認定式の朝。いきなり悪目立ちする朝
本日より第三部ですー
よろしくお願いしますー
ホテルのロビーに辿り着くと、すでにそれなりの人数が集まっていた。俺のよく知る仲間達もいるし、あんまり知らない人達もいる。
朝7時40分。8時集合には早めだけれど、この分だと早すぎってこともなかったな。見知った顔に近づいて、挨拶を交わす。
「おはよーございまーす。良い朝ですね、マリーさん」
「おはよ、公平ちゃん。よく眠れたかい?」
「ええ、おかげさまで。正直、こんな豪華なホテルでちゃんと眠れるか不安だったんですけど……快眠でしたよ」
「ファファファ、私もだよ! 私ゃ旅館のが好みなんだが、たまにゃこういうところも良いよねえ」
元S級探査者にしてWSO特別理事、マリアベール・フランソワさんだ。相変わらず杖をついて、腰を曲げているけど元気そうな様子で笑いかけてくれる。
引退して一ヶ月ほどになるこの人は今回、前線に出ることはないけど指揮役の一人として俺達を見てくださるとのことだ。歴戦中の歴戦、探査者の中の探査者たるこの人がいるなら百人力だね。
俺とマリーさんが話しているのを見て、見知った顔が続々集まってくる。なんか別な探査者さん達と話をしてたのを打ち切ってやってくる人もいるほどだ。
その人達もまた、気さくに手を挙げ笑顔で話しかけてきてくれた。
「やあ、おはよう公平殿。マリアベール先生もですが、今日はよろしく頼みます」
「おはようございますミスター・公平。このホテルすごいですねえ、家族と過ごしたいほどに豪華ですよ」
「サウダーデさん、ベナウィさん。おはようございます、今日はよろしくお願いします」
マリーさんの弟子でありS級探査者、サウダーデ・風間さん。そして彼の弟子であり同じくS級のベナウィ・コーデリアさん。
揃って探査者界の超大物で、今さっきも後輩にあたるんだろう探査者さん達から話を聞かれていたみたいだね。
続けてやって来る、うら若い美少女と美女の二人組。独特の笑い方と軽妙な声で、気さくな様子で話しかけてくれる。
──エリス・モリガナさんと早瀬葵さん。泣く子も悪けりゃ取っ捕まえる、能力者犯罪捜査官のお二方だね。
「ハッハッハー、やっほー公平さん! いよいよだねー大捕物!」
「はっはっはー! 師匠も私もソフィアさんの指揮下ですから、やっぱりまたまたご一緒ですねー! よろしくお願いしまーす!」
「はい、よろしくお願いします! お二人とまたご一緒できて、光栄ですよ」
テンション高く楽しいノリだけど、秘めたる使命感や責任感、そして実力はお二人とも筋金入りだ。
師匠のエリスさんに至っては単純な実力で言えば世界屈指だろう。そんな頼もしい人達と、倶楽部案件に引き続いてともに戦えるんだ。
身が引き締まるね。
加えてもう一人、チャイナ服の女の子が俺の前にぴょこんとやってきて拱手して挨拶してくる。歳の頃14、この子も俺の大切な仲間だ。
シェン・フェイリンさん。星界拳正統継承者にしてA級探査者……なんだけどその実力はもはやS級にまで到達しているように思える。シェン一族が到達した天才の中の天才だ。
「ザオシャンハオ! 公平さん、今日はよろしくお願いします!」
「おはようございますリンちゃん。うん、よろしく。今日は一緒に頑張ろうね」
「はい! どんな敵でも我が真道、我が星界拳がすべて踏み越えます!!」
気合十分な様子のリンちゃん。先日到達した新境地、その名も流派・真道星界拳を引っ提げてあらゆる敵を蹴り倒すつもり満々だ。
味方としてはこんなに頼もしい存在もいない分、敵となるとこんなに恐ろしい存在もそうそういないだろう。サークルにしろ過激派にしろ、若き才能あふれる少女の強さにどうか震えてみてほしい。
────と、エレベータからまた知り合いがやってきた。今度はより身内的で、かつ諸々の事情にも明るい心強い仲間達だ。
精霊知能リーベとヴァール、そしてシャーリヒッタ。システム領域側からの使者であるこの三人も、定刻よりやや早めに参上していた。
普通に歩いているだけで当たり前のように人目を引く壮絶な美少女が三人。当然のように周囲の探査者達を老若男女問わず魅了しながらも俺のところへ歩いてくる。
まあ当然俺はそれを回避しようとするよね、陰キャ的に。揃って2m近い身長のサウダーデさんとベナウィさんの背に隠れてやり過ごそうとした途端、察知しやがったのかかわいいかわいいリーベちゃんが大声を上げて俺の名を呼んできた!
「公平さーん! おっはよーございまーす!! かわいいかわいいあなたのアイドルリーベちゃん、ただいまやってきましたー!」
「おはようございますと、と、とっても素敵でカッコいい公平サン! シャーリヒッタ・山形、今日も元気満タンだぜ!!」
「怖ぁ……お、おはようございますお二人とも。とっても元気で何よりです、へへへ……」
絶対に逃さんぞ、絶対にだ! と言わんばかりに俺の名を呼ぶ、シャーリヒッタまでもがこちらに駆けてくる。
繰り返しになるけどリーベもシャーリヒッタもそれぞれタイプは違えど、とんでもない美少女なわけですからそりゃもう目立つ。目立ちすぎてそんな彼女達が駆けてくる俺ももちろん目立つ。
結果としてたくさんの人達の、"まじかよ、この子? "みたいな視線を浴びせられることとなってしまって地味にお辛い山形くんだ。
なんていうか、容姿に説得力がないのだろう。関口くんレベルのルックスなら美女美少女の百人二百人、侍らせててもあー何となく分かるわで済むかもだけど、俺じゃあねえ……
称号効果で魅力度も相応に高くなっているとはいえ、それって別にニコポナデポミタダケポみたいな因果改変かな? ってなるタイプのチート魅力が備わるわけでなく、精々が印象が良くなる程度のものだし。
ただそのおかげで今、俺に集まる視線はそれゆえに悪意があるものじゃないからそこは助かるからこれはこれでありがたいんだけどもね。
というわけで引っ付いてくるヤバいレベルの美少女に応対している、たぶん第三者から見るとかなりいけ好かないだろう山形くん。
そこにさらなる美少女が近づいてきた……もう一人の精霊知能、そしてWSO統括理事ソフィア・チェーホワの裏人格とも言える存在、ヴァールだ。
無表情ながら少し目元を緩め、軽く笑った感じで話しかけてくる。
「山形公平、よく眠れたか? 今日は力を借りることになる、よろしく頼む」
「あ、ああ。よろしくヴァ、いやソフィアさん」
「うむ……まあ、知らない者も多いからな。お気遣い感謝します、山形様。うふふ」
WSO統括理事が二重人格ってのは、実のところもはや公然の秘密めいているそうなのだけど……本人が公言してない以上はヴァールの存在は隠してあくまでもソフィア・チェーホワとして扱うべきだろう。
そう思って彼女を呼べばさすがの裏人格。すぐさまソフィアさんらしい微笑みを浮かべ、完全なエミュレートを行い感謝してきた。別に今ここでやる必要も特にないので、単なる茶目っ気だろう。
地味に芸達者だな〜、この子。
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