ちょっぴりヤンデル?精霊知能、ステラ参上!
やって来た男の人と半透明の女性を見てまず思ったのが、"おお、バカップル"だった。
視認できているのは俺と精霊知能三姉妹だけだろうけど、女のほう……受肉しないままに存在している精霊知能が、男の人の腕に絡みついてしなだれかかったまま、嬉しそうにしているのだ。
宇宙に瞬く星の煌めきのような、銀色に輝く髪が背中までも伸びている。年齢設定は比較的大人っぽくて、20歳そこそこ……つまりはアンジェさんやランレイさんと同い年くらいに見えるね。背は俺よりちょっと高いくらいか。ふーん。
ヴァール、リーベ、シャーリヒッタなど他の精霊知能の例に漏れず、大層な美女さんだ。そんな美女がうっとりしながら男に寄り添っているんだから、仮に受肉してたらものすごい目立ってるんじゃないかなと思うよ。
で、男の人のほうもそれが当然みたいな感じで歩いてきている。身長はアンジェさんと変わらないくらいで俺より頭一つ分くらい高い。ふーん。
その上で足がスラリと長いモデルさん体型で、赤いTシャツにロングシャツを羽織ってジーンズにブーツを履いた立ち居振る舞いはまさしく都会のイケメンのそれだ。
顔もなんだろう、当世風の男前っていうのかな。線が細い感じで髪型がちょっとモジャっとしてる? でも清潔感漂う身なりで、本当に首都圏の文化発信源の都市とかをうろついてそうなイケメンさんだ。
とはいえそうだな、関口くんほど度が過ぎてるイケメンぶりでもないかも。あっちはマジで、道歩いてたらスカウトされるレベルだもんな。そうでなくとも頻繁にナンパされてるみたいだし。
なんか考えたら腹立ってきた。今度彼に会ったら嫉妬の視線を向けそう。
ともあれそんな、美男美女カップルと言っていいような。テレビに映ったらネットミームになりそうなくらいいちゃついてます感を出しているようなお二人さんが、ヴァールの前にまでやって来た。
ここまで来ると女のほうも男の人から離れ、一人で立ってこちらを見ている。
特に俺のほうを見て息を呑んでいるね。まあ気づくかそりゃ、そーです私がコマンドプロンプトですって。
軽く会釈すると、女は深々と頭を下げてきた。それを横目で見て驚いた素振りのイケメンさん、怖ぁ……変な勘違いして嫉妬とか止めてね。信じられないかもしれないですけど僕は彼女の上司の上司の上司的雰囲気の山形なんです。それだけなんです。
「ステラ……? まあ良い。チェーホワ統括理事ならびに関西からお越しのみなさん、おまたせして申しわけありません。フランソワとシェンの代わりにみなさんをホテルまでご案内しに来ました、能力者犯罪捜査官の神奈川千尋です」
「ああ、よく来てくれた神奈川。二人とは別行動だったのだな」
「はい。先にホテルで対策会議の準備をしてたら呼び出しを受けて来ました…………ええと、ヴァールさん? ですよね」
「うむ。面と向かって会うのは初めてだな。対外的にはソフィアということで通してくれ」
男の人……神奈川千尋さんが挨拶してきて、それからやや困惑した様子で小声でヴァールに質問を投げかけている。
面識はあるけど、直接会うのはこれが初めて。今までは電話とかでやり取りしてたんだろうな。で、実際会うとソフィア・チェーホワ統括理事その人ということでビックリしてる、と。
声や姿がまるっぽソフィアさんと同一な以上、いざヴァールを初めて見ると面食らうのは理解できる話だ。
ちなみに彼女がいわゆる二重人格みたいな状態にあることは、WSOの上層部や各国全探組の一部首脳、そして親しい間柄の探査者くらいしか知らないことらしい。
まあネットだと疑惑くらいは出てるんだけどね。いわゆる公然の秘密って感じの扱いらしかった。
『ほとんどの人には見えても聞こえてもないけど、ステラです。お初にお目にかかりますコマンドプロンプト様。そしてヴァールさん、リーベさん、シャーリヒッタさんは久しぶり。元気してました? あ、返事はしなくていいです。不審者扱いされちゃいますから』
「…………」
『そしてこちらが私のパートナー、神奈川千尋です。私の千尋ですから、そこんところはヨロシクです。本当は私以外の誰とも会わせたくないほどなんですよね、だって千尋はモテますから。千尋は見た目も性格も最高ですから、もちろん道行く女の人どもの気持ちも分かるんですけどね』
「怖ぁ……」
反応しなくて良いって言われたけど思わず反応してしまったよ怖ぁ……若干ヤンでないこの子?
軽いノリながら星を散りばめたような煌めく瞳に虹彩が見えてない気がして、まさか伝説のヤンデルハイッテルですかねと震える心地の俺ちゃんだ。
前情報の通りってか、それを上回る神奈川さんへの執着ぶりだ。何があったよこの子に一体。
いやまあ、こうなる前のステラのパーソナルを知らないから元からこんなだった可能性はあるんだけども。精霊知能三姉妹をちらと見る。
「…………ヴァールぅ」
「……あー、ヴァール。後でちょっと話そうぜいろいろ、公平サンやそこの、神奈川ってアンちゃんも含めてよ」
「う、む……まあ、積もる話やせねばならない話もあるから、な。うむ」
三人とも俺と同じく、明らかに困惑した様子だ。
しかし反応すると、見えないものが見えてる系不思議ちゃん扱いされるから直接の言及は控え、ヴァールに提言している。
これ、少なくともリーベやシャーリヒッタからしても予想外だったってことだよね。
ヴァールは予め知ってたからアレだけど、つまりは今のこのステラの様子は少なくともシステム領域にいた頃にはなかったものだ、と。
そんなん、もはやきっかけは神奈川さんしかいませんやん。
思わず関西弁で内心つぶやく。怖ぁ……バカップル通り越してすごいことになってるよ、この人達!
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