瀬川聡太の明日はどっちだ！？
明日の警備関係について、各組織の配置と別口にヴァール直属の形で俺達、個人協力の探査者達が遊撃的に動くという話を受けて後。スクリーンはさらに切り替わった。
サークル、およびダンジョン聖教過激派の主要メンバーらしい者達の写真がいくらか映されたのだ。
『今回の件における首謀者、サークル幹部とダンジョン聖教過激派の主要人物の写真になります。後ほど顔写真を配布しますが、まずはこちらをご確認ください』
要するにやらかしてる連中の顔だから覚えてね、と。そういうことなんだろうけど俺はまじまじとスクリーンを見つめた。
そこに映る写真が、なんだろうすごく特徴的だったからだ。
バーベキューの写真で、男女が横並びに8人ほど交互に肩を組んで楽しそうに笑い、はしゃいでいる。なんとも陽キャ感のある写真だ。
率直に言ってアレだね、リア充陽キャ大学生サークルってノリだ。うちのクラスの関口くん達リア充グループを大学生にまで引き上げるとこんな感じになるのでは？ って感じの、陰キャには直視しづらいオーラが放たれているようにも思える。
これは一体？ 俺は思わずつぶやいた。
「こ、これが……サークルの、写真？」
「なんか、いかにも浮かれた感出てますねー。他になかったんですかね、写真ー」
「いかにも大学生サークルのノリですねえ。まさかサークルという名称、そこから来てたりするのですかね」
あんまり楽しそうな写真に若干のどよめきが起きる。リーベも戸惑い、ベナウィさんなんかちょっと呆れた様子でさえいるよ。
まさかサークルの由来なりなんなりがそのまんま、大学のキラキラしてそうなサークルから来てるとは思わないけど……写真からはとても既存社会の崩壊なんて大それた真似を考える連中には見えないよ。
島根さんがマイク越しに、至って冷静な声で呼びかけてきた。
『……仰りたいことは承知していますがみなさん。現状、これが一番分かりやすくサークルの首脳幹部を捉えた写真です。この真ん中の男と左端から二人目の男。右端の女の三人がそれぞれ幹事長、副幹事長、会計長という主要役職に就いています。他五人もサークル構成員ですね、役職を持たない、いわゆるヒラのようですが』
「えぇ……？」
「ずいぶんアットホームな犯罪組織だぜ……」
本当にサークルの主要メンバーが映ってる写真だった。ていうか全員がメンバーって、これはサークル内でのレクリエーションか何かした時の写真なのかな？
シャーリヒッタがつぶやく通りなんともはや、アットホームなノリの組織だ。学生のノリっていうのかな？ いよいよ大学生めいてきたぞ。
これを相手に戦うのかぁーと複雑な気持ち。見るからにみんな二十歳そこそこなんだし、なんだって犯罪組織なんてやるかね？
青春にしたってやろうとしていることが禍々しい。残念に思っている中、スクリーンがさらに幹事長やら副幹事長、会計の三人にクローズアップした。
『幹事長、藤近匠。副幹事長、海方陸。そして会計の斎藤澪。いずれも現在は31歳。どのような伝を使ってか委員会に接触してサークルを設立。ダンジョンコアの密売買に手を染めはじめました』
「本当にどうやったんだろうねえ……委員会なんざ、普通に生きててまず接するどころか知る機会だってないはずなんだが」
どうやって委員会に接触したのか。そしてどのような経緯でサークルを発足するに至ったのか。明言されないあたり、残念ながらすでに捕らえた幹部からの取り調べでもそこは分からなかったんだろう。
マリーさんが首を傾げるのも当然の話だ、普通に生きていて委員会だのなんだの、犯罪組織に関わることなんてまずないからね。
あっても末端程度で、いきなり闇の底にどっぷり浸かった挙げ句手駒になりに行くだなんてとてもじゃないけど考えにくい。
何かあったんだろう……藤近や海方、斎藤なるこの三人を委員会に引き合わせた何者かが。島根さんの説明が続く。
『他にも幹部格は十人ほどいますが、ここ一年でそのほとんどが捕縛されています。残っているのは写真では映っていませんが、瀬川聡太という男がいます。報告ではこの男がサークルが保有する最大戦力とのことですね』
「瀬川聡太……さっき神奈川さんとステラから話を聞いたよ。アンジェさんやランレイさんでも突破できない、強固なバリアを持っているらしい。悪魔の権能を、かなり強い深度で授かってるみたいだな」
「バリア……ですか？ あの二人で突破できないってヤバいですね……」
先ほど聞かされた話がさっそく活きてきた。リーベや仲間達に小声で、瀬川についての話をちらと聞かせる。
サークル最強らしいけど、それも分かる程度には意味不明な強度のバリアを備えているらしい悪魔憑きの男。A級トップランカーをもってしても突破できないなんて無茶苦茶だよ、そんな権能をほいと渡せる悪魔も一体、どれだけの存在なのやら。
話を聞いてマリーさん達も驚いていた。
特にサウダーデさんが、巨体を腕組みしてさらなる威圧を放ちつつ独り言ちる。
「悪魔の権能とはそこまでの力も与えられるのか……バリアか、面白い。我が焔をもって突破できるか、試してみたいものだ」
「私の《極限極光魔法》でも無理ですかねえ。機会があればやってみたいですよ、ははは」
「現役だったら試し斬りしてたかもね、ファファファ。まあ引退した今、ワルだからって若いのを膾にするつもりもないしバリア云々はあんたらに任すよ〜」
「怖ぁ……」
哀れなり瀬川聡太！ A級トップランカーにサンドバッグ扱いされたと思ったらお次はS級探査者に目をつけられている！
……下手に強固なバリアなんか持つからこうなる。せめて悪事に手を染めなければ良かったものを、いやでも悪事に手を染めたからこそバリアを授かったわけだから、どうあれ権能を手にした時点でこうなるのは既定路線だったわけか。
サークル幹部な時点で情状酌量の余地もないけど、それはそれとして瀬川に待ち受ける運命につい南無と唱えてしまう。
強く生きてほしい……そして大人しく捕まり、どうか罪を償い更正してほしいよ、ホントに。
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