戦慄!システム領域も驚きのフルオープンアタック老人
計17箇所。めぼしい拠点らしきものを潰して回ったわけだけど、結果的に言えばそのいずれもがダミー企業、はたまたもぬけの殻。
一箇所だけ支部とも呼べる拠点はあったものの、データや資料として本丸に到れるような情報は一切存在しておらず……構成員を100人近く逮捕できたという事実は大きいものの、依然として敵の本拠地への足がかりは見つけられないままだった。
「ってか遊びすぎでしょあいつら……それも結構年いった連中がさあ。溜り場作ってずーっと遊んで暮らしてるって何それ、ブルジョアかしら」
「う、う、羨ましい気もするけど。そ、そのために悪いことして捕まってたら駄目だよね……」
アンジェさんとランレイさんが、日本酒をちびちびと呑みながら所感を述べていらっしゃる。ここ数日、ハイペースであちこち駆け回ってたのが一段落ついた末での休息時間だ。
首都圏内、滞在しているホテルからそう遠くない繁華街にある居酒屋チェーン店。夕暮れ時になって開店した直後にお邪魔した俺達は、濃い味付けの酒の肴を存分に味わい互いを労うちょっとしたパーティーを開いていた。
見かけ含めて未成年たる俺やリーベ、シャーリヒッタはもちろんソフトドリンクを飲みつつ焼鳥を頬張っている。一方でアンジェさんランレイさん、神奈川さん、あとミュトスもお酒を飲んで疲れをリフレッシュさせているね。
とはいえ、ぶっちゃけ俺らシステム領域のモノ達は大して疲れるようなことをしてないんだけどね。何しろ悪魔憑きは数人いたものの、肝心要の悪魔は一体も現れなかったわけだし。
サークルの戦力をそこそこ削れたから良いものの、と語るお二人の話に耳を傾けつつ、俺はささみを頬張った。
神奈川さんもそこに乗っかって、半透明のステラに寄り添われながらも話す。
「毎度のことだが、微妙に年齢層高いのなんなんだろうな。30代40代がメイン層なのは前からの話だったが、昨日なんて還暦近い爺さん婆さんまでいただろ。あれにゃビックリしたよ」
『みんなしてオペレータの悪口言ってたね、千尋。探査者社会のせいで自分達は活躍の場を奪われたんだーって』
「探査者の活躍の場なんて基本ダンジョンだろうに、何をどう奪われたんだかな。自分らだって生まれてもないような頃の大戦期の話まで持ち出して被害者ぶられても、もはや意味が分からんよ」
ビールを呷りつつぼやく彼の、困惑は俺達全員に共通しているものだ。
いやー、いたんだよマジで。"探査者に活動の場を奪われた"と口にし、あまつさえ90年前の大戦を引き合いに出して現行社会の不当性を主張してきたような初老の方々が。
……いくつも周った敵の拠点だけど、中身があるようなところは総じて単なる遊び場、あるいは社交場。言うなれば部室のような場所でしかなさそうだった。
そんな中の一つに、まさかの古民家があったんだけど。そこにいた構成員10数人のうち、約半数ほどが俺の爺ちゃん婆ちゃんくらいの年の方々だったのだ。
そしてさっき言ったようなことを口走りながら、どこから仕入れたんだかミニガンだバズーカやら持ち出してきたもんだからもうてんやわんやだよ。
ここまで来たらもう戦争か紛争かだろ、いい加減にしろ! とさすがに俺も反射的に手を出しちゃったからね。具体的にはスキル《あまねく命の明日のために》による山形くんビームで全員の武装部分だけをぶち抜き、無力化させてもらった。
銃火器の類なんて、一回でも撃ち込まれたら俺達は無事でも近隣への被害が恐ろしい。
なんなら悪魔憑きもいて、アンジェさんの《重力制御》に逆らいながらもおもむろにマシンガンを手に取った初老の女性がいたのにはさすがに参ったよ。
「でっけえ機関銃を両手に抱えてたあの婆さん、すげえド迫力だったぜェ……悪魔憑きの威力を最大限、発揮してたんじゃねえのか、アレ」
「まるでアクション映画みたいでしたもんねー。即座に公平さんに無力化されてなかったら、間違いなくあの家丸ごと崩壊してましたよー」
「私なんてびっくりしすぎて動けませんでした……さすがは山形様、とっさの判断がチョベリグでした!」
「チョベリグ!?」
いくつ!? 焼酎が気に入ったのかやたら呑むミュトスさんの、信じがたいほどの死語に慄く。
それはともかくとして、精霊知能達でさえ度肝を抜かれるほどのインパクトがたしかにあったのだ、その女性には。なんなら彼女と契約した悪魔に一本取られた心地ですらある。どこのどいつだろうね、あんなとんでもない人に力与えたの。
ともかくそんな感じでトンチキ連中を相手にしつつも17箇所、すべてを潰しまわったわけ。
8月29日。明日明後日と過ごしたらもう、9月1日からは新学期の始まりだ。このタイミングでひとまず目処が立ったのは俺としても大助かりだよ。
さすがに登校準備くらいはしたかったしね。
「捜査のほうは引き続き、とっ捕まえた連中の取り調べも踏まえて行っていくけど……公平達ってば明日には一回、関西に戻るのよね? で、ハイスクールに通いつつ空間転移でこっち来て協力してくれる、と」
「そうなりますね。ただ、時折オフの日とか普通のダンジョン探査も入れたいかなーとは思いますけど」
「協力者で、しかも学生さんだ。青春ってやつを優先してもらったほうがこっちとしても罪悪感を抱かなくて済むよ、山形さん」
アンジェさんや神奈川さんと今後について軽く話す。ぶっちゃけ、ここから先は関西での学生生活と関東での捜査協力で二重生活じみたことになる。
なんせ学生だもんで、探査業も大切だけど学業だって大事にしていかなきゃいけない。そのへんはみなさんご理解くださっていて、なんなら青春しろよ! と爽やかなことまで仰ってくれるのだ。
ある程度はお言葉に甘え、私生活も大切にさせてもらおうとは思うよ。
「せ、青春……! うあああ眩しい、シャイニングさんだけに眩しい……!!」
「えぇ……?」
ぴゃー! とか奇声を発しつつ両目を覆うランレイさんが怖い。別に今光ってませんけど俺!
この人、下手したら俺より陰の者……いやよそう。上には上がいるのかも、なんて考えだしたらお互いドツボにはまるだけだしね、うん。
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