シェンとフランソワの恩返し(概ね斬撃特化)
さてなんやかんやとみんな集まり、時間を迎えたのでヴァールが全員に呼びかけた。いよいよS級探査者認定式の会場、湾岸沿いにあるという探査者式典館とやらに向かうのだ。
比較的のんびりしていた空気が一気に引き締まる。さすがはプロの集まり、切り替えが早いのなんのって。もちろん俺もしっかりお仕事モードオンって感じで、気を引き締めて彼女の言葉を心して聞く。
「全員時間通り、素晴らしいな。それでは予定通りこれより現地へと向かう。到着次第、一旦式典館内のミーティングルームに向かい指揮官の島根室長と打ち合わせるのでそのつもりで。では行こう、バスを用意してあるので乗車する」
さすがにこの人数で、ここからはそこそこ距離があるらしい会場にまで徒歩で行くことはないみたいだ。ホテルの入口前、大型バスが来ているのでそれに乗っていくらしい。
スーパーゴージャスホテルを出ると、そのバスの前にも見知った顔が三人、いや四人か。他の人には見えてないけど実質もう一人いる、半透明の幽霊みたいなのが。
能力者犯罪捜査官のアンジェリーナ・フランソワさんにシェン・ランレイさん。そして神奈川千尋さんと精霊知能ステラだ……サークルとこの一年、戦い続けてきた人達もまた、俺達と合流して動くんだな。
アンジェさんが軽く手を挙げ、声をかけてきた。
「みなさーん今日はよろしく! バスには並んで乗ってくださーい!」
「い、一応、統括理事と特別理事、それとS級探査者の方は前の席でお願いしますぅ……!」
「ないとは思いますが移動中の敵の襲撃もありえますので、能力者犯罪捜査官の方は後方座席に座ってください。もちろん他の探査者の方も油断はなしでお願いします」
ランレイさん、神奈川さんも併せて呼びかけてくる。前席、後席は一応軽い指定があるけどそれ以外は自由って感じか。
まあ俺はレベル的にはともかく年季的には、ここにいるのがおかしい程度には新人さんだ。ここは年功序列で、みなさんが先に乗って余った席に座らせていただこうかな。
次々に人が乗っていく。仲間のみなさんも乗り込む中、日本人らしい年功序列精神を出してちょっと離れたところで俺とリーベ、シャーリヒッタと三人で待ってみる。
すると何やらアンジェさんがツカツカとやってきた。なんだあ? と思ってるとにこやかに笑い、こんなことを言ってきたのだ。
「ハーイ公平、それにリーベとえーっともう一人の?」
「シャーリヒッタだぜ! リーベの妹でヴァールの姉だ、よろしくなアンジェリーナ・フランソワ!」
「シャーリヒッタね、よろしく! ……え、ヴァールさんお姉さんいたんだ。てかリーベもなんだ」
「…………」
怖ぁ……初手からシャーリヒッタが脳内設定を披露している。初見かつシステム領域に詳しくもないアンジェさんだとそりゃ信じるよね。
見ればランレイさんも神奈川さんも驚いている。ステラなんかは苦笑いしてるけど、まああの子も精霊知能だ、シャーリヒッタの認識がすごいことになってるのは知ってるよな。
思わぬ出会い頭のインパクトにビックリしていたアンジェさんだけど、すぐに我を取り戻して本題に入った。
俺の手を取り、もうほとんどの人が乗り込んだバスへと誘ったのだ。
「ほら、行くわよ公平! 昨日はあんなことがあったせいでろくに話もできなかったんだし、ここからは一緒に行動するわよ!」
「え? あ、はい」
「ちなみにこれ、統括理事の許可も取ってるから。あんたもなんか知らないけど今回の件、独自行動するんでしょ? 私らも引き続いて自己判断で動けるから、はみ出し者同士協力し合うのよ! あっははは! 素敵なパーティ結成ね、ランレイ!!」
「よ、よよよろしくおねがいしましゅううう」
めちゃくちゃにこやかに先んじて今後について話してくれる。そっかここからは俺達システム領域チームは、能力者犯罪捜査官チームと合流して独自行動って形になるんだな。
なるほどとうなずく。はみ出し者かどうかはともかく、俺達とアンジェさん達はお互い明らかに、今回投入される戦力の中では特異な立ち位置だ。
片や元から敵勢力と独自に交戦してきたチーム、片やそもそも最初から見ている地点、目的とする事柄が著しく違う"あちら側"のモノ達。
普通に組織立って動いたりWSO統括理事直轄の下で動かすには、少しばかり異質が過ぎちゃうものな。だったらあえてこの二つを組ませて独立した動きをさせるのも分かるよ。
ランレイさんや神奈川さんも引き連れて、そうしてアンジェさんは俺の手を引きバスへと乗り込む。
言った通り後部座席が空けられていて、同じく能力者犯罪捜査官であるエリスさんと葵さんが座っているだけで他、俺達全員が座るだけの席はあった。
まずは一番後部座席に神奈川さんが座り、その後ろに背後霊めいてステラが抱きつく。その隣にアンジェさん、俺、ランレイさんの順で座るね。うわあ美女に挟まれた!?
そしてそこから一つ前の席、左右二つずつにリーベとシャーリヒッタ、エリスさんと葵さんが座る形だ。
「よしよし! やーっと積もる話もちょっとはできるわね公平! それにあんたにはいろいろ借りがあるもの、手伝えることならなんでもするわよ!」
「わ、わわわ私も! り、リンちゃんがお世話になったし私自身、殻を破る機会ももらえたし! お、お、恩返ししましゅ! 公平さんの敵、全部この脚でぶった斬りましゅ!!」
「えぇ……? あ、いえありがとうございます。俺もみなさんのお力になれるよう、微力を尽くします」
たぶんお二人は、前に一緒にダンジョン探査した際のことを恩に思ってくださってるんだろうけど……特に何もしてないと言うか、お二人自身がそれぞれの力で殻を破ったわけなので、むしろ俺ちゃんなんもしてないんですけど。
まあお力添えいただけるのはありがたいし、こっちももちろんアンジェさん達を手伝いたいと思う。助け合いだね、これ大事。
ただまあ、ランレイさんが全部ぶった斬ると言うと本当にできかねないから、ちょっと怖いので落ち着いてもらいたい。
斬撃特化の星界拳を扱うこの人ってば、鋼鉄だろうがなんだろうが問答無用で脚一つで切り裂けちゃうからねえ。
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