もはやすっかり誤解されているが!シャイニング山形は芸名ではないのである!(本人談)
アンドヴァリを追うシャルロットさんを追う愛知さん──
そういう構図だったのが、いつの間にやら"アンドヴァリを追う神谷さんを追う愛知さんとシャルロットさん"へと変貌してしまっていた。
なんだこれは、と言いたくなる経緯なんだけど笑いごとでは断じてない。
神谷さんは今もって単身やつを追っているわけで、急いで彼女の下に向かわないと大変なことになってしまうのは明白だった。
にしてもなんで神谷さんは、たった一人でそんな無茶を? シャルロットさんの手前、あまり無理とか無茶とか言うのも憚られたけどそれでも俺は、疑問を口にしないではいられない。
経緯を話し終えて少しの沈黙の中、ぽつりと切り出す。
「単身でアンドヴァリを倒すだなんて、失礼な物言いですけど難しいでしょうに……神谷さんはどうしてそのようなことを」
「先々代様は全盛期の頃でもA級の中堅あたりの実力だったと伺っています。ましてや今は引退されて久しい70歳の御身体、現役のS級探査者であるアレクサンドラを相手にするのは難しいというのは以前、御方も語っておられたのですが……それだけ、あの女が赦せなかったということでしょう」
「自分で選んだ後継者が、ずっと背信行為をしていたのですからね。思えば倶楽部幹部の取り調べの時にももうすでに、今のような暴走に至るだけの伏線はあったように思えます」
シャルロットさんにしても、先々代の聖女として尊敬しているだろう神谷さんの今、していることは無謀な行為だという認識はあるみたいだ。そりゃそうだよな、敵対に近い関係の愛知さんとまで組んでるんだもの。
けれどその胸中に想いを馳せる姿にはどこか同情とか共感も見えて、同時に気持ちはわかるという複雑な色が察せられた。
一方で香苗さんも、半月ほど前の倶楽部幹部への取り調べに同席した時のことを語る。たしかにあの時にはもう、神谷さんの様子は結構おかしかったな。
顔を真赤にして、しきりにアンドヴァリを許さない、許せないとおっしゃっていたか。
その時には周囲にヴァールなりマリーさんがいたから宥めてくれたけど、そうした先輩がいなくなれば歯止めが利かず動き出すのも、予想できることではあったのかもしれない。
嫌な予感が膨らむ。俺は、シャルロットさんと愛知さんに提案した。
「ともかく、神谷さんを追って合流しないと。アンドヴァリと戦闘に入った場合、最悪の場合まで考えられてしまいます」
「……正式にあなた方に協力要請をするのは今からだったのですが、よろしいのですか? すでに助力してくださるような口振りですが」
「当たり前です。人の命がかかった瀬戸際、ましてや神谷さんは俺にとっても知り合いの方です。アンドヴァリを捕縛するのにサポーターとして関わっている立場もありますし、お二人に助力しない理由がない」
「同感ですね。ここで話だけ聞いて大変ですねと他人事で済ませる救世主様と伝道師ではありませんし、そもそもそれは力ある探査者としての振る舞いとも言えません」
すっかり神谷さん救助に向かうつもりの俺と香苗さんに、シャルロットさんも愛知さんも驚いたように目を丸くしているけど何をそんなに驚くことがあるんだ。
いつだってそうだった。突き詰めれば俺達には関係がないことかもしれなくても、聞いた以上は捨て置きたくない。そこに懸っている命と尊厳の重みを想うから、俺達は誰であろうと助けるし何であろうとも立ち向かうのだ。
誰一人、何一つだって見捨てたくないから。伸ばした手が誰かの下に届く限り、俺は、俺達はどんな命も諦めない。
それが探査者だと信じている。俺も香苗さんも、その想いについてはまったく同じものを共有しているんだ。
強くうなずき、力となることを表明する俺達二人。
これには愛知さんもシャルロットさんも感嘆の息を漏らして、賞賛めいた声色で応えてくれた。
「御堂さんはもちろんのこと、シャイニングさんもすごい心構えですね。私自身もS級探査者の身として、大いに勉強になります」
「あなた方のような探査者がいる、この国は素晴らしいと素直に言えますね……ご助力いただけること、ダンジョン聖教を代表して感謝します。御堂香苗、シャイニング山形」
「あ、いえどうも……あのー、そろそろ山形公平と呼んでいただいてもよろしいでしょうかー?」
S級探査者とダンジョン聖教聖女からの掛け値なしのお褒めの言葉。なんだかくすぐったいのと誇らしいのが胸に去来するけど、そろそろ一つ良いかなあ?
──いつまで"シャイニング"を前面に押し出した呼ばれ方してるのかな俺!
認定式からこっちずっとじゃん!
ずっと言われてるじゃんシャイニングシャイニング! せめて山形はつけとこうよシャイニングさんってマジで誰ですかねそれ!
もうそろそろ良いよね、多少は打ち解けたしね? ってことで訂正を入れる。俺の名前は山形公平。シャイニング山形でもなければシャイニングサンでもない、山形公平です。おーけー?
「えっ……あっ、失礼しました山形さん。シャイニング山形という呼び名が通っていたのでつい」
「いわゆる芸名かと思っていたのですが違うのですか? ……サウダーデ・風間氏が近くにいたのでフォロワーなのかと思っていましたが。リアリスティー・トップスピードもあの場にはいましたから」
「違います……」
素で誤解していたらしいお二人の、それぞれの反応。
愛知さんは普通に謝ってきてなんかこちらこそごめんなさいって感じなんだけど、シャルロットさんはキョトンとしている。
いやーいくらサウダーデさんが知り合いだからって芸名スタイルまで影響受けないよさすがに。
というか例のトップスピードさんについてもご存知なんですね、この人。実はRTAとか見てたりするのかなあ?
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