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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
第二部後日談編

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要約すると「手駒になるならお値打ち価格で力を与えるよ」という契約内容な件

 サークルの、まさかの保有戦力。倶楽部同様に犯罪能力者が多数在籍していて、その者達がメインになって実働部隊になっているのだと思いきや……

 実状たるやその何割かはおそらく非能力者であり、概念存在は悪魔カテゴリの何体かが彼らと契約を結ぶことで代価を受け取り、その見返りとして力を貸していたと言うのだ。

 

 これには思わずシステム領域の俺達も唸るほかない。

 リーベもシャーリヒッタも、深い嘆息混じりに思うところを漏らした。

 

「そこまでやりますかー……そりゃ、そういうことしてたら多少はオペレータとも戦えるでしょうけどー」

「いくらなんでも無茶だぜ、そいつは。おそらくレベル100前後くらいまでの強化が関の山だしスキルもない身体能力だけの強化だろうが、それにしたって人間側の払う対価はめちゃくちゃデケーはずだぜ」

「それは……まさか、契約者の命まで含まれていると言うことですか? ありがちですが、そのようなことが本当に?」

 

 唖然とした香苗さんが尋ねれば、二人は重々しくもうなずき肯定を示した。そう、ことは普通に命に関わる話だ。

 古今東西、悪魔が契約の対価に契約者の、あるいはその親類縁者の命を要求したという話は普通に聞くからね。叶える願いが荒唐無稽なものであればあるほど、支払うものは大きくなる仕様だから。

 

 ステータスを持たない者を、曲がりなりにもオペレータに匹敵するだけの状態にする。

 悪魔の権能をもってしてもシャーリヒッタが今言ったような状態が限度だろうが、だからこそ対価も相応に大きくなるだろう。

 

 あるいはすでに何人も、契約の果てに死んだ人間さえいるのかも知れないな、サークルには。

 深刻な空気が流れる。こうなるとサークルの構成員さえも、悪魔の契約から解き放って救うことを視野に入れる必要がある。

 大変なことになったぞ……そう悩んでいる俺に、しかし織田はあっけらかんと告げるのだった。

 

「いえ。今回に限ってはそこまで代償は大きなものではありません。というかほぼ無償に近いですね」

「ほぼ無償!? いやいや、悪魔がそんなことするわけ」

「あるんですよ、今回だけは。何しろ悪魔自身の都合が大きいわけですからね、かの契約には」

「……あー。リーベちゃん、なんか分かっちゃったかもですー」

「リーベ?」

 

 悪魔が無償で力を授けるなんていう、ありえないことを口にする織田。彼はこんなことで嘘などつかないだろうが、それでもあまりに信じ難い。

 かの概念存在にとって契約における一連のやり取りはある種の権能、ある種の誓いだ。単なる口約束や空手形で誤魔化せるようなものでは断じてなく、契約者は互いに契約に沿い、力を授け、そして代価を受け取らなければならない。

 

 因果律クラスの絶対的なお約束ごとを、いくらなんでも無償でなんてそんなことができるわけない。

 ……そう、思った矢先。リーベがなんかいきなり挙手した。何かに気づいた、スッキリした顔だ。

 彼女はそして、俺達のほうを見て説明した。

 

「えーと通常、悪魔との契約は常に悪魔と契約者側が対等になるように行われますよね? 与える悪魔も支払う契約者も、どちらも同じだけのものを同じだけの量、支払うわけですけどー」

「そりゃまあ、そうだろ。だから今回の場合で言えば、悪魔側としてはサークルを強化して委員会の手駒にするために力を与えて、その代償として……あっ」

「……なるほどォ? 委員会に属している悪魔側からすると、サークルが力を持つこと自体がメリットってわけだ。ならそれだけでも対価としちゃフィフティ・フィフティってわけで──」

「そうなります。さすがはシステム領域のみなさま、御明察ですね」


 まさかまさかの大正答。惜しみなく賞賛する織田だが、俺もリーベもシャーリヒッタも、なんとなく予想がついた今回の悪魔の動きになんじゃそらと驚きを禁じ得ないでいる。

 つまりはこういうことだ──悪魔がサークルに対して契約を持ちかけたのが自分達のなんらかの都合でもある以上、さらに対価まで要求するのは契約上の対等関係に違反している、と。


 自分達の手駒にするのに、その上さらに代償まで取るなんて悪魔側の好き放題すぎるからね。

 そうなるとさっき言った、因果律クラスでのお約束ごとである契約における対等ってのが維持できなくなるがゆえ、彼ら悪魔は通常価格での代価を要求することができないはずなんだ。

 

 悪魔達はサークルという手駒を手にし、委員会のためにダンジョンコアを密売買する役割を担わせる。もっと言えばダンジョン聖教過激派とも手を組ませ、香苗さんの認定式にも襲撃させる。

 そしてサークル構成員はそれをもって、探査者にも匹敵する力を悪魔から受け取る。これが連中の交わした契約ってことだろう。


 なるほど、これならたしかにほぼ無償と言えるな。

 とはいえ戸惑いはする。俺は頭を掻いて一人、つぶやいた。

 

「こうなるとサークルの時系列が気になってくるな……悪魔との契約をもって組織を結成したのか? あるいは先にサークルなりその前身があって、そこに悪魔がスカウトして委員会についたのか」

「そのへんの、現世の事情についてはなんとも分かりかねますね。ですが件の悪魔のやり口は先ほど言った通り、いくつかの概念存在が非常に感心していましてね。人命を損ねるような介入をせず、しかし明確に現世に干渉できると言うことで試したがっているモノがちらほらいるようですよ」

「えぇ……?」

 

 大ダンジョン時代に対して大きな介入を、特にシステム側に睨まれるようなことをするわけでなく。しかし概念存在としてそれなりに干渉できるやりかたとしては、たしかに悪魔のやり口はかなり秀逸かも知れない。

 なんやかや大ダンジョン時代に直接触れてみたいってモノもそりゃいるんだろうから、まねっこしたくなる気持ちは分かるけど……うーん、ちょっとしばらくはそれされると困るかもなあー。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ふと思ったけどこういった”力を与える事が利益“といった契約って概念存在にとって長期的には不利益になる気がする(概念存在の復権とか考えてる過激派にとって逆効果の可能性がある…………) […
[一言]  そういえば概念存在が在るならサルの手なんかも存在するのかな?あれも一種の悪意ある生き物だし。
[一言] たとえ悪魔側の都合でほぼ無料とはいえ、悪魔と契約して好き勝手した末路は破滅なんだよなぁ
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