本当にやりたい放題だぞ、ワールドプロセッサさん!
まあ正直ね、ここにいるからには一回くらいは句読点飛ばすだろうなって思ってたんだよね俺も。だからまあ、多少は覚悟できていたりしたんだけど……
北欧神話の大神相手にも一切怯まず果敢に伝道をかました香苗さんの勇姿が大きく見える。織田さえ圧倒しながらも満足げに席についた彼女のことはひとまず置いて、俺は話を続けることにした。
「え、ええとー……そう。つまり認定式が行われるのと並行するかその前後に俺達はサークルや過激派と戦端を開くことになるかもしれないってのは覚えておいてほしいかな」
「わ、分かりました。それではそのあたりで私も概念領域を見張り、奇妙な動きをするモノがいないか一応見ておきましょう。付随してこの近辺、特にあなたの家族や関係者に類が及ばないよう、従者達を見張りにつけておきます」
「……良いのか? 現世に干渉どころじゃない、介入になりかねないけど」
「我が権能にて隠蔽するので構いませんとも。グレーな手口とは、バレなければむしろホワイトなテクニックとして扱われるものなのですよ。くくく」
悪どい笑みを浮かべつつも、言ってることは俺の周辺を警備してくれるという優しみ溢れる織田。
怖ぁ……だけどありがたい。元よりこの地域一帯はすでにWSOから全探組から警察に至るまで、多くの組織のエージェントによって鉄壁の防備がなされているから心配はしてなかったけどこれは鬼に金棒だよ。
でもまあ、何かあったら空間転移ですぐさま跳んで帰るからその際は連絡してね、と念押しだけしておく。
オーディンの権能を侮るつもりなんてないけど、それでも万一バレた時のことを考えると従者さん方はあくまで見張りとしておきたいところだ。そのくらいなら介入でなく干渉の範疇だろうからね。
そこまで取り決めをして、俺はそう言えばと思い返した。
こうまで協力してくれている織田に対してなら、伝えておいても良い情報が一つあったのだ。
シャーリヒッタとリーベに視線をやり、問いかける。
「ミュトスのこと、織田にも伝えておこうと思うんだけど良いかな? 直接は関係ないけど、今回の騒動の核心部分そのものな子だからさ」
「そうですね、父様。別にどちらでも良いとは思うんですけど、ミュトスの権能についても概念領域のほうから何か、情報があるかもですし」
「知らなくても良いといえば良いんですけどねー。まあ知っておいてもらったほうが、何かと話は早いかもしれませんー」
うなずく二人。揃って"別に知らなくても良いけど知らせておくと何かあるかも? "みたいな程度の見解みたいだ。つまりは教えても問題なしだな。
ミュトス……異世界の神の人格部分が三界機構と邪悪なる思念の端末のリソースを使い、精霊知能として昇華された存在。
彼女こそはダンジョン聖教過激派が利用している、異世界の神の権能部分に対する決定的なカウンターファクターだ。
精霊知能になった彼女が己の権能を取り戻せば、必然的にやつらの画策するなんらかの野望は著しく頓挫することになるだろうからね。
権能部分にはこの世界との因果がないため俺でさえ手出ししづらいことを考えると、彼女の存在が今回の戦いの鍵となることは間違いないのだった。
「…………ふむ? 何やらシステム領域のほうで、事態に大きく関わるファクターがある、と? 実に興味深いですね、差し障りがなければ聞いておきたいところですが。無論、火傷しない範囲でね」
「今もうこうしている時点で大概、火傷してる気もしなくもないけど……」
「くくくっ! それはたしかにそうですね。それでは毒を喰らわば皿まで、の気持ちで拝聴いたしましょうかね」
さすが好奇心の塊だ、織田が新たな情報や真実の予感に興味津々に食らいついている。
それでも若干皮肉っぽく火傷云々言ったのは、やはり迂闊に俺と接触した結果真実に到達し、システム領域と概念領域のパイプ役なんて七面倒な役割を荷なうことになったからだろう。
お気の毒だが当然だ、知った以上は仕方ないよね。
織田も分かっているから苦笑半分茶目っ気半分って感じだ。物分りがいい神様だな〜と感心して、俺はそれじゃあとミュトスについて簡潔に説明した。
「かくかくしかじかきんきらきん────とまあそんなわけで。うちの精霊知能ミュトスこそが、異世界の神の権能に対して投入される最適解なんだよね」
「…………なるほど。つまりワールドプロセッサというあなたの対になるモノ、この世の真なる創造主がすでに手を打っていたということですか。ことが始まった時点で切り札は完成されている、すさまじい手管ですね」
感心より呆れのほうが色濃い。ワールドプロセッサの先んじての動きっぷり、本当にあらゆる事態を想定していたかのような手の尽くしっぷりに彼は心底、驚嘆しているらしかった。
うん……話を聞いた俺や精霊知能達だって唖然としてたものな。ミュトスの魂を確保したのはたまたまにせよ、その時点であいつはすでに今のような事態になることを予期していたんだ。
そしてそれに備えて本当にすべての手段を講じた。
三界機構を説得し、リソースとし、あまつさえ偶然俺が弔った邪悪なる思念の端末さえも土壇場で利用して。
そこまでしてついに、シャーリヒッタにも匹敵する最強の精霊知能ミュトスを創造したんだ。
「そこまでやりたい放題できるものなのですね……ここまで来るともはや悔しくもなりません。各神話圏の創造神クラスの権能でさえ、魂をそこまでグレードアップさせるなどできませんよ」
「まー、そもそも創造神クラスじゃ精々でも精霊知能級の権限くらいだしなァ。ソレとは桁が違うぜ、ワールドプロセッサはよ。あ、もちろん我らが父様もな!!」
「そうみたいですね。やれやれ、世界の広さ、深さに今さらながら畏れ入る心地です」
嘆息して、シャーリヒッタに笑いかける織田。
本来ならば知る由もない世界の裏側を垣間見、彼は彼なりに感じ入るところが多いみたいだった。
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