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会談終了、そして事実上夏休みも明日終了(悲哀)

 概ね話すべきことは話し終えた感じがある。時刻も2時過ぎってことで、まあぼちぼちお開きの頃合いかも知れない。

 やっぱりお腹いっぱいになったあとの真面目な話し合いってどこか気だるいと言うか、午後特有のアンニュイさも手伝ってどこか間延びした空気になるんだよねー。

 織田も軽く背筋を伸ばして、軽く安堵の息なんて吐いてるし。

 

「ふう……こんなところでしょうかね。元より議論になるような話し合いではありませんが、特に大きく揉めるようなことにならず、スムーズに情報共有と打ち合わせができてホッとしていますよ」

「だな。すごく豪華なお昼までご馳走してもらっちゃって、今日は本当にありがとう織田、いえオーディン」

「こちらこそ実に貴重で、かつ興味深い話を聞かせていただきました。好奇心が結実する瞬間というのはやはり素晴らしい。隠されていたモノ、その深淵たる知を手にする快楽は何にも勝る……くく、くくくっ!」

「怖ぁ……」

 

 終わり際の挨拶みたいにやり取りを交わすんだけど、美味しいご飯をいただいた俺達は元より織田も、今まで知らなかったこの世界の裏の事情とかを知れていたくご満悦の様子である。

 この神、こういうところが危うさを感じさせるんだよなーって思いを少しばかり抱く。好奇心最優先というか、前のめりすぎると言うかね。

 

 なんでこんなに知ること、知識を得ることに固執しているんだろう?

 不思議に思いながらも俺達はかくして会談を終え、帰路に着くことになったのである。

 

「それじゃあ、俺達はこのへんでお暇させてもらうよ。繰り返しになるけど本当に有意義で素晴らしい値打ちのある時間だった。ありがとうございました」

「ありがとうございましたー! お昼ご飯、美味しかったですー」

「最高だったぜ! イヴはじめ従者達にも礼を言っといてくれよな!」

「只人の身にはいささか場違い感が漂ってはおりましたが……だからこそ我らが救世主様の偉大なるお姿をこの目にこの耳にこの心に刻むことができました。伝道師として心より厚く御礼申し上げます、大神オーディン」

 

 立ち上がりがてらみんなで織田に礼を述べる。リーベもシャーリヒッタも、主にお昼ご飯のおもてなしにいたく感動しているみたいだね。

 そして相変わらず通常進行の我らが伝道師さん。システム領域と概念領域との会談だから彼女にとっては若干アウェー感あったのはたしかだろうけど、それでもあなたはいつでもどこでも変わりなく伝道師でしたよ。

 

 さしもの織田も、先程直視しちゃった生伝道を思い返してか微妙な感じで複雑そうな笑みを浮かべているし。

 かつてここまで一神話の最高神を困惑させた人間がいただろうか。いたかもしれないけど、そんなに数がいたわけじゃないと思う。

 あくまで救世主を讃えに来ました! と言わんばかりの香苗さんに、彼は若干口元を引きつらせつつも応えた。

 

「そ、それは何より。遅ればせながら御堂香苗、S級探査者への昇級おめでとうございます。北欧神話の大神、戦を司る神としてはさらなる強者の誕生は素直に喜ばしいですよ」

「お言葉ありがたく頂戴します」

「今はもう英雄英傑をヴァルハラに呼び込むなどはしていませんが……時勢が時勢ならスカウトの一つもしていたかもしれません。まあ、そのへんの逸話も所詮は現世のイメージによるものでしかないのですがね」


 我々はいつだって虚ろな影。陽炎めいた伝承の投影先に過ぎないというわけですよ──

 そう嘯いて自嘲しつつ、織田は謁見の間の玄関先まで俺達を見送ってくれた。

 

 玄関を出るとイヴさんがすでに待ち構えており、一礼して出口までご案内しますと言ってくれる。

 それに続いてエレベータまで向かいつつ、俺達は最後に織田に手を振るのだった。

 

「それじゃあ、今日はありがとうございました! 何かあったら。いつでも連絡してほしい、すぐに応対するから!」

「ええ、またいずれ。今日はありがとうございました」

 

 織田もにこやかに笑い、手を振って応じてくれて。

 北欧神話は最高神、オーディンとの会談はかくして終わったのだった。


 いやー、話は有意義だったし食事は美味しかったし、良い時間を過ごせたよ。

 これで準備は万端、いよいよ首都に行く用意もすべて整ったって感じだ。イヴさんに促されてエレベータに乗りつつ、リーベ達と話す。

 

「あとは今回の話をソフィアさんに伝えて、今回の件は一件落着。ついに首都圏に行く段だな」

「ですねー。つまりは公平さんの夏休みも事実上、もうおしまいなわけですー」

「それを言うなよ……」

 

 ああ、改めて突きつけられる事実に悲しみ。

 今日は8月22日で、明日には香苗さんが一足先に首都圏へと向かう。俺達は明後日の24日に向かうことになるので、明日一日のんびり過ごせばもう関西を離れての認定式行きなのだ。


 それってつまり、そのままサークルや過激派との事件に関わっていくわけなので……そんなことしてたらあと一週間は本来あったはずの夏休みなど跡形もなくなるのは必定。

 要するに俺ちゃんにとっては事実上、明日が夏休み最終日というわけでした。ガックシ!

 

「せめて噛みしめるように、明日はのんびりと家の中で過ごそう……」

 

 降りていくエレベータの中でつぶやく。

 そんな俺を、香苗さんやリーベ、シャーリヒッタが慰めるように傍にいてくれるのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] そういえば現世の魂はそれぞれの信仰に従って概念領域で処理されるとして、異世界の魂はとりあえずどこ行くのだろう…? 動物霊なんかと、おんなじ扱いなのか…?
[一言] なんでオーディンが知ることに固執してるかって言われたら、現世のオーディンのイメージが知識マニアって言うか知ることに比喩でなく自分の命を掛けられる神だからじゃないですかね……。 なにせ、神話に…
[一言] せめて首都圏観光できる時間が取れればいいけどね……
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