地味で呑気なくらいが山形らしい……のかもしれない
実に1ヶ月半ぶり。東クォーツ高校1年十三組の面々が日頃勉学に励む教室に辿り着くと、やはりと言うべきかそこでも俺ちゃんは注目を浴びた。
そもそもからしてグループチャットでさんざん話題になってたんだし、こっちはある種の予定調和だったんだけどね。これでまったくの無反応だったりしたら、逆にこっちは困惑していたかも知れない。
「おーっ、来たぜヒーロー救世主! なんだっけハープ弾きつつバンザイとか言えばいいんだっけか」
「山さんちーっす! それに梨沙も一緒だよね、やっぱり!」
「山形ァ! 文化祭で演劇やるなら照明役はお前だァハーレム野郎ゥ!」
「SNSでもお前話題だぞ、一体何人引っ掛けてんだてめえ!!」
「えぇ……?」
いやでもこれも困惑するよ、いきなりなんなんすか謂れもなき誹謗! 何人も何も誰一人として引っ掛けてないんですけど!?
夏休みを経て久々に会うのに開口一番、女性関係を疑われてしまう高校一年生男子。こう書くと立派なイケメンリア充なんだけどまったくもって誤解だからね。本当のところはもはや陰キャっていうか隠居みたいなもんだからね。いやマジで。
誤解ですけど! と反論しつつも席に着く。うーん久々だねマイ・デスク。
システム領域に帰還した際、ワールドプロセッサがこの教室を丸ごとコピーしたテクスチャをペーストしていたけど……やっぱり実物は違うね。いやデータが同じ以上、アレも実物のはずなんだけども。
とりあえずカバンから各種筆記用具に夏休みの宿題を出して、いつでも提出できるようにスタンバらせて、と。
例の自由研究は始業式後に提出だったな、たしか。そんでもってどこかのタイミングで校内にローテーションで掲示するそうだけど、職員室前だって話だし誰が具に確認するんだそんなもんって感じだよね。
まあ興味ある人は覗いたりするかもだけどー、とあれこれ思い返していると、近づいてくるクラスメイトが一人。
よく知った顔だ。なんなら夏休み中にだって会ったし、一緒にダンジョン探査すらした仲でもあるイケメンを超えたイケメン、すなわち超イケメンの男子学生である。
関口くん。
今となってはすっかり蟠りも消えた俺達が、夏を超えての再会を果たしたのだ。
「よっ、山形。朝からずいぶんな人気ぶりだな、救世主様?」
「おはよう関口くん。いやあすっかり珍獣扱いで、むしろ関口くんみたいにイケメン扱いされるなら嬉しさもちょっとはあったんだけどねえ」
「あー、お前地味だもんなあ」
「なんだよう」
なんだよう、イケメン様だからってそういうこと言うなよう。傷つくだろー、冗談だけど。
相変わらずの整った顔立ちに、スマートでスリムながら鍛えられた身体つきにイケメンらしい垢抜けた振る舞い。そら人気出るわ、イケメンでもない珍獣救世主フライングシャイニング山形くんとは大違いだわ。
そんな関口くんとはこれもやはり図書館に行った日、最寄りのショッピングモールにて緊急的なダンジョン探査を試みたのだ。
彼のパーティメンバーが所属しているアイドルグループ"ハミングバード・サーチャーズ"略してハミバのイベントの直前、まさかの会場内にダンジョンが発生しちゃって……イベントゲストにお呼ばれしていた関口くんとたまたまそこに居合わせた俺が、急場でコンビを組んで踏破したのである。
いやいやまさかの即席コンビだったけど、なんていうか興味深い経験させてもらったよね。
関口くんにとってもそれなりに得るものがある探査だったら良いなとは思うんだけど、そこんとこどうなのかな。
「ていうか関口くん、前のハミバの時はありがとうね、一緒に探査してくれて。助かったよ」
「は? いや、それ俺のセリフだから……お前がいてくれなかったらイベント中止だったわけだし。あ、そうだアキラがめちゃくちゃ感謝してたし会いたがってたぞ。なんなら認定式の映像とかハミバ内でブームになってるってよ。さすがだな、救世主サマ」
「えぇ……?」
"あ、そうだ"から始まる情報がとんでもなさすぎる。アキラってのはたしか関口くんのパーティメンバーでもあるハミングバード・サーチャーズのメンバー、海北アキラさんだっけか。
その人が会いたがってる時点で割と謎なんだけど、加えてハミバ内であの映像がブームになってるってなんだ。なるようなもんじゃないだろあんなもん。
悪い予感しかしないけどまさか、アイドルグループなのに救世の光堕ちとかしてないだろうな。さすがに本気で炎上しちゃうぞ、俺も香苗さんもハミバのSNSも。
まあ香苗さんは荒らしに来た人全員返り討ちならぬ返り伝道しそうな気はするんだけどね。あの人のメンタルちょっと強すぎるよ。
「おかし三人娘、特にアメとガムも映像見てグルチャではしゃぎ倒してたし。また探査してほしいって言伝も頼まれてるよ」
「あ、うん。それはもちろん都合が付けばご一緒させてもらうけど……なんか、すごいことになってるなあ、認定式の件でいろいろ」
「当のお前はとことん呑気してるみたいだけどな。普通もうちょい自分を前に押し出して、世間にアピールとかして人気探査者の仲間入りを狙ったりするもんだと思うけど……ま、それでこそ山形らしいのかもな」
呆れたような、感心したような顔と声音で肩を竦める関口くん。
世間一般の若手探査者がどんなもんかはともかく、俺的には変に悪目立ちしたくないってのもあるからね……救世主の時点ですでに手遅れなんだけど、だからこそってのもあるわけだよ、うん。
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