圧倒的格上相手に隙を突くのはどう考えても死亡フラグ(名推理)
建物内に入っていった四人を見送り、俺は改めて威圧に屈する三体の悪魔を見た。
いずれも精神体ながら本体というわけでもない、アバター体だ。仮に今ここで倒したとて、こいつらの意識は本体に戻るばかりで特にこれといったダメージも、まあ多少魂に傷は受けるかもだけど高が知れたものだろう。
けれど、いやだからこそ質が悪い。普通の人間では対処できない上に権能まで使い、挙げ句自分達は何をされようとも軽微な被害で済ませる立ち位置にいる。
なんともはや、せめて受肉してから来いって話だよな。セーレにしてもアガレスにしても。
「サークルに与している悪魔だろうが、なぜ受肉しない? 好き放題に力だけ与えて物見か? それでいてこの時ばかりはしゃしゃり出てくるのはどういう了見なんだ」
『ぐ、ぬぅ……!? な、何を言うかっ、貴様がそれを言うのかっ!!』
『だ、大ダンジョン時代なんてもん創り上げた連中の手先でしょアンタってば! そんなのに言われるとか笑えるんですけど笑えないんですけど!?』
「うん? ……そういう理屈か」
そんな俺の主張に、気圧されつつも憮然として返してくる悪魔達。そこから窺える彼らの俺に対する認識を、俺は内心にて吟味した。
倶楽部幹部、鬼島の取り調べ時での供述といろいろ似通うし辻褄が合う。あいつは委員会が俺のことを"現世にステータスを持ち込んだナニモノか本人、あるいはその尖兵"と見なしていると言っていたからね。
つまりはこいつらも委員会に関係する悪魔なのは間違いないだろう。
そしてそんな彼らからすれば、現世をここまでのことにしておいて人間のように受肉して振る舞う俺には好き勝手なことを言われたくないってところか。
これについては正直、彼らの言うことにも理はある。悪魔のやってることもシステム領域のやってることと、規模は違えど同じだからな。
こうして俺相手に出張ってきたのも、結局俺達が出張っているのと理屈の上では同じラインだ。
ウーロゴスだのバグスキルだのスレイブモンスターだのを悪用する向こうと、ステータス機能を現世にばらまいて大ダンジョン時代を到来させたこちらと。構造の上では完全にリンクしちゃってるんだよね。
なのであまりそのへんをアレコレ言うとこっちにブーメランが刺さるから、俺はそっと心に棚を作ってお口チャックした。たとえそうしなければ世界丸ごと滅びてたんだよって理由があったとて、それで納得させられるとも思わないからね……
「言い分は理解するけど、それでやることがこれなのか? ものの見事に返り討ちに遭って、昼間のアガレスといい何がしたいんだ、一体」
『こ、この場において貴様など本来、ど、どうでも良かった! 我々はただ、見届けるためにここにいただけなのだからっ!!』
「見届ける……何をだ、何がここで行われているんだ。アンドヴァリがいる、んだよな?」
『ふ、ふふ。貴殿に教えるはずもない。そして教えたとて理解できないだろう──彼女の理想も、夢も。純粋で綺麗で、だからこそ許されないものなのだから』
「理想、夢。アンドヴァリのか? いまいち要領を得ないな、お前ら悪魔の言うことは」
どうにもぼんやりとした言葉ばかりが返ってくる。夢や理想と綺麗な言葉を並べているけど、アンドヴァリのことを言っているならそれがこいつらとなんの関係があるんだ?
サークルと過激派は手を組んでいるから、悪魔がアンドヴァリの何かに惹かれることもそりゃあるんだろうけど、この様子だと男と女の二人は結構マジでやつのことを気に入っていそうなのが不可解だ。
瀬川聡太に力を与えた悪魔、セーレと似た雰囲気が漂うし。悪魔を魅了するだけの何かを、両組織のトップ陣営は備えているようだな。
女の子のほうが、相変わらず俺に気圧されながらも嘲笑ってくる。状況を理解していないのかと言いたくなるほどに清々しい、生意気盛りの仕草と言葉遣いだった。
『ぷ、ぷふーくすくす! ウケるんですけど、ウケないんですけど! あ、アンタなんかに誰がまともに答えるかってーの! 知ってるよアンタみたいなの陰キャってんでしょ! サークルの人間達に比べてホント地味で陰険で陰湿ね、草なんですけど! 森なんですけど!!』
「林は!? ……こほん。とにかく、お前らも異空間に引っ込んでいてもらうぞ。まったく、悪魔づいてる日だな二学期も初日から……」
しょうもないツッコミをついつい入れさせられてしまった、この少女悪魔、なかなかやるな……なんて考えることさえしょうもない。
脱力しつつもワームホールを開く。今日だけで四体もの悪魔入れ食い穴と化したデータ領域への入口だが、なんでこんなにハプニングがあるかね今日は。
初日でこれとか二学期の先が思いやられるなーなんて若干アンニュイになりつつ、三体をまとめて放り込もうと歩き出した、まさにその時だった。
──建物の中、オペレータ達が複数集う位置に何かとてつもない波動を感じ取り、俺は思わずして振り向いた!
「なんだ!? 急にどうした、アンドヴァリか!?」
『っ!! 死ねぇっ、シャイニング山形ァッ!!』
『オロバスッ!?』
同時に振り向いた俺めがけて、気圧されていたのを振り払った男の悪魔が突進してくる!
長く伸びた腕、爪……殺意を帯びた攻撃が、俺を背中から襲った!!
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