注目を浴びる中、堂々とイチャつき始めたこの救世主をどうしてやろうか(嫉妬)
グループチャットなどでは頻繁にやり取りしていたものの、直に会うのは首都圏に行く前、夏休みの自由研究を終わらせるためにみんなで図書館に行った日以来になる。
相変わらずめちゃくちゃかわいいギャルJKな梨沙さんは、周囲の視線を物怖じせずに俺に手を振って近づいてきて、そして気さくに話しかけてきてくれたのだ。
「公平くん、いろいろあったみたいだけど大丈夫? 怪我とかしてない?」
「ああ、うん。チャットでも言ってたけどこの通り、ピンシャンしてるよ。心配かけてごめんね、梨沙さん」
「気にしないでよ、私がしたくて心配してるんだし……でもそっか、無事なら本当に良かった! 公平くんって結構無茶しがちだし、実は怪我なんてしてたら嫌だなって不安だったの」
ホッとしたように隣並んで笑う彼女は、心底から俺の身を案じてくれていたのが伝わってくる。
本当に良い子だなあ……見た目は金髪ギャルって感じなんだけど、その実いいとこのお嬢様な彼女は自然に人を思いやることができる心の清らかな女の子だって、今年の春からの知り合いな俺ももうすっかり理解できているよ。
ホームにアナウンスが流れる。もうすぐ電車の到着だ。
かなり人の多いホーム、いつもより多少、身を寄せ合って俺達は並んで電車の到着を待っていた。
「ホント、大活躍だったね……でも見てるこっちは気が気じゃなかったよ」
「そ、そう? いや、成り行きからあんなふうになっちゃって、俺としても大活躍とかそんなつもりもなかったんだけどね」
「だよねー。だって公平くん、本気で真剣だったもんね。ヘリのカメラマンとか、アナウンサーの人とかに必死で避難を呼びかけて……光ったりビーム撃ったりして、あの人達を護ろうと全力で」
「あ、あはは……」
怖ぁ……客観的に見てあの日のシャイニング山形くん、控えめに言って行動が面白すぎるだろ。
光りながら避難を呼びかけつつビーム撃つってまるきり変な人だこれ。いや分かってたけどね、俺も連日流れるあの動画をちょっぴりばかり見てるし。
でも仕方ないじゃん、逃げないんだもんよあの人達。なんか呑気に質問までしてきて、いやそれがあの人達なりのプロ根性なんだろうし否定はしないけど、こっちとしては良いから避難してーって光りながら叫ぶのも致し方ないことだと思うの。
そして梨沙さんも、どちらかというと俺と同意見みたいだった。きれいで愛らしいその顔を少しばかり義憤に染めて、唇を尖らせて言うのだ。
「なのにあのテレビの人達、そんな必死な公平くんに構わず変な質問ばっかり。ネットとかでも結構燃えてるでしょ、アレ」
「あー、みたいだねー。あの時、撮れ高だひゃっほーとか言ってる人までいたし。生放送だったからそのへんもカットとかできなかったしね」
「自分達を護るために、目の前で命かけてる人がいるのになんではしゃげるんだろ……ヘリの運転手さんが従ってくれなかったら、マジで大惨事だったかもじゃん」
「い、いやまあ。そこは何があっても俺が頑張りましたから、うん……」
若干ぷんぷんしている梨沙さんを宥める。本当に良い子だから、逃げろって言ってて見るからに危険地帯なのに、それでも撮れ高優先で動いたマスコミの姿勢に怒ってるみたいだね。
ちなみに梨沙さんの言うように件の生中継は当然バズって当然燃えた。そもそもモンスター絡みにおける探査者の避難指示は従う義務が法律によって定められたりしているんだけど、それをガン無視してたわけだからね。
残念ながら当然と言うしかない……ああでもヘリの操縦士さん達と、あとなぜかいた救世の光信者系リポーターさんは逆に賞賛の声が上がってたな。しっかりと避難指示に従ってくださったのは助かった。
まあ信者さんのほうは思わぬ一面を曝け出したからか別の意味で話題になってたけど。俺も戦慄したもの、マスコミにまで信者が!? 的な意味で。
救世の光、一体どこまで行くつもりなんだ? 伝道師さんも勢いに乗ってハープは弾くわ句読点は飛ばすわでノリに乗ってるし。
行く末が怖いよと内心で遠い目をしていると、梨沙さんは不意に、俺をまっすぐに見て告げてきた。
「……公平くん、本当にすごかったよ。これがプロの、探査者としての公平くんの姿なんだなーってテレビ越しでも伝わってきた」
「えっ……そ、そう?」
「うん。格好良かったし、素敵だった。あんなふうにして、いつもダンジョンから私達の日常を守ってくれてるんだって思うとなんかさ。本当に尊敬しちゃうなって」
「り、梨沙さん」
いやはや、照れるやらありがたいやら。この子は前からだけどこういう、素直な感情をしっかり言語化して伝えてくるから威力高いよなあ。
それにプロの探査者だなんてそんなそんな、まだまだ探査者歴半年近くのペーペーなのに言ってくれちゃって。なんだか勘違いしそうになるよ、うへへへ。
「い、いやーへへへ。そんなそんな、えへへ! お、俺は俺にできることをしただけだよ。それにそういう、梨沙さんこそ」
「私?」
「あの後、いの一番にグループチャットで心配してくれたでしょ? あれ、実はすごく嬉しかったよ」
「公平くん……」
だからこちらからも感謝を伝える。認定式の後、梨沙さんから真っ先に大丈夫かってグループチャットで心配の言葉が来たんだけど……そのメッセージはたしかに俺を、日常に戻してくれたからね。
もちろん、その後に続いたクラスメイト達からのメッセージも、すべて。俺にとっては何よりホッとするものだったんだよ。
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