そもそも現状がすでにファンタジーすぎる……!
イヴさんについて行く形で退室する。マンションの一室を丸々使った謁見の間だけど、会食の間なんてのもまた別の一室に用意しているらしい。
織田に先んじて俺達は先、そちらに向かうことになったのだ。
「いやあ、なんかもうすでにお腹いっぱいって感じの情報量でしたね」
「まったく興味深い話ばかりでしたね。委員会や概念存在についてもですし、サークルと悪魔の関係についても」
「まさかオペレータ関係なしに、概念存在がテメェの都合で強化した非能力者、いわば超能力者なんてのを使ってたとはなァ。どちらにせよ脅威なのは倶楽部にも負けねえだろうけど、にしたって厄介な話だぜ」
道すがら、香苗さんやシャーリヒッタを交えて話す。
午前だけでも思っていた以上に判明した事実は多く、特にサークルの実状については悪魔のやり口も併せ、よくそんな方向に持っていけたもんだなと軽く感心すらさせられるほどだ。
結論から言うと特にこれまでと対応も変わらず、やはり向こうに行ったらサークルなり悪魔なりと対峙することにはなるだろうけど……
大ダンジョン時代において定義されるところの能力者ではなく、さりとて非能力者と言えるわけでもない。まさしく超能力者とでも言うべき者達の出現には、いろいろ思うところがあるのも事実だった。
リーベもまた、どこか戸惑いがちに話す。
「手駒にすることを代償として力を与える、なんて悪魔に都合が良いようでその実、人間に対してほとんど何も要求していない契約……これも不思議ですねー。サークルが無理強いでもされていない限り、事実上無償ですよこれー」
「取り調べなどでサークルの構成員は概ね、金目的だとかで積極的にダンジョンコアの密売に手を染めたと供述しているようですね。少なくとも活動自体には自らの意思で参加していた者がいる以上、無理矢理契約を迫られたというのも微妙なところです」
「サークルに力を与えた悪魔の真の目的や意図もですけど、サークルを構成する人間達の真意や動機もやっぱり気になりますー。そこまでしといて金目的だけなんて、何があってもありえませんしねー」
サークルと悪魔の不可思議な関係……対等なようで微妙に人間側に都合がいいというか、自由意志による協力だけで力を得られるなんて破格の契約関係について、やはりそこも気になるところだ。
正直、俺やシステム領域の最優先ターゲットは間違いなくミュトスの権能とそれを利用しているダンジョン聖教過激派なんだが、それはそれとしてサークルや悪魔の思惑も気にするしかない状況に陥ってきた。
だってね、今回のケースって間違いなく今後、大ダンジョン時代が終焉を迎えた先の時代に頻発すると思うんだもの。
俺と同じ懸念を抱いたんだろう、シャーリヒッタが難しげに語る。
「つーか何が厄介って、このやり口が発見された以上、今でなくともいつか絶対に他の概念存在も似たようなことするってところだよなァ。それを見越してヴァールも先にカウンターを用意してるけど、たぶんそんなんじゃ止まらねえだろうし」
「非能力者と、能力者。その構図に超能力者がさらに加わりかねないというわけですね。もし超能力者が大々的に社会進出までしてきたら、混乱は必至でしょう」
「別にオレらとしちゃ構わないっつーか、能力者の時点で今さら感あるんだけどよォ。いよいよ先のことがわかんなくなってきたところ、あるよなァ」
織田もほのめかしていた通り、今回の悪魔の手口は概念存在にとっては革新的、かつ比較的リスクの低いやり方だ。
コロンブスの卵的とも言えるのかな? 簡単な理屈だけど、だからこそ誰も思いつかないでいたこととも言える。
両者の利害を一致させる形で契約を結べば事実上、人間に対して最小限の範囲で的確な干渉ができるのだから、模倣するモノが出てきそうなのは間違いない。
今すぐではもちろんない──繰り返しになるけど、大半の概念存在は現世定義における大ダンジョン時代の終焉を迎えるまで、静観の構えを決めるみたいだからだ──にしろ、数百年後にはジワジワとそうした超能力者達が増えてくる可能性は大いにあり得る。
そうなった時、社会はどのように変容していくだろうか。はるか未来のことなんて分かるはずもないけれど、なんだかすごくファンタジーめいたことになる気がするよ。
「……言ってもまあ、ダンジョンやらモンスターやら概念存在やらがひしめく今も大概、ファンタジーだよなあ」
「ですねー。大ダンジョン時代以前の人達からしたら間違いなくそう思うでしょー」
「曽祖父も言っていましたね、若い頃は両親や祖父母が時代の変化にまるでついてこれていなかったと。探査者社会の成立は猛スピードで成し遂げられていきましたが、それだけに置いてけぼりを食らう気持ちになった人も多かったみたいです」
「ああ、やっぱり……いきなり息子世代孫世代がスキルとかに覚醒し始めたら、ねえ?」
そもそも大ダンジョン時代そのものが本来あるべき姿からして、極めてファンタジーそのものなんだよなあ。
そのことに思い至り。また香苗さんからも将太さんの貴重なお話をお聞きして、改めて今さらファンタジーめいたとか言うまでもない話だったなと思う俺ちゃんなのでした。
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