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救世主神話伝説・伝道編

 周囲ではテロリスト達と警護探査者達との激突が始まっているけど、立食パーティー会場は概ね和やかと言うか平時のテンションみたいだ。


 そりゃまあ当たり前の話で、ここまで阿鼻叫喚になってたら認定式は普通に失敗って扱いになっちゃうだろうからね。

 多少遠くの騒ぎが聞こえてきても、ここだけは予定通りに話を進めないといろんなところのメンツが潰れちゃうからこれでも必死なわけだ。


「いやあ、ははは……まあまあ、うん。賑やかですなあ」

「ですなあ……あー、まあ、我々は我々で、ね? コレが仕事ですから、ね?」

「逃げ、ゲフンゲフン、ほどほどのところで切り上げるというのもことここに至らばし辛いですし。やれることと言えば腹を括って政治と経済と外交の話くらいなものですな!」

「まったくもって! ははははは!!」


 近くの大物然とした政治家さん達が、冷や汗をかきながらそれでも余裕ぶっていらっしゃる。

 なかなかすごい覚悟と胆力だ……さすが海千山千って感じ。自分達に今できることをやろうとするのはどこの誰であれ変わらないってことなんだろう。


 そんな中、ヴァールが話しかけてくる。マリーさんに香苗さん、セーデルグレンさんに愛知さんを伴っての合流だ。

 なんなら別方向からは昼間お会いした国内S級の最上さんに里見さん、そして香苗さんのパーティメンバーたる横山さん御陵さんに鈴木さん達も来ている。


「よく戻ってきてくれた山形公平。すまんなウーロゴスの相手を何から何まで任せきりで。ミュトスにも後で感謝するがあなた達には助けられたよ」

「いやいや、これが今回の俺の役目だから……で、どうなるんだこれから? あっちのウーロゴス、香苗さんがお相手するって話、なのか?」

「…………ど、うだろう、なあ。なんとも、それは」

「えぇ……?」


 ウソだろお前、そこで言い淀むのかよ。あからさまに困った様子のヴァールに思わず呻いてしまう俺ちゃんだ。

 見れば香苗さんはニコニコ顔でおもむろに彩雲三稜鏡を用い、何やらいかしたコートを形成してドレス姿に肩から羽織っているし。風に靡いて揺れるソレは、中二ハートにビシビシ刺さるカッコいい漫画キャラがよくやってるタイプの着用の仕方だ。


 クールな見た目と相まって非常に似合うんだけど、何をしようとしてるんだあの人? なんかマイクを片手にしてるし。何?

 周囲が突然の奇行に唖然としたり驚いたり、顔を顰めたり……あるいは分かってたよと言わんばかりに白目さえ剥き始める人もいる中、香苗さんはそして、マイクを通して会場にいる人達に話しかけた。


『──皆様。お疲れ様です、S級探査者の御堂香苗です。本日はお忙しい中、不肖私のS級探査者認定式にお集まりいただき、大変ありがとうございます』

「なんか始まったぞ、横山……」

「み、みたいですね」

「なかなか面白いものが見れそうだな……いろんな意味で」


 凛としつつ涼やかな声での語り口はまるでアナウンサーさんか声優さんみたいだ。明瞭で、滑舌よく、人の耳にすんなりと入ってくる。

 けれど普段の伝道師ぶりをよくよく知っている人達からは何かを察するかのように引きつった声があがるばかりだ。


 そう、伝道師。見てきた人なら十分に分かるだろう、これは伝道師ムーヴだ。

 それも生半可なものでない、噴火直前みたいなテンションなのだ……普段なら先程同様秒で句読点飛ばすのに、今は穏やかに語りかけてきているのがその証拠。

 まるでエネルギーを溜め込んでいるかのように静かに、淡々と話を進めているのだ。


『あちらの空をご覧ください。あそこにいる謎の巨大モンスターはその名もウーロゴス。ダンジョン聖教過激派によって使役されし邪悪なる化生であります』

「ダンジョン聖教過激派……!」

「やはり連中の仕業か、この騒ぎは」

『今しがたまで我らが救世主こと、そちらにおわす偉大なる存在にして至尊なる山形公平様がその身に宿す究極の力でもって対峙してくださっていました。まずはそのことにみなさん、限りない星の数よりなお無限の感謝と敬意と尊崇を抱きましょう。救世主様バンザイ。正直なところ救世主様のご活躍をこの目で見たかったそして未来永劫人の世が滅ぶまでいえ滅んでもなお受け継ぎたかったという思いはありますが仕方ないことといたしましょう救世主様バンザイ』


 ウーロゴスという名と、出所たるダンジョン聖教過激派の存在について開示され、政治家の人達やその他VIPさん達がやはり彼らの仕業かとざわめいている。

 当然ながら情報自体は掴んでたんだな。難しそうな顔をみんなして浮かべるんだけど、次に香苗さんが俺を見ながらとんでもないことを言い出した瞬間にシーーーン……と場が一気に静まり返った。残念でもないし当然である。


 そんなあからさまなドン引きの空気にもなんら堪えることもなく、香苗さんはいよいよウーロゴスのほうに身体を向けた。

 やつはやはり何もせずぬぼーっと立っているばかりだ。


 維持こそできていても、制御が利かないからこうなる。

 あくまで囮として運用しているサークルや過激派の使い方は、ある意味理に適っているのかもな。褒められた話じゃないけれど。


『ですがこれよりはこの私、御堂香苗が我が究極の技をもってウーロゴスを食い止めましょう! 救世主様お一人にすべてを任せては伝道師の名折れ! そして!!』

「!?」

『この活躍をもって私はここに改めて宣言します!! 救世主山形公平様を称える宗教団体、救世の光はこの世の救い主たる山形公平様とともにあることを!! みなさん! 老若男女問わず立場も問わず、御方への信仰こそがこの世を救う方法なのだとこれよりお見せしましょう!! 私が編み出した伝道の極地によってっ!!』

 

 ヒートアップしていくテンションの香苗さん。それに場の一同が呑み込まれるのを感じる……否応なしに人を惹き付けるカリスマ性、いやそういう資質をこんなことに使わないでほしいかな!

 とはいえそれより、明らかに何か技を放つ体勢だ! マイクを持たない方の手を天高く掲げる、香苗さんの身体から溢れる虹の光。


 《光魔導》……だけど虹が架かってない。否、香苗さんの周囲に七色の光が集まって渦巻いていく。

 コレは一体? 戸惑いの中、彼女はそして、その奥義を叫んだ!

 

『救世主様、さあご覧くださいこれが伝道師御堂香苗の信仰の極限っ!! その名も"伝道虹彩"──プリズムアーク・エヴァンジェリスターッ!!』

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― 新着の感想 ―
[一言] だんだん伝道の速度が上がっていくのまじ笑う(爆)
[気になる点] >>エヴァンジェリスター ちょっと気になったので英和辞典で調べてみたら、 「EVANGELIST」→「福音伝道者」…「伝道虹彩」…。 怖ぁ…。 ※ところで、なぜ「ER」…「比較級…
[一言] 会場に穴はあきませんか…?
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