首都圏の洗礼、まさかの市街戦!?
駅に停車し、扉が開く。ついに首都圏は首都の名を冠した駅に到着した俺の、人生三度目になる上京ってやつだ。
今回は大所帯なのがなんとも頼もしい。たとえば一人でここまで来いとか言われてたらたぶん、行きしなの新幹線の改札口周りで戸惑って混乱してたもの。あと普通に構内で迷子になってそうってのもあるし。
並んで歩く集団の先頭、先陣を切るソフィアさんの後ろをついていく。エスカレーター下りてー、構内歩いてー、改札口へ。
当然ながら道中の道なんてまるで全然分かっていない。何かの間違いではぐれたら俺はもう、迷わず空間転移を使うだろうね。
そんなことをリーベ、シャーリヒッタに語る。
「大体なんでこう複雑なんだ……初見の人は絶対迷うだろ、こんなの」
「多くの人にとって他地域からの出入りの要衝ですからねー。それだけ人が多いってことで周辺の開発も進んだんでしょうし、それに伴い複雑化していったのかもしれませんー」
「構内に土産物はもちろん食事とか、本屋とか、なんなら服屋なんかもあるみたいだしなァ。地下には商店街みたいなのが広がってるし、ちょっとした迷宮って感じだぜ!」
ちょっとした? 俺の目には普通に恐るべき、長大なラビリンスにしか見えてませんが何か。
行き交う人の多さも相まってもはやわけがわからん。怖ぁ……都会怖ぁ……と内心でピーピーとホトトギス山形くんが鳴きながらも、俺は必死にソフィアさんについて行ったわけなのだ。
そしたら改札を出て、駅の外へ。空は快晴でやはり夏だ、気温も高い。
ドラマとかでも有名な、すっごい昔からあるレトロモダンな感じの駅校舎の全体図を臨める広場に出る。
俺でも知ってるこの光景! 思わずスマホ取り出してカメラ機能をフルに使う。他のスタッフさん達も同様だ。
「やっぱ関東来たらコレは見ときたいよな!」
「分かる! 他にもいろいろ観光名所はあるけどまずはといえばこれでしょう!」
「こんなことでもなけりゃ、上京なんてしないしなー」
隣県の全探組から参加している探査者さん達。こちらは滅多なことがないと関東進出なんて基本、しないからか盛大にカメラをパシャパシャ言わせてるね。
探査者もいくつか種類があって、地元や気に入った地方地域に腰を据えて活動するタイプの人と、あちこちさすらって活動するタイプの人とに分かれてるんだけど、まあ比率的にはほぼほぼ定住型の探査者が多いわけだ。
で、そうなると今度は逆に地元に根を張っちゃって、あんまりよそに行きたがらなくなる傾向になったりするんだとか。
そんなだから今回、首都圏に来ることになったのはこの人達にとってはイレギュラーなことであり、たまのことだからこそせっかくだからエンジョイできる時はエンジョイしておきたいんだろうね。
「先輩、フランソワチーム、まだ到着してないみたいですね」
「だな。まあ予定時刻には少し早いからってのもあるが……珍しいな、フランソワのほうが遅いって。ましてシェンも一緒だってのに」
「二人ともノリは軽いですけど真面目ですしね。なんかイレギュラーでも起きてるとか? いやいやまさかって感じですけど」
「首都圏の現状を鑑みるとありえなくないのも怖いもんだな……」
一方、こちらは能力者犯罪捜査官組。先輩さんと後輩さんが何やら、アンジェさん達がまだ来てないっぽいことについて話している。
たしかに、見える範囲には彼女達の姿はまだないね。とはいえ時間的には合流まで少し時間はあるから問題はないけど、職業柄かこちらのお二人にはイレギュラーの予感がしているみたいだ。
俺知ってるよ、これフラグってやつだ!
……なんて内心で反応したところで、思わぬ反応を感知する。すごい速さで広場の外、動き回る2つのオペレータの気配があったのだ。
まっすぐじゃない、あちこちをすさまじい軌道で動き回っている。
戦闘だ!
直感的に反応して俺は、すぐさまソフィアさんに向けて叫んだ。
「ソフィアさん! 広場の外、1km圏ギリギリのところで誰か戦ってます! ……能力者が2人!」
「っ!? 総員、戦闘態勢! 周辺市民の避難と保護を最優先にしつつ前進、1km先にいる能力者を捉えます! エリスちゃん!」
「はいはい! 全探組スタッフにWSOエージェントは周辺の人を広場内に集めて彼らの護衛! 能力者犯罪捜査官組は私らと一緒に詰めるよ! 公平さん!」
「案内は俺が! 眼の前の大通りを行った先、右折くらいです! ──少しずつこちらに近づいてくる!」
さすがに反応も早くソフィアさんが号を発せば、エリスさんが即座に指示を出す。
それを受けて各員速やかに指示通りの展開を見せていくんだけど、咄嗟なのにスムーズに動けている皆さんの手慣れ方が頼もしい。
俺も負けじとすぐさま、気配のする方向を指で示して促す。
それと同時に飛び交う気配が、ビルの陰から姿を表した──やはり能力者が二人と、その気配のない人間が、二人!?
うち二人は見覚えのある顔だ、マリーさんとリンちゃんが目を丸くして叫んだ。
「アンジェ……!? 何してんだいあの子、この御時世に市街戦だって!?」
「姉ちゃん!? 人間相手に戦ってるってことは、あれは犯罪能力者!?」
そう、高レベル探査者ならではの身体能力で空中戦を展開しているのは、彼女らにとっての親族。
今しがた話題になっていた能力者犯罪捜査官、アンジェリーナ・フランソワさんとその相棒、シェン・ランレイさんその人達だ。
揃って自前の武器、刀と拳をフルに使って非能力者相手に戦っている。
普通ならガッツリ違法だしそもそも使うまでもなく勝てるはずだろう、けど……相手の非能力者達はそうした攻撃を受け止め、弾かれ吹き飛ばされつつもどうにか回避や防御行動を取りつつこちらに、駅のほうに向かっている。
つまり、信じがたいけどある程度はまともに戦闘として成立しているんだ。
こんなこと普通はありえない。けれど俺達はすでに、その普通じゃないことが起こっているのが今の首都圏だと知っていた。
俺の目から見ても分かるよ、あの非能力者二人に宿るモノ、それは。
「戦ってるほうはオペレータじゃない、けど……権能によるブーストがかかっている。あれか、悪魔憑きってやつは!」
「悪魔憑き! 件のサークルに与する概念存在による、力を授かったとかいう者達!」
「ということはミス・アンジェリーナとミス・ランレイの戦うあの者達こそが今回の敵の一角、サークルの構成員ということですね……!」
驚愕するサウダーデさんとベナウィさんにうなずく。まさしくその通り、アンジェさんとランレイさんが戦っているあの二人こそがサークルの構成員。
悪魔から力を授かり、そしてやつらの手駒として首都圏を騒がせている。俺達の今回の敵、その一員なのだ。
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