これが召喚系探査者の頂点だ!(神話生物首都高爆走)
我らが伝道師さんに加えてトップランナーさんまでもが独特なノリを発露して周囲を脅かす中、一人ライダースーツの女の子、愛知さんは数歩下がったところで苦笑いして佇んでいる。
やはりクールな印象の人だなあ……俺より小柄な体格だけど、なんだか成人並に落ち着いて見えるよ。
史上最年少のS級にして香苗さんの一つ前の国内S級探査者。そして神話生物ジョッキーなる噂もあって、どうにも気になっちゃう俺ちゃんだ。
マリーさんも同様らしく、ヴァールと話す香苗さんやセーデルグレンさんはさておき、愛知さんに近づいていって話しかける。
元史上最高齢S級探査者と史上最年少S級探査者のやり取りとか下手すると歴史的だ。せっかくだし俺も近くで聞かせてもらおーっと。
「失礼、愛知九葉さん……だね? お会いできて光栄だよ、私ゃマリアベール・フランソワってんだ。ちょっと前まで探査者やっとったんだ、よろしくねえ」
「あ、はい。愛知です、フランソワさん。ご高名はかねがね伺っておりました。大ダンジョン時代を代表する方にこうしてお会いできること、こちらこそ光栄の至りです」
「ファファファ、時代を代表だなんてとんでもないこと言わんでおくれ! そりゃソフィアさんだよ、私はダラダラ長いこと現役してただけだ、褒められるこっちゃないさね」
「いえ、そんなことは……70年も戦い続けるなんて誰にでもできることではありません。尊敬しています」
気さくなマリーさんに対し、愛知さんは謙虚な受け応えはもちろんのこと、どことなく及び腰と言うか心理的な距離が遠いように思える。
警戒ではないし敵視とかでもない。たぶん人見知りなんだろうな、さりげなく困ったように目が泳いでるのを名探偵俺ちゃんは見逃さない。
この人も俺と同じく陰の者かもしれないな。少なくともウェーイ系ではないとは思う。
いやまあ、これで仲間内だと盛大に高木さんムーヴするとかだとそれはそれでほっこりしそうだけれども。実はギャル系になったりとかね。ギャップあって良さそう。
真っ青な髪をした彼女を密やかに観察していると、不意に愛知さんがこちらを見てきた。マリーさんに付き従ってる形なんだから当然だよね。
先んじて会釈して名乗る。こういうのは先に名乗っといたほうが話が早く済むからね。
「あ、初めまして山形公平と言いますー。B級探査者やってまして、今日は式典の警護に参加するためやってきましたー。今はチェーホワ統括理事やフランソワ特別理事の護衛をしてます、よろしくお願いしますー」
「ああ、うん……お噂はかねがね。S級の愛知です、よろしく」
握手を交わす。小さな手だけどさすがは歴戦、力強い感触だ。
ところでお噂ってなんなんですかね? って一瞬聞こうと思ったけど、あまりに分かり切った話で怖ぁ……しか言えなさそうなので曖昧に笑っておくに留める。
もう俺に纏わる噂とか完全にアッチ方面しかないものね。そろそろ分かるよそのくらい。
代わりと言ってはなんだけどこの際だからせっかくだ、思い切ってこちらの耳に入ってきた噂についてお聞きしてみようかな。
《召喚》を駆使してS級探査者になったんだろう彼女の象徴的なエピソードというか、伝説というか……神話生物に乗って首都高を爆走したとかいうあの、アレについてだ。
「こちらこそ、お噂は耳にしていました。ええと、なんでもすごいモノを《召喚》して首都高をドライブなさるとか」
「え。いや、その……誤解だよ。日常的にやってるわけじゃなくて、今までに三回くらいしかそういうことはしていないんだ。噂が独り歩きしているんだ」
「三回もやってりゃ言われるさねそりゃ。一体何でそんなことを……」
「いえ、その。犯罪能力者の追跡などで何度か。スレイプニルで一回と、青龍を呼んで一回と。後は直接乗っていたわけでなくバイクでの追跡中、ワイバーンを2体ほど呼び出しました」
「えぇ……?」
サラリとすごいことを言ったな……本当に神話で知られている生物を複数呼び出して駆ったのか、それも二回も。
スレイプニルとか青龍って、神話に疎い俺でも聞いたことのあるビッグネームだ。たしか前者は馬だったかな、後者はそのまんま東洋の龍だったはず。
そんなレベルを喚び出すなんて、レベルもさることながらスキルのほうも、《召喚》のみならずいくつか派生スキルを持っていそうだな。
さすがはS級ともなると、召喚系スキルも洒落にならないクラスの概念存在を喚び出せるってわけだ。そりゃS級モンスターとだってタイマン張れるはずだよ。
他にもワイバーンについては、バイクと並走させたとかみたいだけど、いずれにせよ傍から見たらさぞかし目立つことだろう。
いずれにせよ相当ド派手に立ち回ったんだから、そりゃ神話生物ジョッキーとか呼ばれるよね。犯罪能力者相手だったみたいだけど、彼女も捜査官なんだろうか?
上級探査者って割と持ってるよね、あのライセンス。
「え、ええと……すみませんみなさん! 準備が整いましたので、段取りのほうさせていただきたく思うのですが構いませんでしょうか?」
「うん?」
「おや、もうぞろ始まるかえ」
愛知さんの貴重なお話をいろいろ伺えるかな? と思った矢先、式典準備スタッフの方がおずおずと俺達に呼びかけてきた。どうやらリハの準備が整ったらしい。
残念だけどここまでだな。愛知さんにはまたいつか、機会があったら会話したいもんだよ。
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