カラオケ店のフードメニューにやけに惹かれる時期はある。あるのだ……
ダンジョン聖教聖女は暴走癖でもあるのかな? と言いたくなるような先々代、先代、当代の突っ走り具合にため息を吐きつつも、俺達は空間転移で首都圏に戻っていくヴァールを見送った。
一応予定では明後日あたり、放課後にこっちも首都圏に行ってアンジェさん達のお手伝いをすることになっている。認定式の日に捕まえたサークル、過激派の構成員への取り調べが一段落つきそうなもんで、おまわりさんと情報を共有するんだね。
というわけでそこそこに予定を立てつつ、今日のところはひとまず友達とカラオケだ。音痴だけど気にしないぞ、ごめん嘘やっぱりかなり気にする。
ま、まあこういうのは開き直って楽しむのが結果的に一番傷が浅くなるから……などと内心にて言いわけしつつ俺は家を出たのだ。
ちなみにそれに対してアルマさんは、
『カラオケ店にも何やら食べるものあるんだろ? じゃなかったら遠野真知子が出向くわけもないからね……公平! 負けるなよ』
などと謎のエールを送ってくる始末だ。
こいつは遠野さんのことを何か恐ろしく誤解している気がするし、そもそもなぜ俺が彼女と張り合わなければいけないのか。
負けるなよ! じゃねえよって話だ。怖ぁ……
てくてく歩いて商店街に到着。時刻は13時前、お昼ご飯もまだだから結構お腹が空いている。こりゃ、合流したらひとまず食事かな。それこそカラオケ店でなんかいろいろ食べたりするかも知れないね。
お腹を擦りながら集合場所のカラオケ店前に、集合時刻の5分前にやってきた。
松田くん、木下さん、片岡くん、遠野さん。そして梨沙さん。すでにみんな揃ってるね、早い。
まさかのファイナル山形くんかあ、遅刻こそしてないんだけどちょっぴりの気まずさとともに俺は片手を挙げて挨拶した。
「お疲れー。ごめん、待たせちゃったねみんな」
「公平くん! ううん、私らも今来たとこ。ねっ?」
「ねー! 山さんも来たし、これで全員だね」
「じゃあ入ろうぜー。飯食ってねえし、とりま軽いもんでもつまむかあ」
みんな特に怒ったりもせず対応してくれて、俺としては一安心だ。同時に今度から、集合の時はもうちょい早めに動こうと決意したり。
とりあえず店に入るべーとグループのリーダー、松田くんが呼びかけてくれて、さっそく俺達はカラオケ店に入ったのである。
「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
「6名です。ええと3時間くらいで良いよね?」
「おう」
「6名様3時間ですね。ご希望の機種等ございますでしょうか、こちらのメニューからお選びください」
入店時の手続きなんかは大体、梨沙さんなり木下さんなり松田くんなり遠野さんなりがしてくれる。
俺では分からないからね、機種とか。なんかいろいろあるみたいだけど、えっ、なんか違いあるの? みたいな感じにしかなれないのだ。
たぶん片岡くんもそうなんじゃないかな。げに悲しきはグループ内における陰キャ二人。軽く目を合わせ、お互い理解し合ったかのようにうなずく。
やはり彼とはシンパシーがあるなあ。ってことは同じく陰キャなハオランさんやランレイさん、あと俺達ほどでないにしろ陰の者気質を時折伺わせるエリスさんとも気が合うかもしれない。
まあ会う機会なんてないんだろうけどね。
俺の交友関係、多岐に渡り陰キャが散りばめられているな……
「──よし、行くぜみんな、204号室だ! 二階だな」
「ドリンクバーももちろんついてるし、まずそっちに行こっか」
「コーラ、コーラ!!」
と、手続きも終えて松田くん達が促してくる。ドリンクバー付きってことで遠野さんがさっそく用意し始めてるね。
俺達も好きな飲料水を欲してディスペンサーへ。コップを手に取り、うーんどれにするかなあ。コーラ、メロンソーダ、スポーツドリンクにウーロン茶から普通の水までなんでもあるぞ。
……まあコーラにするかな。なんかこう、こういうところでお茶や水とかだともったいない感があるのなんだろうね。
冷たいドリンクのひんやり感が手にも伝わり涼しい。トレイを持って俺は、みんな好き好きに選んだコップを載せてもらって運ぶことにした。
「ありがとう公平くん!」
「へへへ。まあこのくらいはするよ、喜んで」
梨沙さんから感謝の言葉をいただきつつ204号室へ。階段登るからそこは気をつけないとだけど、そこは俺ちゃん探査者ですから。
しかもレベルもめでたく1000超え、ぶっちゃけ普通にS級探査者クラスの身体能力だ。そんなだから当然バランス感覚も相当なもんで、今なら並々注がれたグラスのタワーだって一滴も零さず運んでいけると思う。
ましてや常識的な量のドリンクなんて朝飯前ならぬ昼飯前だぜ。ってなわけでまったく問題なく着きましたよ204号室。
中に入ってテーブルにトレイを置いて、はあ一段落。
「よーし、歌うぜー! ……の前になんか頼むかあ」
「とりあえずみんなで食える系のやつな! ピザとか、フライドポテトとか!」
「フライドポテトはみんなの分とは別に私一人の分も頼んじゃおっと! えへへ、お腹ペコペコ!」
「あんたさっき待ち時間の間、お腹空いたってファストフード店でハンバーガーセット二人分食べてたじゃない……」
「えぇ……?」
歌うより先にまずは腹拵え……なんだけど、遠野さんが相変わらず食欲の化身過ぎる。まず俺が来るまでにすでに昼飯食ってんじゃないか、それも二人前!
その上でフライドポテトをみんなでシェアするのと別に自前の分、注文するというのだ。おそらく他のメニューにも挑戦するのだろうし、毎度ながら驚くべき健啖ぶりである。
『素晴らしい! それでこそだよ遠野真知子! 公平、お前も彼女を見習え、あの姿こそお前が目指すべき姿だ!』
脳内アルマさんもやかましいったらない。目指すかってか目指せるか!
遠野さんは遠野さん、俺は俺! 隙あらば俺にも同じ量食わせようとするアルマに応じつつ、とはいえ俺も腹は空いてるのでメニューを覗き始めるのだった。
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