うおォン、彼らはまるで人間電池だ
解き放ったエネルギーの奔流。山形くんビームがウーロゴスの体内を直撃して貫通して、はるか空の彼方へ飛んでいく。
生命体には害を為さない光線だ……こいつの体内に何がいたとしても問題ない程度に収めてある。
召喚士が失われてなお独立している概念存在。権能のみの状態なのを加味しても明らかにこれは異常だ。
間違いなく何かある。過激派の首領、アレクサンドラ・ハイネンは確実にもう一手二手、目の前の朧な巨体にギミックを仕込んでいるのはもはや明確だった。
ならばまずは、それを突き止める!
「どひぇひぇー!? こ、コマンドプロンプト様の一撃必殺ぅ!」
「いやいや、殺してはないけども……ミュトスもよく見てくれ。君の権能、何か弄られてる可能性が高い」
後ろで古めかしいノリで慄くミュトスに苦笑いしつつ、彼女にも敵の観察をお願いする。
この子の場合、他ならぬウーロゴスの半身そのものだからね。俺が見るよりも違和感に気づきやすいかもしれないし、ギミックに対処できた後はこの子が戦わなきゃいけないし。
というわけで貫通して胸元に風穴が空いたウーロゴスを、二人でしげしげと眺める。気配はあくまで権能のそれだが、やはり何か変なものが混ざっている感じがある。
──と、空いた風穴の断面。薄ぼんやりしたウーロゴスの体内から、何かが生えているのを見た。近づいていって、よく目を凝らす。
「なんだ? アレは……」
「…………人間? え、人間!?」
程なくして正体が発覚し、ミュトスが驚きの声をあげた。
そう、断面から一部だけ覗かせるそれは紛れもなく人間の頭部。女の顔だった。
意識はなさそうで目を瞑っている。首から下は未だ、ウーロゴスに埋もれているみたいだな。
ひどいもんだ……率直に生理的嫌悪感を催す。
本来いるわけのないところにヒトがいる、それに気づいた時って筆舌に尽くしがたい怖気が背筋に走るよね。
俺もミュトスも顔を見合わせ、思わず二人で呻いてしまった。
「趣味の悪い……こうまでしてウーロゴスを使いたかったのか、過激派は……」
「人の権能を一体なんだと思ってるんでしょうか……と言いますか実際、なんでこんなことが? 何かの罰ゲームですかね」
「怖ぁ……」
発想が怖いよミュトスさん、こんな得体の知れない化物に身体ごと埋め込まれる罰ゲームとか絶対嫌だよ。
まあ、彼女が言いたくなる気持ちも分かる。元を辿れば己の権能たるモノに、どうしたことか人間が埋め込まれてるんだもの。気色悪いったらないよね、そりゃあ。
だがこれで粗方のからくりは分かった。どうしてウーロゴスが召喚されっぱなしなのかも含めてな。
やつが腕を振り回すのを回避しつつ距離を置き、俺はミュトスにことの仔細を説明することにした。
「あの女もおそらくは召喚スキル持ちだ。彼女を媒介にして今、ウーロゴスは現世に留まっていることになるな」
「え……でもさっき頭上にいたローブの人、あれが私の権能を喚び出したんじゃ」
「ああ、喚び出しはした。でもそこから先の維持については体内に召喚スキル持ちオペレータを組み込んで行っているんだ……いわば電池役だな。召喚とその後の維持を切り分けて、役割分担していると見た」
──ウーロゴスという、誰にも制御できず召喚さえおぼつかない暴走装置そのものをそれでもどうにか利用したい。そう考えての発想なのだろう。正直、見事な発想ではあった。
喚び出し役とその後の維持役を分けて、喚び出し役は外部から、維持役は内部からウーロゴスを維持させる。だから外部の喚び出し役を気絶させてもやつはこうして維持できているし、風穴空けたら中から人が出てきたんだな。
ここまでしてなお、制御など到底できていないわけだけどそれはもうなんでも良いんだろう。
召喚して維持できさえすればそれだけでも大きな脅威だし、そもそも存在そのものが放つ気迫だけでも周囲にとっては無視できない被害につながりかねない。
本当によくやる……なぜか複数体存在していることさえ含めて、なかなかできない発想だと素直に感心しちゃうよ。
「たぶん向こうで俺が拘束してるやつも似たようなことになってるんだと思う。だからウーロゴスをどうにかしたいならまず、中に仕込まれてるオペレータを切り離さないといけないだろうね」
「すごいこと考えますね、この世界の人間……ともあれよござんす! 不肖ミュトス、権能内に潜むオペレータを取り除いた上で私の力を取り戻します!」
「ああ、頼むよ。こればかりは元々同一存在として紐付いている君にしかできないからね」
仕掛けは分かった、であれば後は対策をした上で対処するまでだ。
この場合は体内のオペレータを取り除けば、ウーロゴスは現界できなくなるはずだ。そこをミュトスが叩いて、己の権能として取り戻す。
ここまで分かれば後は十分と、ミュトスが俺の前に出た。
来るか、三界機構の力。彼女の事情を理解した三体のワールドプロセッサが、その魂とともに渡した新たなる権能を駆使するための、特別なスキル!
彼女は高らかに、己の全力を解き放った!
「《イミタティオ・トリニタス・コスモス》!! さあ──お力を貸してください、魔天さん!!」
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