンジェリーナ、ランレイがつきっきりで看病していたが彼女達ももう部屋に戻らせた。神奈川、ステラ両名についても帰還済みだ』
「そっか……シャルロットさん、なんだかんだ看てくれる人がいるんだな」
何より気にしていた、シャルロットさんについての報告を受けてホッとする。まずは彼女が回復しそうで良かった。
先輩聖女とも言える神谷さんだけでなく、独自行動にすっかり怒り心頭だったアンジェさんや不安がっていたランレイさんもつきっきりで看病していたってのは、俺からしても嬉しい話だよ。
一人きりじゃないんだな、シャルロットさん……
どこまでも焦ったように、憎悪を抱えてアンドヴァリめがけて突っ込んでいくものだから正直なところ、孤立しちゃっていることを心配していたのだ。
何かしら事情があるにせよ関係各所を無視して暴走したのはそりゃよくないけど、さりとて明らかにそうするしかない事情があったんだろう人を見限ったり見放したりなんてできるわけがない。
ましてやあんな惨い目に遭った少女を、もしかしたら誰もが自業自得だと捨て置いちゃってるんじゃないかってのは不安だったんだ。
でも、実際にはなんだかんだと傍に人はいて。シャルロットさんは一人きりじゃないんだって今のでよく分かることができた。
それだけでもずいぶん救われた気がするよ、なんだかね。そんな俺の想いを察してか、電話の向こうのヴァールの声も幾分、柔らかいものになった。
『やはり元々は、ここまで暴走する質でもないようだからな……それがああなるだけの何か因縁がアンドヴァリとの間にあったというのは、今日の一件で嫌というほど思い知らされた。やつがあそこまでのことをするとは、ワタシも思っていなかったからな』
「そうか……そのへんについての詳しい話は明日の放課後、そっちに行くからそこで聞かせてほしいんだけど構わないか? そうだな、夕方の4時頃にでも」
『もちろんだ。その間、こちらでも捕縛した構成員達や神谷、シャルロット、愛知から事情聴取をして少しでも情報を集めておこう』
シャルロットさんに結構キレ気味だったこの子も、アンドヴァリに手足を切断され、それでもなお殺意と憎悪を剥き出しにする彼女の姿にはさすがに何らかの事情を察したんだろう。大分当たりが柔らかになっているように思う。
良いことだ……怒りを持続させるのは精神的によくないからね。
明日16時ってことで予定も合わせたし、これで用件も終わりだ。
明日も早いしそろそろ切り上げるかと思った矢先、ヴァールが不意に俺の名を呼んできた。
『山形公平。詳しくは明日に話すが、今のうちに一つだけ、ざっくりとだがアンドヴァリが何をしたのかを言っておく……』
「お、おう? あ、ああ」
『…………やつは、ウーロゴスと一体化した。ミュトスの権能をその身に取り込み、概念存在へと転じる一歩を踏み出したのだ』
「……………………!?」
それは、思いがけない言葉だった。
アンドヴァリの所業、やつが何をしたのか……あり得べからざるその行いが、端的に示されたのだった。
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