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思春期の学生探査者にとって「衆目を浴びながら戦うシチュ」は憧れの中の憧れなのである

 ついに到着したS級探査者認定式会場、探査者式典館。

 沿岸沿いに広く敷地を取って、大きな庭園と洋風の館がデカデカと鎮座している。東クォーツ高校の全敷地を5倍くらいしてるんじゃないか? ってくらいの広さだ、ヤバい。


 バスはその敷地内、専用駐車場に到着した。

 前の座席のヴァール達から順繰りに降車していく。となると俺達は必然的に最後のほうだね。

 前の人達が降りていくのを待ちながら、俺はアンジェさんに話しかけた。

 

「道中何ごともなくて良かったですね。まあここまで探査者が乗り込んでるバスにわざわざ、仕掛けてくるとも思ってなかったですけど」

「そうねー拍子抜け。走行中のバスの車体そのものに乗っての戦闘とか、あり得るのかしらーってちょっぴりワクワクだったんだけど」

「あっ! し、知ってるよアンジェちゃん、それって探査者が一回は妄想するカッコいいシチュエーションのやつだよね! ネットとかでよくネタになってる!」

「そうそう! 学校に発生したダンジョンをたまたま居合わせたクラスメイトの私が踏破する、とかね! 定番よねー!」

「えぇ……?」

 

 何それ、そんな中二全開な妄想あるんだ。しかも定番って。

 俺も覚えあるよそういうの、探査者になる前のそれこそ中二の頃にさ。


 授業中にテロリストが突然学校を占拠してきて、どうしようなくなったところを一念発起で覚醒した超かっこいい俺ちゃんがアクション俳優ばりに活躍して華麗に解決する系の妄想だ。

 思い返すだけで心にダメージが入りそうだ怖ぁ……勝てるわけ無いだろ普通に考えて単なる陰キャ14歳がテロリストに。何考えてたんだ当時の俺は。

 

 そんな感じのアレな妄想の、いわば探査者バージョンも巷にはあるらしい。定番とか言われるほどなんだからさぞかしいろんな年頃の探査者が似たようなことを考えているんだろう。

 しかもアンジェさんやランレイさんが反応しているあたり、グローバルなミームらしい。

 なんならエリスさんだって反応してきた。目を輝かせてアンジェさんとランレイさんのネットネタ? に食いついている。


「ハッハッハー、私もそれ知ってるよ。アレでしょ、学校とか近所に彷徨い込んできたモンスターを華麗にやっつけるシチュとかー、町中でモンスターを倒すシチュとか。要するにカッコいい探査者な自分を生で見てほしい感じなんだよねー」

「そうなんですよ、とにかく市街戦とか! チヤホヤされそうな状況でクールに敵を倒す妄想! いやーみんな好きですよね、私も好きですけど」

「えへ、えへへ……! き、昨日実際市街戦ってしましたけど、一般の人達の目がたしかに気持ちよかった気はします……!! で、ででででもそれ以上にここここ怖かったですけど! えへ、えへへ」

 

 にこやかに話す女性陣だが、俺的にはそこまで笑っていられない。なぜって? ……ぶっちゃけ探査者になってからちょっぴり妄想していたことだからだよ!!

 たとえば授業中とかね? 校庭にゴブリンとかそういうのが現れるのを、俺ちゃんが、難なく倒して衆目を浴びたりするわけよ。テロリストがモンスターに置き換わっただけでして、つまりは中二心が若干ぶり返しちゃったりしたんだよね。

 

 もちろん、それはスキルを獲得して新規探査者教育を受けている間までのことだ。

 教育を受ける中で探査者の役割や存在意義、使命と責務について理解が及んでからはそーゆーの良くないよねって自重していったし。


 加えて脳内にリーベやアルマが住みつくようになって以降はなおのこと、この手の妄想はあまりしなくなった。

 何かの拍子で思念が伝達しちゃって、プークスクスとか言われたら心底恥ずかしくて死ねるからだ。いや死なないけども、数日は行動不能に陥るんじゃないかと思うね。

 

 

『別に笑いもしないよ、どうでもいいし。大体子供の妄想なんてそんなものだろう、万能感と裏腹の現実を満たすための個人的なお遊びにまでとやかく言わないよ。むしろそんなことで数日も引きこもりやがったらそっちにこそ怒るね、良いから外出て寿司でも食えってさ』

 

 

 優しいんだがスパルタなんだか分からん! まあ自分のことしか考えて無いだけが、こいつの場合。

 脳内のアルマさんの話を聞きがてら、そろそろ前が空いてきたので一同立ち上がり降車する。うーん一時間ぶりのシャバの空気だ。

 

 軽く背筋を伸ばして身体をほぐせば、俺の近くに寄ってきたリーベやシャーリヒッタ、リンちゃんまでもが同じく背伸びする。なんだか微笑ましい光景に見えたんだろう、周囲の探査者さん達がくすくす笑うのが聞こえた。

 

「なんだかホッとするけど、良いのかねえあんな子供達まで動員しちまって……」

「統括理事肝煎りの若手って触れ込みですしねシャイニングくんは。それに御堂香苗さんの信仰対象ってこともありますし、関わらないわけにはいかないんでしょう。さすがに人間相手に立ち回ることなんてないと思いますよ? 捜査官ライセンスもないでしょうし」

「そうであることを願うし、そうなるように大人が踏ん張らにゃならんな。子供がモンスターと戦うのだってどうかと思うんだが、ましてや人間とだなんてのはいかんことだよ」

 

 どうも見るからに未成年な俺達がこの場にいること自体、倫理的にあまり良くないことだと思っている方もいるみたいだ。

 普通に考えて対犯罪組織相手の警護チームだもんね、俺達。なんならモンスター相手にしていることからしてどうかと思ってるみたいなので、なんだかお気を遣わせてしまってありがたいやら申しわけないやらだよ。

 当たり前だけど、良い人ばかりだなあ。

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― 新着の感想 ―
[一言] みんなで行ったショッピングモールに突如出現したダンジョンを、たまたま居合わせたイケメンでクールな相棒と組んでさくっと片付けたりねー それでイベント守られたアイドルユニットの歌がエンディングに…
[一言] その昔、どこかのシャイニングさんが街中に溢れたモンスター相手にプロレス技をキメて女の子から黄色い声を上げられていたような気がしなくもない。
[一言] プールに現れたダンジョンは大体そんな感じだったね
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