朝の目覚めは美少女カルテットともに
S級探査者認定式を巡る一連の攻防は、結果的に見れば式典の完遂という形をもって俺達警備側の勝利に終わった。
香苗さんへのS級探査者認定証の授与からその後の立食パーティーに至るまできっちりやり切ったのだ。周辺が多少騒がしかっただけで法や秩序は保たれ、国や警察やWSOの面子も保たれた形になるね。
異世界の神、今や精霊知能ミュトスとなったモノの権能を分割して投入さえしたサークルやダンジョン聖教過激派だったけど……警備側の探査者達やおまわりさん達の奮闘により、ものの見事に返り討ちにすることができたのは大きな戦果だ。
ただ、首謀者たる先代聖女アンドヴァリやサークル幹部の瀬川聡太はじめ、敵組織の主だった主要人物は結局誰一人捕まえられなかったとのことだからまだまだ、この騒動は長引くだろうというのが俺にも察せられる顛末だったよ。
「朝かぁ…… あー、よく寝たなぁー」
そんなS級探査者認定式から一夜明けて朝、5時。慣れない超豪華ベッドで寝たからか、やけに早く目が覚めた俺は身を起こし、軽く伸びをして身体の凝り固まりを解した。
どうもおはようございます、山形ですよ。立ち上がってカーテンを開ければすでに空は明らんでいて、今日も良い天気だなあ。
無事に戦いが終わった昨日。みんなでお疲れって言い合いながらもホテルに戻った俺達は、到着するや否やすぐに用意されていた豪華ディナーをたらふく食べてすぐに自室に戻った。
ミュトスやシャーリヒッタ、サウダーデさん達とも合流しての食事だったんだけど正直会話もそんなにはなかったんだよね。
明日、つまり今日の朝から改めて合同会議を開いてから話し合いをするってのとみんなもう結構疲れちゃってたのもあり、本当に最低限のやり取りだけして食べるだけ食べて眠りに就いたってのが実状だ。
いつものダンジョン探査とは違って町中、敵はモンスターだけでなく同じ人間でしかも、数時間あちこち駆け回っての長期戦だ。
歴戦のS級探査者はピンシャンしてたけどそれ以外の、A級以下の探査者や能力者犯罪捜査官の人達がもうひたすら疲れ切ってたのが印象深い。
かく言う俺の周りでも葵さんやリンちゃんが結構疲れた様子でいたからね。ミュトスやシャーリヒッタについてもまた別の気疲れもあったし、医療班のほうで負傷者を助け続けていたらしいリーベも《医療光粉》を使いまくってたためにちょっとお疲れモードって感じだった。
そうなると比較的元気へっちゃら! な俺や香苗さん、サウダーデさんやエリスさんにベナウィさんもまあ静かにするよねって話だ。
……ああでもアンジェさんチームはなんか結構テンション高かったな。マリーさんも交えて酒を飲みまくってた気がする。
朝起きれるのかなー、などと心配しつつも風呂場へ。せっかくの豪華ホテルだ、朝シャンしちゃうぜうっへっへ。
寝汗もそんなかいてないけど、まあノリで軽くシャワーを浴びる。早朝からスッキリ爽快ポッカポカな心地になってから着替えを済ましてリビングに出ると、ふと部屋の前に何やらオペレータの気配が複数、近づいてきているのを察知する。
なんだなんだ、こんな朝早くから? と思ったけどこの気配、精霊知能の魂特有の感覚がある。
数も4つでちょうど三姉妹+ミュトスだ。なんだろ、まあとにかく出迎えるけど。
俺は首を傾げながらも玄関に向かい、オートロックを解除してドアを開けた。ちょうど出くわす4名様。
リーベ、シャーリヒッタ、ヴァール。そしてミュトス。
見かけだけなら三姉妹とちょっと年の離れた近所のお姉さんみたいな4人組が、俺の目の前にやってきていた。
「おはよーっす。どしたんお揃いでー」
「……さすがだな、山形公平。ワタシ達の気配にしっかり気付いて目覚めてくるとは」
「いや、たまたま早起きだったんだよヴァール。それでとりあえず朝からシャワーを浴びてすっきりした矢先だったんだ」
いきなりドアを開けて挨拶してくる俺に、驚きつつもなるほどと納得した様子をも見せるヴァール。
てっきり寝てたところを気配に気づいて起きたと思ってるんだろうけど順序が逆だね。たまたま起きていたところにこの子達がやって来たのだ。
シャワー上がりの濡れた髪を軽く触ってアピールすると、シャーリヒッタとリーベがとてとて近寄ってきて抱きついてきた。
「おはよーございまーす。えへへ、早朝の廊下ですから声は控えめですけど元気いっぱい、リーベちゃんですー」
「父様、おはようございます。昨日はお疲れ様でした、カッコよかったです、父様のご活躍っ」
「リーベにシャーリヒッタもおはよう。みんなも昨日はお疲れ。ずいぶん早起きだけど、ゆっくり眠れたか?」
「はいっ。元々体力的にはそんなでもなかったんで、美味しいご飯食べてぐっすり寝たらこの通り、へっちゃらです!」
頭を撫でて労うと、俺にしがみつきながら嬉しそうに微笑むリーベとシャーリヒッタ。
嘘偽りなく元気そうで良かった。軽く抱きしめて、俺は最後にミュトスにも笑いかける。
「ミュトス、おはよう。昨日はありがとう、本当に助かったよいろいろと」
「お、おはようございます。いえそんな、むしろこっちばかりが大変ご助力いただいちゃって……権能もまだまだ取り戻せてもないですし、トホホーって感じではありますし……」
「それは君のせいじゃない。君は自分ができることを精一杯、やってくれてるよ。感謝している」
「こ、コマンドプロンプト様……」
昨日仕留めた分のウーロゴスだけでは、権能すべてを取り戻せなかったことを気に病んでいるようだけどそんなのは彼女のせいではない。
勝手にこの子の力を好き放題に利用している、この世界のモノ達こそが悪いのだ。だから気にしないでほしいと慰めると、ミュトスはホッとしたように笑ってくれた。
「さあ、こんな早朝から通路で立ち話でもなんだし入ってくれ、みんな。何かしら話があるんだろ?」
と、ひとしきり挨拶を交わしたところで室内へ促す。
なんの用であれ、この子達を軒先対応だけで終わらせたりはしないさ。大切な家族とも言える子達なんだから、ね。
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