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神奈川は生きる!生きてステラと添い遂げる!!

『コマンドプロンプト様、遅ればせながらまずは謝罪をいたします……独自の判断から勝手に非オペレータにスキル《聖剣》を付与したこと、まことに申しわけありませんでした』

「ステラ……」

 

 いきなりの謝罪。深々と頭を下げる精霊知能ステラに、俺は完全に面食らっていた。

 ここに至るまでの、デレデレなのは分かるけどなんかヤンでない? 的な言動とは打って変わっての真剣な表情、かつ不安に強張った様子を見せてきたからだ。

 

 その隣では神奈川さんもなんか、並んで頭下げてきてるし。ステラはまだ発言から理由は分かるけどこっちはどうしたことなんだ、アレか、愛しい彼女が謝るなら自分も謝るできた彼氏さんムーヴですか。イケメンかよ〜。

 逆に敵意とか抱かれなくて助かるんだけど困惑していると、彼のほうも口を開き、謝る理由を述べてくる。

 

「俺のほうからも謝罪します。ステラからさわり程度にいろいろ伺いましたが、あの聖剣は本当は俺みたいな一般人が手にしちゃいけないモノだったってのは理解しています……それを受け取る形になってしまって、申しわけなく思っています」

「神奈川さんまで……そんなことありません、どうか頭を上げてください。敬語もいりませんよ、年上の方がそんな」

「シャイニング山形さんが見かけどおりの年齢でないことも聞いています。500歳で、しかもステラにとって父とも言える人だ。許されるなら俺も、あなたを義父と呼びたいところですが」

「止めてくださいホントまじで! 冗談抜きに!!」


 怖ぁ……年上のイケメンお兄さんから義父呼ばわりされるとか勘弁してくれ。シャーリヒッタ的世界観が現実を侵食するようなことはそれこそあってはならないよ。

 聖剣がどーのこーのの話よりよっぽど大変なことになりかけた。見かけ以上に真面目で誠実な語り口の神奈川さんを慌てて止めて、その頭を上げてもらう。

 そしてステラにも頭を上げさせてから、俺はふうむと考えた。

 

 二人が謝っているのは簡単な話、聖剣の無断譲渡と無断使用についてだ。

 本来システム領域はワールドプロセッサに所有権があるそれを、管理役を担当していたステラが勝手に神奈川さんに渡し、そして神奈川さんも勝手に行使していた。

 ワールドプロセッサもそのへんは事後承諾の形で受け入れているっぽいけど、どうあれ始まりは完全に無断での話だったのは間違いないのだ。

 

 別段罰則が規定されていないとは言え、それがこの二人には心苦しかったのだろう。だからワールドプロセッサの対たる俺にも謝ってきた、と。

 いわゆる禊ってやつか。なんとも律儀な話に好感を覚えつつ、俺は微笑み彼らに語りかけた。

 

「こちらもヴァールから一応の経緯は聞いています。神奈川さんが偶然、ええとその、借金取りの犯罪能力者達に追い詰められたところをステラに出くわして聖剣を受け取ったとか」

「はい。言いわけがましいのを承知で言わせてもらえれば、ステラがスキル《聖剣》を与えてくれなければ俺はあそこで殺されていました。連中はもう、俺からの取り立てを俺自身の肉体で賄うつもりでいたみたいですので」

『千尋を助けようと思ったのは私です。彼はたまたまそこにいただけ……彼は何も悪くないんです、借金だってその、彼の家族が一方的に押し付けたもので』

「そ……そう、なんだ」

 

 淡々と語る二人から、現代社会の闇をそこはかとなく感じる。神奈川さんが死んでいても問題ないのに、取り立ては神奈川さんの肉体から行うって……相当嫌な想像しかできない。

 本当にギリギリのところだったんだ。そんな場面に出くわしたステラが、咄嗟に自己判断で聖剣を渡したのも俺には理解できる話だよ。

 

 あえて問題を挙げるとすれば、その時点で神奈川さんのパーソナルなんてステラに分かるわけもないため、もしかしたら危険な悪人に超常の力を与えていたかも知れないってところだけれど。

 そこについてはまあ、今こうして一年もの間サークルと戦い、そしてなし崩しの展開だったにもかかわらず俺に謝罪してきた姿を見れば杞憂だったことは疑うべくもない。

 結果論でしかないけどね。そもそもすべてが事後承諾の形なんだから、こっちとしては経緯だけでなく結果も含めて判断するさ。

 

「聖剣を受け取った後、ステラの上役だというワールドプロセッサ様から指示をいただいたヴァールさんの、直属の部下となる形で対サークルに参戦しました。成り行きからでも力を得た以上は役に立ってもらうというのと、あとは」

『……私が、受肉して千尋と添い遂げたかったから。ワールドプロセッサ様にサークルの件を解決した暁には、受肉を赦していただくという契約を交わしたこともあり、この一年間彼らと交戦してきたのが実際です』

「そっ、添い遂げっ……!? ほ、本気なんだなあ、ステラ……」

『はい。自分でも怖くなるくらい、泣きたくなるくらいに』

 

 まさかの契約関係。ステラは己の受肉を条件にサークルと戦うことを選び、神奈川さんもそれに応じたって流れか。

 聖剣を手にしたことの責務、責任。本来そこまで背負う必要があったかと言うと微妙だと思うんだけど、それでも彼と彼女はあえて背負い、戦いの道へ身を投じたんだ。


 その先にあるステラの受肉……そして愛し合う二人の、素晴らしい未来を実現するために。

 ひどく幸せそうな、嬉しそうな笑顔を浮かべるステラが眩しい。そしてそんな彼女を愛しく見つめる、神奈川さんもまた尊みを感じる。

 

 事態は承知できた、謝罪もいただいた。だったら俺からは何も無い。

 むしろこの二人が目指す地点に辿り着けるよう、俺からもエールを送らせてもらおうか。

 

「聖剣の件については俺は気にしていません。その力を正しく使い、そして一つでも多くの生命と尊厳を護ってくださることをただ、期待します」

「はい。浅学非才の身ですが、全身全霊を尽くします」

「そして……同時にあなた方の幸福な未来をも俺は願って止みません。ワールドプロセッサは約束は必ず守ります。サークルを撃破した暁には必ず、お二人がともに生きていける未来が待っているでしょう。システム・コマンドプロンプトとして、そのことを保証します」

『……ありがとうございます、コマンドプロンプト。寛大なお言葉、ご処置に心より感謝申し上げます』

 

 二人して再度、頭を下げる神奈川さんとステラ。

 人間と精霊知能。おそらくは世界初となる特殊なカップルさん達はそして、俺に笑顔を見せてくれた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ワールドプロセッサ(ママ)からすでに受肉を許可してもらってたのか。よかったよかった
[一言] サブタイトルの元ネタは、「勇者王」というか「盟主王」と「スーパーコーディネイターの母親(仮)」が「宇宙世紀世界で添い遂げた作品」ですね?
[一言] 罰を与える  幸せになれ! かと思ったw
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