行くぞ首都圏!旅立ちの朝
というわけで俺にとって事実上最後の休日を、なるべく心残りのないように凄絶にぐーたらして過ごして8月24日を迎えた。
光差す爽やかな天気の夏の朝。いよいよ、ついに、首都圏へと向かう日である。
S級探査者認定式に出席し、香苗さんの節目を祝してそのままおそらくやってくるだろうサークルだ過激派だを相手に立ち回る時がやって来たのだ。
いやあ……終わっちゃったなあ、夏休み。
学校こそ始まってないものの気分はすでに二学期だ、言うなれば前哨戦だろうか? 勉強とかではないものの、こっちはこっちで普通に多くの人の命と生活がかかっている、決して気を抜けない一大事だもの。さすがに長期休暇モードからは脱するよね。
そんなわけで荷物をまとめて俺とリーベとシャーリヒッタは、朝7時前に家の前にて迎えの車を待っていた。
前に首都圏に行った時同様、家族みんなも総出で見送りだ。とはいえその時よりは呑気ムード漂ってるのは、やはり今の俺達なら帰ろうと思えば冗談抜きで秒で帰ってこれると知っているからだろう。
母ちゃんがニヤニヤしながら言ってくる。
「寂しくなったらいつでも帰って来なさいよ、三人とも。特に公平」
「ピンポイントで俺!? いやいや、さすがに用もないのにそれはしないよ、旅館宿泊なんて滅多にないし、たぶん普通にそこを拠点にするかな」
「羨ましい……なんてのはさすがに言えんわなあ。単なる御堂さんのお祝いごとならともかく、またなんか面倒事なんだろ?」
「だねー」
父ちゃんが微妙に神妙な面持ちなように、今回もそれなりにシリアスな事情からの旅路だからね。
WSOがわざわざいろいろ手配してくれているだろうから、今回もパンピー山形くん的には萎縮するしかなさそうなすごい宿に泊まる気がするので、そこは正直多少は楽しみだけども。
経緯を考えるとお互い、微妙な感じになるのも仕方ない話ではあった。
「まあ、実家に何か異変が起きたら文字通りすっ飛んで帰っては来るよ。というわけでいつでもメッセージ送ってきてね、遠慮なくさ」
「おう、そうさせてもらうよ。つってもなんだ、今この地域一帯、探査者さん達がたくさん見張りしてくれてるんだろ? 滅多なことは起きないだろうさ」
「きゅう、きゅうきゅーう……」
「アイも、ちょっとだけ留守にするけどまたすぐ戻ってくるからな。それまで良い子にしてるんだぞ」
またしても俺が家を離れるからか、落ち込んだように鳴くアイを抱きしめ、その背中を優しく撫でる。
まあ言っても二学期始まるまでにはひとまず帰ってくるからね。それまでにもあんまり寂しがるようならちょっとだけ空間転移したって良いし、そこは臨機応変にいきたいところだ。
それに一応、なんかあった時にはすぐ連絡するようこないだから口すっぱくして言ってはいる。両親に優子ちゃんも理解してくれているんだけど……
ぶっちゃけ現在のこの近辺ってか近畿全域、マジでびっくりするくらい警備体制が敷かれているので実際のところ、そんな心配もしてなかったりするんだよね。
WSOのエージェント、全探組の依頼を受けた探査者、そして警察のみなさん。
しかもこの家付近に限っては北欧神話の大神、オーディンが従者のレギンレイヴさん達をさえ見張りに寄越してくれているほどだ。今だって感じるものね、概念存在の気配が周囲にいくつとあるのを。
ここまでガチガチだと、委員会の概念存在達だってとてもじゃないけど身動き取れないよ。
改めて織田には感謝のメッセージを送らせてもらったし、遠慮なく我が家や地域一帯の安全を担保させてもらおうかってなもんよ。
「リーベお姉ちゃん、シャーリヒッタお姉ちゃん。二人も怪我とかしないでね? あと兄ちゃんが無茶しそうだったら、引っ叩いてでも止めちゃって」
「もちろん! 任せてくださいー、三人揃ってまったく無傷で帰ってきますとも! そのためのリーベちゃん、リーベちゃん!」
「引っ叩くってのはさすがにしたくねーけど、父様のことは任せときな優子。絶対に無理無茶無謀はさせたりしないからよ! このシャーリヒッタ様に任せときなァ!」
我が妹ちゃんがともに旅立つ精霊知能二人に向けて、何やら物騒なことさえ頼んでいる。引っ叩いてでもはやめてよ、怖ぁ……
そしてリーベもシャーリヒッタも力強く応えているね。リーベはもとよりシャーリヒッタも、今回からは戦闘に参加することもあるだろう。受肉した際にステータスも持たされてるしな。
特にこの子の場合、スキルとして落とし込まれた《異分子処断権限》の効果がぶっ壊れているんだ。
スキル
名称 異分子処断権限
効果 解放段階によって追加権限を付与。現在第三種解放中
第三種……オペレータへの絶対権限および戦闘能力10倍
第二種……現世存在への絶対権限および戦闘能力50倍
第一種……概念存在への絶対権限および戦闘能力100倍
全段解放……あらゆる魂への絶対権限および戦闘能力1000倍
──とまあ、見るからにおかしいもの、この効果。
現状では第三種までしか開放されてないけどそれでも大概だ。こんなのあてがわれる敵さんが気の毒になるまであるよ、正直なところ。
「父様に仇なすやつらはこのシャーリヒッタ様が叩きのめしてやらァ! モンスターでもオペレータでも悪魔憑きでもなんでも来やがれってんだ!」
頼もしいことを言いながら快活に笑うシャーリヒッタ。ここまで強い子が味方ってのは、俺としても不安が一切なくていいなと笑い返すのであった。
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