サークルという組織─モンスターさえ嘆く者ども─
三体目のウーロゴスの頭上に向かうと、そこには今度は複数人の男女が固まって鳥型モンスターの上に乗っていた。
見た目にいずれも私服……すごいラフなカッコだ。なんなら半ズボン履いてるのまでいる、寝間着かな? とにかく若い感じの服装なんだけど、反面歳の頃は30代前後に見える程度には大人びている。
その割に幼気な振る舞いが目立つ、なんともアンバランスな集団だ。
そんな彼らはこっちを視認して、何やら騒ぎ始めていた。
「お? おい、なんか空飛んできたぜ! あいつもしかしてアレじゃね、アレ!」
「マジー? シャイニングじゃん、キモーイ!」
「さっきあっちでウーロゴスの相手してたのに、どうやってここに来たんだ? 早すぎね?」
『…………なんだ? こいつらは』
困惑。あまりに軽薄なノリに思わず脳内のアルマさんがつぶやいた。こいつをここまで唖然とさせるのはなかなかすごいね。
まあ順当に考えればサークルの構成員ってところかな。さっきまでのローブ姿と明確に違うし、見た目もこう、夏休みの大学生感あるし。
昨日の会議で見た、サークルの活動写真と似たものを感じるんだよなぁ……事態にそぐわない軽さも相まって、どうにもこの時点でやり辛さを感じなくもない。
とはいえこれは遊びじゃないんだ。目の前の男女の何人かからもオペレータの気配を感じるし、この中に召喚スキル持ちがいるんだろう。
止めなくてはならない。俺は彼ら彼女らに話しかけた。
「ウーロゴスを召喚したのはあんたらか。見たところサークルの構成員のようだけど、今すぐ投降してお縄についてくれないかな?」
「うーわ喋ったわこいつ! マジ喋んじゃんシャイニングくん、オモロ、写真撮ったれ!」
「つうかキモいし何様〜? せっかく楽しいとこなのにウッザぁ!」
「イキってんじゃねえよガキが、いっつもいつも美人侍らせて調子こきやがってよお〜」
「えぇ……?」
怖ぁ……話が通じない。なんかオモロがられて写真取られるわ、キモい言われてうざがられるわ、イキリ判定くらってピキられるわ散々である。
これには俺にも閉口しかけるが、それ以上に脳内のアルマさんがイラッと来ちゃったみたいだった。最近にはない静かさでポツリと俺の頭の中で、淡々とつぶやいているのだ。
『…………公平、殺せこいつら。魂の欠片一つ残さず消滅させろ、不愉快だ。かつてなく不愉快だ、とにかく不愉快だ』
「怒りすぎだろお前も……聞く耳持たなくて良いって。どうあれ俺のやることは同じなんだから」
根本的に堪え性のないこいつは、この手の煽りを入れられるとすぐに物騒なことを言い出すんだから困る。匿名掲示板の煽りとかと一緒でこんなもん、気にするだけ仕方ないのに。
あんまり長引くといよいよアルマがキレちゃいかねないし、さっさと終わりにするべきかな……そう思い、顎を引いてモンスターの上、座ってこちらにアレコレ吐き捨てている連中を見据える。
どうも酒を飲んでいるのか? つまみに缶ビールとか瓶のお酒がある。
上空で酒盛り、それもこの修羅場を生み出しておいて、か。正直俺としても不快さはあるな、さすがに。
地上の光景、ウーロゴス。自分達のやっていることになんの罪悪感も抱かず、むしろ酒のあてにして面白がっているとでも言うのか。
「……なんでこんなことをする? サークルの目的は社会の仕組みを変えるとかって聞くけど、それは本当に目指すべきものなのか、あんたらにとって」
「うっぜ、説教かよこのガキ年上に向かって。まじイキってんじゃん」
「何様ぁ? つーかダサいから話しかけんなって、キモいのが移るし!」
「どうでも良いしな、サークルの目的ーとかぁ。こっちゃ面白おかしく酒呑みながら騒げれば良いんだってぇ! ついでに生意気な連中の吠え面とか見ながらよ、ふひゃははは!!」
念の為に最後にもう一度質問したけど取り付く島もない。とにかく俺が気に入らないみたいで、ものすごーく反発してきている。
これはちょっともう、少なくとも今の時点ではまともに相手してられないな。そんな余裕も暇もないし、ついでに義理も理由もない。
俺個人へのアレコレは好きに抱いて結構だし、イキってたりダサかったりキモかったり何様だったりするところは、なるほど彼らからすればそう思うところはあるのかもしれない。そこはどう受け取ろうが彼らの自由だ。
だけどそれはそれ、これはこれなのも真実。今こうして彼らが犯罪、それもテロリズムに及んでいることは事実だし、そこに俺がどうのこうのは一ミリも関係ないからね。
────だから、まあ。
とりあえず、取り押さえようか。
「はぁ……《ことが終わるまで寝ておけ。あとゴミは片付けろ》」
「っ!? な、テメ──!?」
「はあ!? なにこ、れ……」
「うっ!? ぐ、うあっ!?」
コマンドプロンプトとして、魂から威圧をかける。オペレータも混じっているとはいえ基本、只人の魂がこれに抗えるわけもなく彼ら彼女らは気を失い、言われるがままゴミ掃除をはじめた。
酒の缶やらおつまみを無言で片付け、地上落とさないように強く抱えたまま倒れ込む。それをワームホールでエリスさんのところに送り、はい一丁上がり、だ。
あとは土台になっていたモンスター、D級のたしかビッグトマホークだったかな? を片付けるだけだな。
「お前も大変だったな……お疲れ。《清けき熱の涼やかに、照らす光の影法師》」
「くきゅるるるるるる……」
乗っかられた挙げ句上で酒盛りやられて、さすがに気の毒だったので労いつつ浄化する。
モンスターがどこか、疲れたように鳴きながら消えていったのが印象的だった。
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