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手にした力を手放せる、それもまた強さの一つ

 部屋にて集うみなさん。俺、リーベ、シャーリヒッタに加えてソフィアさんとマリーさんが揃ってテーブルを囲む形に座る。

 うん、狭い! いつぞやヴァールがアンジェさんやランレイさんを連れてきた時もそうだったけど、さすがに5人ともなるとまあまあ圧迫感のある光景だ。

 

「えーっと、どっか広いところにでも空間転移で移動します? 誰も居なくて、話がしやすそうなところとか」

「私は大丈夫ですよ? こういうところで身を寄せ合って秘密のお話するの、なんだかワクワクしません?」

「そ、そうですかね」

「ソフィアさん、変なところで子供心がありますねえ……ま、とはいえ気遣いは無用さね公平ちゃん。押しかけといてそこまで厚かましいこと言わないよ、さすがに」

 

 何やら楽しそうに俺の向かい、対面にて微笑むソフィアさん。その隣ではマリーさんが呆れたように笑っている。

 まあ、そう仰るならこのままで良いんだろう。リーベとシャーリヒッタに挟まれる形で俺は、じゃあまあさくっと話して終わらせようかな? と思い、説明を始めたのである。

 

「かくかくしかじかすいへいりーべぼくのふね────と。いうわけで織田からはいろいろと有益な情報を得ることができましたよ」

「かつてのモンスターハザードにおける概念存在の動きと、何よりもサークルに与する悪魔の手口……!! 構成員が少なからず能力者でない一般人らしいというのは、すでに報告にも上がっていましたが!」

「探査者並の強さな割に、どうにもステータスを持ってなさそうってんで警察が混乱してるってのは聞いちゃいたがそういうからくりかえ。ったく、とんでもないことしやがるねえ」

 

 これまでのモンスターハザードについてもだが、ここで何より重要なのはやはりサークルの実状だろう。

 悪魔が、自らの手駒とすべく被能力者達に力を与え、E級相当とはいえ探査者並の戦闘力を与えている……大ダンジョン時代を始まりから見てきたソフィアさんにとっては言うまでもなく、大きなショックみたいだよ。

 

 マリーさんだって難しい顔をしてぼやいているね。

 WSOの統括理事と特別理事を揃って悩ませる、その時点でサークルや悪魔恐るべしと言えるだろう……俺はそうした点を踏まえ、一応の確認をとった。

 

「香苗さんの見解では、たとえ非能力者相手でもサークルの場合、能力者犯罪捜査官が権限を発揮できる要件を満たしているということでしたが大丈夫ですか? 首都圏についたら先の事情で、誰も彼らに手出しできなくなっていた……なんてのは避けたいんですが」

「ええ、そこは問題ありません……90年前に能力者犯罪捜査官制度を構築した際、このようなこともあるかも知れないとしてヴァールが主導になり、拡大解釈の余地を組み込んでくれていました」

「というかそんなことなっちまったら私の権限で能力者犯罪捜査官達に連中の捕縛許可を出すよ。後々責任は追及されるだろうが、もう引退してるこんなババアの去就なんざ自分自身、どーだっていいしね。なんなら今でも特別理事なんてやってるのがおかしいんだから良い機会ですらあるよ、ファファファ!」

「えぇ……?」

 

 やはりというべきか、ヴァールが先んじてこうした事態に備えていてくれたおかげでアンジェさん達も問題なく、引き続きサークルに対処していけそうだ。良かった。

 だけどなんかマリーさんがすごいこと言ってるよ、怖ぁ……万一法的にどうにもならなかった場合、自分の社会的地位やこれまでのすべてを犠牲にしてでも無理矢理どうにかするってことじゃん。

 

 たしかにもう引退されていて、あとはのんびり好きなことをして生きていけるしそうしていてほしい方ではある。

 だから特別理事の座だって特になんの未練もなくぽーいと投げ売りしちゃえる心境なんだろうけど、ノリが軽すぎて反応に困るよー。

 ソフィアさんが同じく困ったように微笑み、彼女に話しかけた。

 

「マリーちゃん、本当に最後まで権威権勢にこだわらなかったわねえ……実際はさっきも言ったけどまるで問題はないのだから、引き続き特別理事として後進達を見守るポジションでいてくださいな」

「私ゃ13歳で探査者になって以降、ただの探査者以外の何者でもありゃしませんよ。地位や名誉なんてのは結果的についてきたものでしかないんですから、そんなもんに縛られたりこだわったりやしません」

「マリーさん……」

 

 朗らかに断言するマリーさんに、俺もリーベもシャーリヒッタも目を丸くして、その上で感嘆するほかない。

 この人は70年、本当に最初から最後までただの一人の探査者だったんだ。ダンジョンに潜ってモンスターを倒す、そのことを繰り返してきた……何の変哲もない、どこの探査者でもやってることをただ、ひたすらに。

 

 そうした道のりの中でいろんな人や社会から認められ、そして得たもの、地位や名誉や権威、権力。

 それらはマリーさんにとって時には便利遣いできるものではあるけど、本質的には不要なものでしかない。

 

 だから執着もない。だから潔く手放せる。

 ある種、悟りの境地とさえ言えるかもしれない。手にした力を必要とあらばいつでも手放せる姿に、俺は偉大な探査者へのたしかな尊敬の念を覚えていた。

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― 新着の感想 ―
今回の事件が想定通りに解決したら、三界のプロセッサが公平の“嫁”になるんですね。
[一言] マリーさんはこういうところがかっこいいんだよなぁ。
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