シャイニング山形、マグロと比較されるってよ
「今ばかりは優先事項があるから置いとくけど! 後でこってりしぼってやるから覚悟しなさいシャルロット! ……心配ばかりかけて、まったく!」
言いたいことは山ほどあるだろうアンジェさん達も、さすがにこの緊急的状況下においては後回しにする判断を下した。
急いで神谷さんを追いかけないと、大変なことになりかねないのだから当然といえば当然だね。能力者犯罪捜査官として、誇り高い選択だと思う。
シャルロットさんもそれを受けて無言でうなずいた。そこにはなんだかんだ言って、たしかな友情が垣間見える……元はアンジェさんチームとも組んでいたんだ、良好な関係だったんだろう。
それを蔑ろにしてまでもシャルロットさんを突き動かす、アンドヴァリとの関係性がいかなるものなのか。単なる師弟のそれだけでないものを感じさせるけど、部外者たる俺には知る機会はないだろう話かな。
それはさておき準備は整った。
俺はヴァールに、ここからすぐの行動を呼びかける。
「急いで件の隠し拠点に向かおう。頼めるか、ヴァール」
「もちろんだ、任せてくれ……後釜やシャーリヒッタ、ミュトスはどうする? ついてこさせるか?」
「うん? あー……」
言われて思い出す、もう17時も過ぎてるんだから家に連絡しなくちゃ問題。
何もなければ軽く依頼でも見て、そのまま帰って飯食ってーって考えていたのがまさかの緊急事態だからね。やむを得ないとはいえ面倒なことになったもんだと思うよ。
とりあえずそそくさとスマホでリーベに電話する。
さすがあの子はワンコールで応答してくれて、あっという間に連絡が取れた。助かるー。
『はいはいあなたの愛しのエンジェル精霊知能、リーベちゃんですー! どうしました、公平さんー?』
「何かなその挨拶? 他所では止めてね誤解されるから……と、いうことでかくかくしかじかもんとごめりー」
開口一番誤解しか生まなさそうな挨拶を口にするリーベに割と本気で頼み込みつつ事情を説明する。
一瞬、一緒に来てもらおうかとも思ったが俺はこの際、この子やシャーリヒッタ、ミュトスには家の周りを警戒してもらうよう頼むことにした。
「昼間の悪魔襲撃の件もある。俺達が動いている間に、またぞろ変なのがちょっかい出してこないとも限らないからさ……WSOのエージェントさん達も見張ってくれてるけど、こと概念存在相手となるとさすがに分が悪いし」
『なるほどなるほどー……分かりました! 家周辺と言わず地域一帯、リーベちゃん達精霊知能でバッチリ網を張っておきます! お母様やお父様、優子ちゃんにアイにも話は通しておきますから、公平さんは心置きなく神谷おばーちゃんを助けに行ってくださいませー!!』
「助かるよ、リーベ。くれぐれも気を付けてな、あいつら下手すると時間とか止めてくるし」
『もちろんですー! ばーははーい!』
久々に聞いたけどばーははーいは古いよ! さすがに!
ツッコみつつもさすが、話の早いリーベに感謝しつつもスマホを閉じる。
これでOKだ……行けるぞ、倶楽部の隠し拠点!
ヴァールを見る。うなずきあって、次に香苗さんを見る。
彼女とも視線を交わしてうなずき、そして俺は愛知さんやシャルロットさん、アンジェさんチームの面々に視線をやった。
「みなさん、すみませんお待たせして! こちらも準備整いました、今からでもすぐに現地に向かいましょう!」
「オッケー! ごめんね公平、地元でもおかしな騒動に巻き込んじゃって! アンドヴァリをとっちめてから、たっぷりとお礼はするからね!」
「アレクサンドラの討伐と並び、五代目様のご無事も重大事項です。ことが成れば我々ダンジョン聖教からもシャイニング山形、御堂香苗両氏に対して恩賞をもって報いることを約束します」
「ど、どうも? いやまあそういうのは特に良いですから、とりあえず急ぎましょう! こうしている間にも、もしかしたら神谷さんがアンドヴァリ達と対峙しているかもしれませんし!」
怖ぁ……別にその手の見返りとか求めてないんだからわざわざ言わなくていいのに。逆に反応に困るよ、もう。
それよりもとにかく隠し拠点行こうよと急かせば、気を利かせてヴァールが《空間転移》を使用してくれた。またしても談話室に開くワームホール。
空間を隔てた先に見えるのは自然。大自然の山の景色だ!
「隠し拠点の手前にワームホールをつなげた! 先遣としてアンジェリーナ、ランレイ、神奈川がまず入ってくれ!」
「了解です! 行くわよランレイ、千尋!」
「う、うん────切り込み役、ここに任されたっ!! 一番槍こそ我が星界拳、斬撃脚の誉れなりッ!!」
「シームレスに人格が変わるな、相変わらず……行くか、ステラ」
『うん。ワームホールを潜ったらすぐに《聖剣》を使うね、千尋』
まずは先手にアンジェさんチームが突入する。すでに戦意も高くやる気満々の三人+ステラが、我先にと人間大のワームホールに突撃しては隠し拠点へと向かう。
さて次は俺が行こうか。愛知さんとシャルロットさん、ヴァールはどちらかといえば殿のが良い気もするしね。
場合によっては転移先ですぐさま戦闘になるかも知れない。
そのつもりで臨むかと、俺は《誰もが安らげる世界のために》を発動させた。
バフ倍率は……まあ適当に、100倍くらいにしておくか。
「……!? この圧力は、山形公平、あなたが!?」
「っ……信じられない。かつて戦ったウルトラフライングカジキマグロよりも、ずっと強い……!?」
「山形公平、アンジェチームの次に行くのか。頼む」
「任せろ」
フルパワーにあたる、極限倍率10万倍に比べるとまるでささやかな倍率なんだけど、それでもシャルロットさんや愛知さんを驚かせるだけの圧力は放っているみたいだ。
でもマグロと比べられるのはさすがにちょっと……後にも先にもない経験だろうなあと思いつつも。ヴァールに答えて俺も、ワームホールを潜り抜けていった。
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