嫌がらせ特化型エネミーを駆使してくるタイプの敵組織
首都圏に着いて早々、ダイナミック合流を見てしまった俺達関西チーム。
なんていうか市街戦自体初めて見たからだろうか、俺的にはヒーロー映画さながらだこれ! と、ことが無事に終わったからこその呑気な感想をも抱いてしまう。
まあそのヒーロー二人は何やら恐縮しきってしまっていて、慌てふためきながらもソフィアさんやマリーさんに経緯説明をしているんですけどもね。
「ここに来る途中、こいつらがいきなり仕掛けてきたんです。お察しの通りサークルの構成員で、拠点を潰しまわってる私達にちょくちょく奇襲してくるんですよね……言いわけですねごめんなさい!」
ブロンドの髪を腰までストレートに伸ばした、勝ち気な眼差しが凛とした長身の美女、アンジェリーナ・フランソワさん。
黒いシャツにロングスカート、ブーツ……そしてロングコートに被っているラビットハットまで黒と、美しい髪と白い肌と対になるような黒一色の格好が印象的だね。
敵との戦闘で使っていた刀も今では腰に提げ、西洋風サムライビューティフォークールレディって感じ。
もっとも今に限っては、上役と祖母相手に気まずげに頭を掻いて、肩を落としている。
「す、すすすすみませんんんん……! い、いつもの下っ端さん達と違ってそこそこ手練れだったので、か、加減がしづらくてぇ……!」
一方で見るからにテンパリながら半泣きの様子なのはシェン・ランレイさん。
アンジェさんと同じくらいの背丈で、リンちゃん同様チャイナ服にズボンを履いた大陸系の装いをしている。緑色に染めた髪を後頭部で結った、眼鏡が知的でクール……というより所作もあって陰キャの匂いしかしない美女だ。
普段はこの通り落ち着きのない方なんだけど、戦闘となるとさっきのように豹変し、リンちゃんをも超える好戦的な気質を露にする。
どうもあっちが素なのでは? みたいな話も以前、一緒にダンジョン探査をした時に出ていたけれど。まあ、どちらもランレイさんの持つ個性、側面ということなんだろうね。
ともあれアンジェさんとランレイさん、揃ってとんでもなくカッコよくて美しい能力者犯罪捜査官コンビのお二人が今やあちゃーって感じを隠すことなく平謝りしている。
遅刻しかけたこととか、市街戦を展開したこととかについての謝罪みたいだけど……奇襲を仕掛けられた時点で何一つ悪いことなんてないんだから、堂々としていればいいと思うんだけどなあ。
「不慮の戦闘を責めたりはしませんよ……ただ連絡は欲しかった気はするかしら? まあ、戦闘中にそれは難しいわね。むしろ被害を最小限に抑えたこと、見事と称えます。ご苦労さまでした、二人とも」
「市街戦なんざ滅多にやるこっちゃないんだが、向こうから平然と仕掛けてくるってかい。どうやら私の予想していた以上にサークルってのはヤバい連中みたいだねえ……ま、ともあれ怪我人だしてないならまあ良いさ」
俺の思いと同じだったのか、ソフィアさんは彼女達に微笑みかけ、温かい言葉をかけていた。マリーさんも同様にしつつ、しかして首都圏の状況に想いを馳せている。
うん、正直俺もビックリだよ。ここまで白昼堂々と、町中で能力者犯罪捜査官相手に戦いを仕掛けるだなんて正気の沙汰じゃない。
サークル……その構成員、悪魔憑きの非能力者達。今は気絶している者達を見る。
すでに権能によるブーストは失われているけど、これは任意でオン・オフできる力ということなのか? それとも一度使ったり負けたりしたら永遠に失われる類だとでも?
権能をちらっと見た時に多少見えるものがあったけど、強化自体はほぼほぼ身体能力、特に筋力部分特化だろう。
構成員全員一律で同じ種類の強化なのか、それとも個人によって異なるのかは分からないけど、どのみち出力はそんなでもなさそうだ。強化しすぎると構成員の肉体が保たないだろうから、そのへんの配慮ゆえだろう。
早計な判断は禁物だが、いろいろと気になることが山程出てきたなあ、さっそく。
リーベやシャーリヒッタも、俺のすぐ傍で小さくやり取りしているし。
「肉体機能に対してのみのブースト……それもごく限定的なものでしょうね。おそらくは短い間だけ、身体のどこかしらの部分を強化するといったところでしょうか」
「ブースト状態の間はオペレータ相手に食い下がれるが、それにしたって出力的には弱っちい、と。シェン・ランレイの話だとこれで構成員の中じゃ手練れってんだが、よくこの程度で奇襲仕掛けたもんだなァ」
「……おそらくは相手の能力者犯罪捜査官が性質上、大きく手加減せざるを得ないことさえも織り込んでいるのかもしれません。敵とは言えモンスターでなく人間相手、しかも強化されていると言っても非能力者です。中途半端な強さだと逆に加減も難しいでしょうから、勝てはしなくとも嫌がらせくらいはできるかもですし」
「相手の足元見て仕掛けてるってわけか。コスい真似しやがる」
権能への見解はほぼ俺と同様。しかしてさらに一歩踏み込んでサークルの戦術についても考察している。
同じ人間であることを利用した、ある意味心理的な意味での嫌がらせ……シャーリヒッタの言うようにたしかに卑怯といえば卑怯と言える。
ただ、実際にそれでアンジェさんもランレイさんも力の調節に戸惑っていたところはあるんだから、向こうからしてみればしない手はないってことだろう。
サークル側に軍師的な作戦立案者がいるなら、まんまと上手く行っているとほくそ笑んでいることだろうさ。
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