歳上の義理の息子(白目)
かくかくしかじかよろれいひー、なーんてそんなこんなで仲間内にのみ精霊知能ステラの存在を伝える。
すでに気付いていたS級のみなさんも、気付いていなかったみなさんも揃って先頭を歩く神奈川さんに視線を向け、しきりに目を凝らしているのがちょっとシュールで楽しい光景かもしれない。
「……なーんも見えんけど、たしかになんかはいるねえ。アレだ、探査者ツアーの頃のリーベちゃんよりかは違和感あるって感じさね、ファファファ」
「姿や声は消えども放つ気配は隠しきれぬもの。しかしここまでの隠形は俺も初めてだな。ベナウィ、お前にはどう映る?」
「同じくかすかな気配のみですねえ。ミスター・神奈川が時折見せる反応から、大体の身長から位置くらいまでは特定できますが」
マリーさん、サウダーデさん、ベナウィさんの三師弟は確実に気配を読み取れていて、なんならある程度ステラの外見的情報まで推測してきている。
神奈川さんに引っ付いて離れませんオーラを出しまくっている彼女も彼女なんだけど、それに対して見るからに幸せそうな雰囲気を出して受け入れている神奈川さんも神奈川さんだ、そりゃ見抜かれるよ。
「むむむ……!! 分からない、見えない……悔しい!」
「はっはっはー! え、本当になんかいますあそこ? みなさんもしかして見えちゃいけないやつ見ようとしてません? 師匠とかいよいよ歳なんじゃないですかそれ?」
「ハッハッハー、泣かすぞ」
「怖ぁ……」
一方でリンちゃんと葵さんの"見えてない組"が必死に目を凝らしたり耳を澄ませたり気配を掴もうとするも、まるで感知できずに悔しがっている。
いやそれが普通なのですがと言っても負けず嫌いのリンちゃん的には悔しいだろうし、葵さん的にも師匠に見えて自分が見えないのが悔しいのか軽口を叩いてはエリスさんに笑顔で青筋立てられてるし。
うーむ、半ばゲームかアトラクションみたいになっている?
"ステラちゃん見えるかな? ゲーム"みたいな。S級探査者並の感知力や洞察力、経験がなければクリアできないクソゲー臭溢れる難易度ですねこれは。
「……ステラ。なんかすごく、後ろの有名人達から見られている感じがするんだが、俺」
『私の千尋だもん、当然だよ』
「いやそういうことじゃなくな? 俺っていうかたぶん、お前に気付いてて見てると思うんだけど」
『そうなの?』
前を行く神奈川さんも、さすがにこの1年サークルと戦ってきただけのことはあり向けられる視線には敏感なようだ。
しきりに後ろを気にして、名だたる探査者に目を凝らされている事実にどこか、緊張して小声でステラに話しかけている。
なんていうか、すごく普通の人な反応だなあ神奈川さん。ちょっと、いやかなり背が高くてイケメンなだけでどこにでもいるお兄さんって感じだ。
ぶっちゃけ一方的にだが親近感があるよ、同じく元はパンピーの民として。今後腹を割って話す機会もあるだろうし、その時は仲良くしてもらえると俺としても嬉しいんだけどなあ。
『でもまあコマンドプロンプト様やヴァールさんの仲間だもの、見抜いたりはするよね。実際に見聞きできてるのは、私の力が及ばない先輩精霊知能と万物の創造主たるコマンドプロンプト様だけだろうけど』
「そ、そうか……万物の創造主、か。シャイニング山形さん、マジで神様なんだな」
『実際にはその神様、つまりは概念存在そのものまで作った張本人だけどね。この世界にあるあらゆるモノすべて、元を糺せばあの方とワールドプロセッサ様によって作られてるよ。つまり私の千尋が今こうしてここにいるのも御方のお陰だもの、感謝しなくちゃね』
「え。あ、ああ、そういうことになるのか? 俺のステラの父親みたいなもんだろうし、もちろん感謝はするけど……」
えぇ……? パンピーとして仲良くできる未来が秒で潰えた気がするんですけど、今……
のめり込んでるパートナー相手ということで、ステラがこの世の真実を洗い浚い話してるけどそれはまあ良い。彼女とスキル《聖剣》を得ている以上、神奈川さんも立ち位置的にはシステム側だしな。
ヴァールが止めもせず地味に素知らぬ顔で首都圏の風景を眺めつつ歩いているあたり、彼女としても織り込み済みなのだろう。
だからそこは良い。良いんだがことさら俺を強調して神奈川さんにアピールするのは止めてほしかった。お陰で彼からの俺への視線、よく光る芸人探査者から得体の知れない超超超エラくてヤバくて怖い創造主になってきてるじゃん!
あと父親っていうの止めようか、シャーリヒッタが地味ににんまりしている。怖ぁ……
「そっか、そうだぜリーベ。ステラもまた父様の娘な以上、あそこの神奈川ってやつは自動的に父様の義理の息子になるんだぜ。入り婿だぜェ……」
「というかナチュラルにステラの親みたいなものって認識が出ましたね、彼ー。ヴァール、ステラかあなたが何か吹き込んだりしました? なかなか出ないと思うんですけど、そんな発想ー」
「ん……? いや、特には何も。詳しくは本人から聞くべきだが神奈川の場合、家族というものの認識が一般的なそれと著しく離れている可能性があるのでそこからではないか?」
勝手に入り婿になってしまった神奈川さんが、哀れにもシャーリヒッタの脳内家族構成図の一員に組み込まれてしまった予感をひしひしと感じる。
入り婿って……なんていうか絶妙に肩身が狭そうな今の神奈川さんにうまいこと当てはまってしまいそうで嫌だな!
ていうかヴァール曰くだけど神奈川さん、ちょっと事情持ちみたいだ。前にも聞いたけど親の借金で反社の方々に追われてたんだっけ? それでステラと出会ったって話だけど。
そのへんの事情もこの後、時間をいただけたなら聞いてみないとなあ。一応ながら聖剣とステラの力を、悪しきことに使う人物でないかどうかをたしかめる必要はあるしね。
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