夏が終わり秋が来る。新しい季節の朝が来た!
──そして数日を経て、9月1日。ついに夏休みの終わり、二学期の始まりを迎えた。
どうもおはようございます、山形公平です。お外は窓から見るに秋晴れ、というにはまだ若干の暑さとギンギラギンの太陽が照りつける空。
予報では明日から雨が続くらしいから、そのへんでこの暑さもいよいよ落ち着いて、秋めいた爽やかな涼しさにもなってくるかな? って思うよ。
一ヶ月半ぶりに学生服に袖を通す。いやーマジで久々だな、なんか。夏休みモードから学生モードに、それなりに切り替わっていく感じがする。
カバンには筆記用具にノートに、あと夏休みの宿題。自由研究ももちろんあるぜー? こいつを完成させるために梨沙さん達と図書館に行ったのも、今年の夏休みを彩ってくれたいい思い出だ。
「そして秋からはまた、新しい思い出を作っていくんだ」
決意を口にする。探査者としての仕事の傍らで、けれど学生としての本分も果たす。
勉強、運動、そして友情──青春。中学までの俺にはまるで縁のなかった憧れの日常を、ありがたいことに楽しむチャンスをいただいているんだ。
精一杯享受したいね。そしてその上で、己の使命だってまっとうするのだ。二学期はそういう季節にしていきたいと思う。
「おはよーっす」
「おう、おはよう」
「おはよう公平。ごはんできてるわよ」
カバンを引っ提げて下階、リビングへ向かう。すでにみんな揃って起きているね。
父ちゃん、母ちゃん、優子ちゃん……も制服に身を包んでいるけど寝ぼけ眼ってか、明らかに夏休みボケしてそうな気の抜けた顔つきだ。
そんな彼女にリーベとシャーリヒッタがあれこれ世話を焼いている。すみませんねうちの妹ちゃんが。
するとミュトスと、その腕に抱かれたアイが真っ先に俺のところにやって来て腰を90度折り曲げてきた。
何の何の何!?
「おはようございます、コマンドプロンプト様! お勤め、お疲れ様でございやす!!」
「きゅうきゅーう、きゅーっ!」
「怖ぁ……お、おはようミュトス、アイ。ええと、今日もなんていうかパワフルだね?」
「はい! 爽やかな朝はやる気と元気が溢れます! ミュトスちゃんフルパワーですよ、なんなら私の中の三界機構様方が朝っぱらからうるさい!! ってさっきから脳内で叫んでます!!」
「そうなの!?」
怖ぁ……三界機構さえ抗議するミュトスの元気さというか騒ぎぶりよ。ていうか元気そうにはしてるのね彼ら、良かったよ。
ミュトスの精霊知能としての魂に組み込まれた三界機構、魔天と断獄と災海。本人曰くウーロゴスを取り込んでいって力を取り戻せていけば、彼らを現世に顕現させるだけのリソースの余裕もできるとのことなんだけど。
その肝心のウーロゴスを、サークルと過激派の連中ってば複数に分割しちゃってるからね。認定式の日にちょっとだけ取り戻せたものの、まだまだ全盛期には程遠いってのがミュトスの現状だった。
ま、それもこれから先、そう遠くない段階で解決されていくことになるだろうけど。連中は必ずウーロゴスを投入してくると思うし、それに都度対応していけば良いだけの話だ。
精霊知能のみんなやアイとともにテーブルにつく。すでにご飯は用意してもらっていて、元気モリモリ白米にベーコンエッグ、生野菜サラダにソーセージとご機嫌なラインナップだ。
たくさん食べて大きくなるぞー。伸びろよ身長、グングンとー。願いを込めていざ、朝食へ。
「いただきます! ……んー、美味しい」
『毎朝食べる分には無難さこそが大切か。君にとっての母の味、僕にとってはそうでないから至って普通に美味しいって感じの味だけどまあ美味しいよ。本音を言えばこの倍は食ってほしいけどね。頑張れよコマンドプロンプト』
おふくろの味はやはり安心するもので、ホテルとかで食べた豪華料理も最高だったけどこっちのほうが俺の舌には合うみたいだ。
脳内のアルマは味はともかく量についてあれこれ文句つけてきてるけどね……そんなに食えるか! コマンドプロンプトとか関係ないだろ、食事量に!
ツッコみつつもありがたく食を楽しみ栄養を補給する。今日からは勉強という形で頭脳労働もするからね、しっかり食べないとね。
まあしっかり食べたら食べたで満腹すぎて、なんか眠たくなってきそうなのが気をつけなきゃだけど。はあ、美味しい。
「んんー、白米おいしーですー」
「ベーコンエッグ、胡椒をかけると味わいが増すぜ! 美味しい!」
「いやーやっぱり現世の食事は良いですねえ。あむあむ、ぱくぱく……生野菜の瑞々しさが特に好みですよ」
「きゅっきゅっ、もきゅっもきゅっ」
精霊知能達もそれぞれ、俺と同じものを食べて舌鼓を打つ。各人好みが異なるのも個性があって良いね。ミュトスなんかさすが元、水の女神って感じで野菜の瑞々しさに夢中みたいだ。
アイも、この子も雑食だから同じものを夢中で食べているね。かわいい。寝ぼけ眼の優子ちゃんも、ボーッとしつつも見とれているよ。こらこら遅刻するぞ、ちゃんと食べなさい。
言いながら俺のほうはもう食べ終わりだ。やっぱ朝イチの食事は健啖が一番だ、箸が進んだよ。
両手を合わせ、感謝を告げる。今日も美味しかった、ありがとうございました!
「────ごちそうさまー! さあて、歯を磨いたら行くかな、学校」
「お疲れ様ですー。頑張って、とは言いませんよ。無理なさらずー」
「父様の学校風景、一度覗いてみたいよなー」
「ふふ……こっそりついていきますか、シャーリヒッタさん? コマンドプロンプト様にはバレるでしょうけど、他には気づかれないでしょうし」
「えぇ……?」
食器を洗い場に持っていきつつ、精霊知能達のやり取りに耳を傾ける。
いやついてこないでね? バレるからね俺以外にも普通に。客観的に見て死ぬほど美女美少女達なんだからそこらへんの自覚はしてね?
苦笑いしつつも洗面台へと向かう。
秋、第一日目の俺の朝は、ごくごく普通の流れの中で進行していくのだった。
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