常に大ダンジョン時代とともにあり続けた一族
とりあえず車に乗ることにする。いつまでも家の前にリムジン停めてたらご近所さんのいい噂話の種だよこんなの。
家族にじゃあいってきまーすと告げて。家族もいってらっしゃーいと返してくれて。そうして俺とリーベ、シャーリヒッタの三人は高級車の客席に入っていったのである。
車内は一言で言って広い。マジ広い、超絶広い。
外側から受ける印象よりはるかに広くて、テーブルにソファなんてのがまるでリビングさながらに置いてあるもの。
空いてる席に座れば、側面の席に並んで座る師弟──マリーさん、サウダーデさん、ベナウィさんが俺達を迎え入れてくれた。
「よう来たね三人とも。今日からしばらくの間、よろしく頼むよ」
「やあ、公平殿リーベ殿シャーリヒッタ殿。俺や先生、ベナウィは今月いっぱいまでしかいられないが、それでもこの地にいられる間は全力を尽くして戦おう。よろしく頼む」
「どうもみなさん。いやー新たなる戦いですねえ! 途中までしかいられないのは残念ですが、その分できる限りは尽くしますのでご安心を」
「みなさん、おはようございます。今日からまた、みなさんとともに戦わせてもらいます。よろしくお願いします」
こちらの三人は元々、別件で来日していた方々だ。それゆえ滞在期間である今月末をもってそれぞれの故郷に帰られなければならないわけだけど。
その分、こうしていてくださる間はすさまじく頼りにできる大御所様方なわけだね。マリーさんは後方で指揮を執る形になると思うけど、そこまで含めてとても力強くて頼りになるよ。
後部座席のほうにはエリスさんと葵さんが座り、こちらに手を振ってくる。このお二人は問題なく、サークルや過激派との戦いにおいて最後までいてくださるだろう。
もちろん対面座席のヴァールも言わずもがなだ。WSO統括理事としても、システム側の精霊知能としても今回の事件に対しては常に最前線にいるという大変な立場の子だし、俺としてもどうにか何かしらの手助けをしたいとは思う。
そして、もう一人。
ヴァールの横にちょこんと座る、素敵で無敵な星界拳士シェン・フェイリンちゃんもまた、俺達に向けて気炎を放った。
「えへへ! 私も、一族のみんなと今月末には帰るけど……それまでは力になれる! 公平さん、リーベちゃん、ええとシャーリヒッタさん? に、マリーおばあちゃんにサウダーデさんに酔っ払い!」
「私、酔っ払いという呼び方で定着してますねえ」
「自業自得さね、アホタレ」
「そして、ヴァール様──偉大な戦士のみなさんとともに戦えること、光栄!」
拱手して一礼するリンちゃん。幼いながらもここにいる面々に引けを取らないカンフー少女の姿に、誰もが対等たる戦友を見る心地で笑いかける。
彼女や彼女のご家族も、能力者犯罪捜査官たるランレイさんを除き今月末には帰ることになる。本当はそれまで、日本観光を存分に楽しんでほしかった想いはあるけど……それよりも事件に関わることを選んだのは結局この子自身の決断だしね。そこは、尊重したいかなって思う。
ヴァールが彼女の頭を撫で、薄く、けれど優しく微笑み言う。
「助かる、フェイリン……シェン一族には古くから世話になってきたが、はるかな時を経た今もまた、こうして頼りにさせてもらうことになるとは」
「? 始祖カーンの話、ですか?」
「それもある。あとはラウエンという、カーンの後継者にも世話になったものだよ」
懐かしむ統括理事の瞳は、リンちゃんというよりはリンちゃんの中に宿るもの……積み重ねられてきた星界拳の歴史そのものに向けられているように思える。
シェン・カーンさんだけでなく、その次代にあたるラウエンさん、シェン・ラウエンさんかな? とも、交流があったんだねヴァールは。
そしてその名をもちろんリンちゃんも知っているようで。
目を大きく見開いて、彼女は大きな声で反応するのだった。
「ラウエン! シェン・ラウエン様! 二代目の星界拳継承者にして、シェンの名を始祖と並びアジアに響かせた誇り高き星界拳士! ヴァール様とも知り合いだったんですか!」
「うむ。第二次モンスターハザードと、第三次モンスターハザードの際に力を貸してもらった。第一次の折にはカーンの助力も多少得ていたこともあり、シェン一族には開祖以来何かと助けられている」
「なんと……フェイリン嬢ちゃんのご先祖さん方も、昔のモンスターハザードで活躍してたのかい。歴史だねえ」
なんとまあ、すごい年季の入った話が次々明らかになる。カーンさんからラウエンさんまで、シェン一族はモンスターハザードにおいてヴァールの仲間として戦ってくださっていたんだ。
第一次は90年前、第二次、第三次はそれぞれ78年前と75年前だから、本当に古い話だ……いや、ていうかそれより第二次モンスターハザードって、それって!
俺は後部座席を見た。他のみんなもだ。
第二次モンスターハザード、そこにいたのはヴァールとラウエンさんだけでない。もう一人、事件解決に主導的な役割を示したという方がこの場にいらっしゃるのだ。
初代聖女エリス・モリガナ。
視線を集める彼女もまた、ヴァールの言葉に強い反応を示していた。
「ラウエンさん……いましたねーたしかに、そんな名前ですごい武術家の方が。いや申しわけない、今の今まですっかり忘れちゃってましたよ、ハッハッハー」
「80年も前の話で、しかもお前と彼は半月かそこらのやり取りしかなかったからな。忘れているのも無理はない」
「そう言ってもらえると助かります……あーなんかいろいろ記憶がズルズルと。いたなあ私のパーティに結構。私とヴァールさんにラウラ、ラウエンさん、妹尾先生にベリンガムさん、レベッカさんにシモーネさん……うわ、すっごいノスタルジー! っていうかラウエンさんの一族の末裔の方と、こんな形でお会いしてたんだ、私!? ロナルドくんじゃあるまいに!」
一つのきっかけを得て、そこから芋づる式に数多の思い出が蘇ってきたんだろう。どこか涙目にさえなりながらもリンちゃんを、懐かしむような目で見やるエリスさん。
かつての仲間の、子孫と今こうしてともに戦いの場へ出向く。すごい壮大な話だ……
100年続いた大ダンジョン時代の、たしかな歴史というものを感じさせるね、これは。
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