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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
本編

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御堂'sオリジン

「驚かせてしまってすみません、公平くん。実家がそれなりに大きいこと、そういえば伝えていませんでしたものね」

「いやあ、もう心臓止まるかと思いましたよ……」

 

 本当にビビった。マリーさんが本気でキレた時くらいビビった。どっちも昨日今日の話な辺り、今月だか今週だかの俺の運勢は終わってると思う。

 じいやさんや女中さんたちを前に、生まれたてのバンビならぬ生まれたての山形を披露しかけた俺だったが、香苗さんにフォローしてもらってどうにか、その場をやり過ごした。

 

 じいやさんが何だか、生暖かい目をして微笑んでいたのが気になったが、正直もう一秒でも早く落ち着ける場所に行きたかったので香苗さんに案内してもらう。

 外から見ても大きな屋敷だけど、実際中身もめちゃくちゃ広い。もう迷宮みたいだ。

 客間に案内するとのことで歩きながら、香苗さんが色々と説明してくれた。

 

「私の曽祖父、つまりひいおじいちゃんですね。名を御堂将太と言うんですが実は、その人も私同様に探査者だったんですよ」

「え。そうなんですか? ひいおじいさんってことは、大ダンジョン時代が始まってすぐくらいの人なんじゃ」

「ええ、そうですね。88年前、16歳で突然スキルを獲得してそこから60年、ダンジョン探査を生業にしていたみたいです。S級でこそありませんでしたが、マリーさんも、まだ新人だった頃に交友があったとか」

「それは、また……年季の入った話ですね」

 

 100年続く大ダンジョン時代の、始まりから12年目だなんて、今からすれば初期も初期だ。ましてあのマリーさんが、新人だった頃なんて70年前とかそこら。

 つまりはマリーさんより18年も先輩さんってことになる。最初期の激動も経験していただろうし、何ともはや、歴史を感じる話だな。

 

「曽祖父は6年前、98歳で亡くなりましたが……何しろ半生かけてダンジョン踏破してきた人です。資産もとてつもないもので、それを祖父やら父がうまく転がしているうちに、こんな豪邸に住むようになったとか。いわゆる成金探査者の家系ですね。お恥ずかしい」

「そんなことありませんよ。命をかけて長年、人々を守ってきた偉大な探査者の、得て然るべき報酬です」

「ありがとうございます……そうですね。曽祖父は人柄も良く、余所者を敬遠しがちな土地柄のここにもよく根付き、地域や地元の人々に愛される素晴らしい人でした。私にとっても探査者として、ひ孫としての自慢です」

 

 しみじみと語る香苗さんには、きっと今、在りし日のひいおじいさんとの思い出が蘇ってるんだろう。

 俺にとっても感銘を受ける話だ。探査者になってまだ一月だけど、きっとこれから長いこと、ダンジョンと向き合うことになるのは容易に想像できる。

 ましてやアドミニストレータなんて特異極まる立場だしな。そんなわけで、マリーさんや将太さんみたいな大御所さんの姿や話は、ものすごくありがたいと思える。

 

 と、話をしているうちに客間に着いた。

 お客さんを通す部屋なだけあってか、広々した和室だ。なんていうか、旅館の部屋を思い起こす。テーブルにはあの、よくある木製のパズルなんか置いてあるからなおのことだ。

 備え付けの座椅子に座るよう、俺を促して香苗さんが言う。

 

「着きました。客間はこちらになります。本当なら私の部屋に来てもらっても全然、良かったんですが……」

「勘弁してください」

「残念です。まあ、それは追々ですね」

 

 怖ぁ……何が追々だよ、あと3年はしないと捕まっちゃうよ、香苗さん。

 ともあれ腰を落ち着かせる。はあ、緊張した〜。

 とんでもなく豪華なお家に、執事さんに、女中さんたち。まったくこの人、お嬢様なんだなあ。

 本人はまるでお構いなしに、せっせと俺の前に湯呑を置いて、お茶なんか入れてくれてるけども。

 

「はい、どうぞ。直に家族がこちらに来ますから」

「緊張しますね……その、俺の評判ってどうなんです?」

 

 そもそも家族構成もろくに知らないんだけど、とりあえず一番気になるところを尋ねる。下手に嫌われてたりしたらもう、ここはダンジョンよりヤバい俺の敵地と化すだろう。

 何なら、《風さえ吹かない荒野を行くよ》すら発動しかねない。荒野とはこのことだったのか……?

 怖ぁ……

 

「その、あまり良い感じでなかったらすぐお暇しますんでホント。残るGWを精一杯、ボーッとしたりゲームしたり動画見たりして過ごしますんで。ホント」

「自分のこととなると途端に、自信をなくしますね……大丈夫ですよ、みんなには既に、公平くんのことを包み隠さず話しています。重い使命に苦しみながら、それでもなお、弄ばれる命に手を差し伸べるこの世の救世主だと」

「……伝道済みかぁ……」

「? もちろん」

 

 キョトンと、何を今さら? みたいな感じなのがひどい。

 弟さん相手にも何やら伝道してたみたいだが、恐らく家族一同にやったな、この人。

この話を投稿した時点で

ローファンタジー日間2位、週間2位、月間1位、四半期2位

総合月間5位

それぞれ頂戴しております

本当にありがとうございます

引き続きブックマーク登録と評価の方、よろしくお願いいたします

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― 新着の感想 ―
[一言] すでに洗の、伝導済みですか。 抵抗しているのは、弟さんだけなのかな?。
[一言] ぶれないなあ
[一言] 侵攻シューキョーがどう伝播してくか考えれば むしろ何故伝道してないと思ったのかね山西クゥ~ん
感想一覧
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