まだまだワルは犇めいてるぜ!というお話
歯を磨き、身嗜みもササッと整えて部屋の前へ。もうすっかり朝を迎えて、通路にはいくらか人も見えるね。
たまに通りすがる人が俺を見てあっ……みたいな何かに気づいてそそくさと会釈してくるのは、やはり昨日の件でのことなんだろう。あっ、シャイニングだ、的な。
俺もそそくさと会釈を返しつつ、精霊知能達を待ちながら壁に背をもたれかけ、浮いた時間で今後のことを考える。
認定式というビッグイベントというかメーンイベントは無事に終えたものの、結果を見るとサークルやダンジョン聖教過激派にはさしたるダメージを入れられていなさそうなのが問題だ。
なんせ過激派の首魁たるアンドヴァリを取り逃がしたわけだし、サークルに至ってはリーダーの藤近とかは姿すら拝んでない。
大勢とっ捕まえられたから敵の気勢を削げたのは大きいけれど、中核には届いてないってのがなんともはや、惜しい話ではあった。
「瀬川に取り憑いていた悪魔と、あとウーロゴスを何体か……目に見える戦果はこのくらいかな? おまわりさんやWSOからすると、また違ったものが見えてるだろうけど」
『悪魔にしても、確保しただけで肝心のバリアについては据え置きじゃないか。あの権能を取り上げさせるとかしないのかよ』
「次、現れたらそうしてみようかとは思ってるよ。契約に基づきあいつを見逃したのはアレっきりだけだしな……まあ、タネが割れた以上バリアがあっても突破できそうな気はするが」
脳内のアルマと小声で話し合う。俺の視点から見て大きな戦果と言えるのは、概ね今述べた通りでセーレとウーロゴスの一部、この二つなんだよね。
そのうち、ウーロゴスについてはミュトスの強化に役立ってくれてるから良いとして。一方のセーレに関しては、瀬川のバリアを踏まえて考えた時に、アルマからすると生温い対応にしか見えないみたいだった。
まあ、やろうと思えば普通に仕留められたからな、昨日。
それでもそうしなかったのは単純に、セーレとの"この一回限りは瀬川を見逃す代わり、悪魔セーレは知る限りのことを話す"という契約を履行するためだけだった。
つまり二度目はないってことだ。
次にやつが目の前に現れたら因果操作でもなんでもしてバリアは無効化するし、たとえしなくてもその性質──瀬川への一切の敵意を無効化する──はバレている。
アンジェさんやランレイさん、他S級探査者の方々なら何かしら対策を編み出したっておかしくはないので、どうあれ瀬川に関しては次会った時が年貢の収め時じゃないかなって感じはするんだよね。
「瀬川がサークルの最高戦力って話だし、あいつを押さえればサークルについてはなんとかなるだろ。ただ、アンドヴァリのほうはなあ」
『悪魔の横槍があったとはいえ迂闊だったね、君も。あの暴走聖女に引き続いて攻撃させといたほうが良かったんじゃないのか? 取り巻きが何人死のうが知ったこっちゃないでしょ、なんなら用済みになった聖女ごと消し飛ばしてしまえば良かったんだ』
「怖ぁ……良いわけあるか、人間同士の殺し合いなんだぞ」
相変わらず邪悪っすねこいつマジで……分かりきっているけど性根の酷薄さがすごくて震える。
アンドヴァリの逃走については俺の油断というよりは複合的な条件が重なってのものだ。当初はシャルロットさんを止めることのほうや、アンドヴァリの味方をも盾にした悪辣さに意識を割かれていたことがまず一つ。
加えてやつの《土魔法》の発動を即座に止めようとしたタイミングで、セーレが突然横槍を入れてきたのでそちらに対応せざるを得なかったというのもある。
あの時のセーレ、空間転移を使用してきたしなあ。鬼島の時とは異なりマジでいきなりその場にやってきたわけなので対応が遅れてしまった。
そうした要因が重なって、ものの見事に逃げられてしまったわけだね。
自分で言うのもなんだけどどれか一つでも欠けていたら今頃アンドヴァリは檻の中だ。瀬川と違って逃がす理由もないし、だからこそ逃がしてしまったことは本当に悔やまれる。
「俺は今後しばらくアンジェさんチームに参加して、サークルの捜査に協力するけど……ぶっちゃけアンドヴァリのほうが気にはなるよなあ」
『言ってもサークルと過激派はやっぱりつるんでるんだろうし、となると捜査するうちにまた出くわすだろ。今度もまた悪魔の妨害とかあるかもだけど』
「それな……セーレ以外にも悪魔、いるんだよな」
委員会の悪魔アドラメレクと、そいつが呼びつけた友人知人の悪魔のみなさん。セーレの話から浮き彫りになったそいつらはそいつらでまた、いつどこで仕掛けてくるかも分からない。
アンドヴァリも瀬川同様、次見かけたらとりあえず捕らえるつもりだけど不確定要素があるのがなんとも不安な話だ。権能はモノによっては厄介だしな。
「──と。言ってる間に来たな、ヴァール達」
「お待たせですー公平さーん! バッチリ準備OKでーす!」
「早朝からずっとテンションが高いな、後釜は……」
問題が山積みだなあーと思わず吐息を漏らすと、ハイテンションなリーベがヴァール、シャーリヒッタ、ミュトスを引き連れて戻ってきた。
仰る通りに準備万端か。よし、なら行けるな。元気一杯な彼女とその仲間を迎え入れ、俺達はいよいよ大会議室へと向かうのであった。
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