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山形さん家のシャイニングくん、またリムジンで出迎えされてる……

 そうこうしてると迎えの車らしい、あきらかにゴージャスな車がやってきた。黒塗りの、それ曲がる時とか大丈夫ですか? と聞きたくなるくらい胴体の長いいわゆるリムジンってやつだ。

 またこれか……決戦の際に首都圏へ赴く際にも黒塗りのリムジンだったんだけど、パンピー山形家の家の前に停まると超絶的に悪目立ちしちゃうから、なんとなく気まずくなるんだよね。

 

 最近ではご近所さん方もいろいろ慣れていて、多少不思議な光景を目にしたとて"ああ、山形さん家のシャイニングちゃん"などと、公平という名前を過去に置き去りにしたかのようにシャイニングを前面に押し出して納得していらっしゃるようなのではあるが。

 それはそれとしてやはりリムジンは、周辺の風景に対してかなりのミスマッチさだ。家族のみんなもめっちゃ好奇心というか野次馬感あふれる態度でしげしげとリムジンを見てるしね。


 なんなら俺だってリムジンだすげー! と内心思いながらチラチラ車体を見てるもの。

 そんなことしてたらいわゆる乗客席の窓が開いて、中からぴょこっとソフィアさんってかヴァールが顔を出してきたからちょっとびっくらこいたんだけども。

 

「待たせたな山形公平、後釜、シャーリヒッタ……どうした?」

「い、いや。ずいぶん豪華なので来たなー、と」

「ああ……ソフィアが気を利かせてな。ワタシなどはマイクロバスでよかろうと思ったのだが、彼女はそう思わなかったらしい」

「あの人、実は派手なの嫌いじゃないよな」

 

 度々見せるお転婆というかお茶目な言動や感性を見るに、このリムジンを手配したソフィアさんって実はそこそこ目立ちたがりなのかも知れない。

 そう言うとかもしれないなとヴァールは苦笑した。同時にドアがオートで開き、俺達三人を中に招く。


 当然ながらすでにみなさん勢揃いだ。

 ヴァール、マリーさん、サウダーデさん、ベナウィさん。

 エリスさん、葵さん、そしてリンちゃん。倶楽部との戦いでともに力を合わせた仲間達が、今再び一堂に会している。

 ……うん、リンちゃん?

 

「ニーハオ! 星界拳正統継承者、天覇のシェン・フェイリン! お邪魔してます公平さん!」

「こ、こんにちは……え、良いのかヴァール? 彼女も連れて行って、現地でたぶん、戦いになるかもなのに」

「だからこそだ。戦力は多ければ多いほど良い。少なくとも認定式において現れる可能性が高いスレイブモンスターども相手には、今やS級にも匹敵する彼女の力がきっと役に立つ」

「ヴァール様の期待に応える! 真道星界拳、異界の神とて蹴り滅ぼす!!」

 

 いや滅ぼしたら駄目だよ? そこは俺達とミュトスに任せてね?

 相変わらずの超イケイケ強気モードのリンちゃんは、そこが車内で見るからに柔らかくて高級そうなソファシートに腰掛けていなければ演武の一つも披露しそうなほどに闘志を燃やしている。

 これほどやる気満々ならなるほど、サークルや過激派が率いるだろうスレイブモンスターの群れ相手にも、まるで問題なく殴りかかる、否、蹴りかかることだろう。

 

 彼女は先日の異世界の神の器との戦いにおいて、改めて己の力を世界に示した。

 真道星界拳……シェン一族が目指した星界拳の集大成にして、ここを起点に踏み出すべき新たなる一歩と言える新流派を興したのだ。

 

 その姿を、WSO統括理事自らが高く評価しての起用。

 元からしてヴァールはリンちゃんのことをものすごく買っていたけど、今や連日ストップ高って感じの様子だもんな。


 祖先にあたる始祖、シェン・カーンさんに星界拳の里を興していつか集大成を見せるよう約束を交わしたいわばシェン一族興隆のきっかけこそが彼女だったって話だし、そうした遠い約束もあって、余計に彼女には力を発揮できる場を提供したくあるのかも知れない。

 思えばランレイさんに対してもめちゃくちゃ優しかったもんね。

 

「ハッハッハー、ヴァールさんは元から見かけの割にダダ甘な人だったけど、フェイリンさん相手には一際って感じだねえ。あ、やっほ公平さん! 最近葵とスパリゾートでバカンスしまくってたエリスさんだよー」

「戦闘用スキルもなしにS級相当とかはっはっはー! 桁が違いますねー。どうも公平くん、最近師匠と居酒屋はしごしてカラオケ行ってそのままの勢いでオールナイトしてました、葵さんですよー」

「総論すると死ぬほど遊び倒してましたね! どうもエリスさん葵さん。昨日は自室にこもってネットしまくってた山形くんでーす」

 

 そんなヴァールを昔からよく知るエリスさんと、その弟子葵さんが二人して車内から手を振ってきた。

 スパリゾート行って居酒屋はしごしてカラオケで徹夜したってめっちゃ遊んでたみたいで何よりだ。お二人とも倶楽部案件では大変だったもの、バカンスで休養するのは大切だよね。

 

 かく言う俺は今言った通り昨日、ひたすら自室でネットしてたよ。リーベとシャーリヒッタに優子ちゃん、アイもいて、みんなでいろんなジャンルの動画を見たりゲームしたり漫画読んだりしてたね。

 これはこれでとてもまったりできて楽しい一日でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] そりゃヴァールが長年待ち望んだ「完成されたシェン」だし、リンちゃんもヴァールを慕ってくれるから、可愛くていろいろ融通してあげちゃうのも無理はないんだよなぁ
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