救世主×最年少S級、夢のコラボレーション!
現れし概念存在。愛知さんが呼び出したモノ、それはスレイプニル。
あんまり神話に詳しいわけじゃないけど有名な存在だ、というかめちゃくちゃ大きい。一軒家くらいあるんじゃないか? ってくらいハチャメチャでかい馬だ。そして足が8つある。
魂の格、そして召喚条件の多さから逆説的に考えても間違いなく高位の神霊もしくは悪魔だ。普通の召喚スキル保持者にはなかなか喚び出せないだろうクラスの存在とも言える。
そんなのを軽く呼び出すなんて、愛知九葉……さすがS級探査者が召喚スキルを使うとなると、ここまでのことができるのか!
「スレイプニル! 北欧神話における最高神、オーディンの愛用する軍馬として名高い神獣ですね」
「オーディンの……ああ、さっきも愛知さんが言ってましたね、北欧の大神の僕とか」
「恐ろしく強烈な気迫を感じるね……! 下僕であれとは、オーディンってのも相当な力を持ってそうだ、ファファファ!」
やはりファンタジー系に詳しい香苗さんが軽く説明してくださり、一方でマリーさんが大神の軍馬スレイプニルの威容からその主たる、オーディンの実力に想いを馳せて獰猛に笑っていらっしゃる。
怖ぁ……この場に織田がいたらなんて反応するだろうか。S級探査者の上澄みは明確に自分より強いと言ってたし、引退したとは言え未だにトップクラスだろうこの人に目をつけられたなんて知ったら、さすがに平静でいられないかもしれないなあ。
今度織田に会ったら伝えとこ、マリアベール・フランソワさんがあなたの力と強さに興味津々でしたよって。
そんな益体もないことを考えていると、愛知さんが勢いよく飛び立った。地面を蹴って飛び跳ね、スレイプニルの背に降り立ったのだ。
「ハァッ!! ──それでは私はこれからアンドヴァリ追撃に向かいます。シャイニング山形さん」
「え。あ、俺ですか?」
「……どうやら君も向かう先は同じようだ。一緒に来るか? 君がどう思うかはともかく私のほうが、実のところ手数がほしいんだ」
凛として軍馬の広い背中に立つ、ライダースーツの美女から思いがけない提案。この馬に乗って一緒に都市部でアンドヴァリ探しときたか。
面白いし、何よりありがたい提案だ。空間転移のほうが早いっちゃ早いんだけど、あんまり公の場で使いたいタイプの権能じゃないからね。
それに彼女の言うように手数は大事だ。スレイプニルの召喚で愛知さんも力を使っているし、そのサポートあるいはフォローって形で俺に助けを求めてくるってのは合理的に思えるよ。
一も二もなく俺はうなずき、そして答えた。
「分かりました、ご一緒します! ……というわけでみなさん、俺は愛知さんと二人でアンドヴァリとシャルロットさん、アンジェさんチームの捜索に向かいます」
「分かった。何かあったらまた連絡をくれ、こちらも何かあればすぐに報せる」
「公平くん、どうかご武運を。できればご一緒したいところですが……」
「香苗さんは今日の主賓ですから。荒事は俺達に任せて、あなたは大船に乗ったつもりで安心して過ごしていてください」
簡素ながら行ってきますと伝え、俺は最後に一度だけ周囲の気配を感知した。能力者多数、なれどもこちらに迫る不審な影はなし。
もちろん概念存在の気配もない──今のところはオールグリーンってところか。さすがに敵さん方も矢継ぎ早に攻めてこれてないみたいだし、虎の子だろうウーロゴスだってそう頻繁に送り込める代物じゃないはずだ。
つまり当面のところ、式典会館近辺は平穏無事が見込めると見た。
けれども油断せず、俺は俺の代わりに置いていく形になる後詰め役、精霊知能ミュトスへと話しかける。
「ミュトス、ウーロゴスのことは一旦君に預ける。いやアレのことだけじゃなく、できればこの近辺に不審な連中が来た場合、積極的に警備の方々に協力してあげてほしい。分からないことがあればヴァールに聞くと良いよ」
「アイアイサー! お任せあれ山形様! この周辺の護衛も含めてきっちりズバッとバッチリドッキリ、やり抜いてみせまーす!!」
「頼もしいな、助かるよ……じゃあ、行ってきます!」
準備万端、後はこちらが動くだけだ。俺は軽く飛び立ち、スレイプニルの背中へと移り飛んだ。
愛知さんのすぐそばに立ち、その顔を見る。凛とした表情は無感情にも見えるが、それでも瞳に宿す使命感や責任感はまるで蒼く揺れる炎を想起させる。
なんとも異色だ。俺はこれから、S級探査者たる愛知九葉さんとともに敵へと向かうのだ。
軽く会釈すれば彼女も呼応して会釈してきた。そしてすぐさま前を向き、スレイプニルへと指示を下す。
「スレイプニルよ、私の願いを聞き届け給え──! 行こう、一緒に!!」
『─────────!!』
召喚者の呼びかけに快く……かどうかはわからないけど、高らかな嘶きをあげてスレイプニルは駆け出した。否、飛び出した。
八本足を動かせば動かすだけ、その巨体が浮いていく。文字通り空を走っているのだ。さすがは概念存在、メルヘンチックなことをするなあ、このお馬さん!
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