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よく考えなくてもソフィアなんて怪しさしか勝たん存在ですよね

 概念領域が総出になって動いてなお、未だ影すら踏ませないモノ。委員会の中核、初めて現世に介入しただろう概念存在。

 その不気味な存在感に自然と表情を引き締めていると、織田はワインを口にしながら軽く微笑んだ。

 

「──とはいえ、事態は確実に良いほうに向かっています。傘下組織の倶楽部が壊滅し、次いでサークルも危うい。他にも組織はあるのでしょうが、そろそろ委員会本体も動き出してもおかしくはない」

「向こうから、現世に仕掛けてくると?」

「可能性はあります。ぬらりひょん曰く、ダンジョンコアを利用してのなんでしたか、スレイブモンスター? についてのノウハウもすでに委員会に吸い上げられている、とのことですし」

「軍勢を率いようと思えばできなくはないってことか……」

 

 鬼島も取り調べの際、そんなことを言っていたな。委員会は倶楽部やサークル、果てはダンジョン聖教過激派の培った様々な技術を欲し、実際に倶楽部の保有していたノウハウについてはすでに取り込んでいる、とかなんとか。

 すなわち向こうにはもう、やろうと思えばモンスターハザードを引き起こせるだけの手札があるってことになるんだ。いつ動き出してもおかしくはないって物言いも、強ち間違いじゃないかも知れない。

 

 となれば今度の探査者認定式にも、スレイブモンスターがやって来る可能性は大きいな、やっぱり。

 ヴァールはある程度予期していて、それゆえに厳重な戦力配置を行っているけど……当たってほしくなかった予想だよ、正直。

 織田はさらに、特に俺を見据えて言ってきた。

 

「とりわけ山形公平。あなたは気をつけたほうが良い」

「俺? ……ああ、鬼島も言ってたけど天罰がどうのって話か? ていうかそんなことまでご存知なんだなあ」

「……天罰? なんの話でしょうか」

「え」

 

 あれっ、なんか話が噛み合わないぞ? 俺てっきり、こないだの取り調べの時に鬼島が脅しをかけてきた話かと思ったんだけども。

 なんだっけ、俺が大ダンジョン時代を持ち込んだナニモノかの一派であると見て、概念存在が天罰を下しに来るとかなんとかって話だったか。

 

 おそらく鬼島の関係している、委員会に属する概念存在達のことだろうから織田達は関係ないかなって思ってたんだけど、そのことについてじゃないのかな?

 困惑する俺がかくかくしかじかめんたんぴん! と説明すると、かの大神はなるほどと得心がいったのかうなずき、答えた。

 

「それでは強ちこちらの懸念とも外れてはいませんね……つまるところ山形公平、いえコマンドプロンプト。件の未知なる委員会の中核は、おそらくあなたに対して何かしら干渉してくるものと予想できるのです」

「何ッ、父様を!?」

「我らが救世主様をっ!?」

「えぇ……?」

 

 俺より早く反応して、俺より激昂したよ自称娘と伝道師さん。怖ぁ……織田も若干ビクってなってるじゃん。

 ていうか、たしかに話としては若干似てるな。鬼島属する概念存在による天罰と、委員会の中核たる概念存在による干渉と。

 どういうことかと視線で尋ねると、彼は続けて説明してくれた。


「私と同じですよ。このタイミングでついに現れた、大ダンジョン時代をもたらしたナニモノか。その関係者と思しきあなたを狙う可能性は高い。当然の成り行きでしょう」

「えっとー……それってつまり、委員会もシステム領域について調べたいってことですかー?」

「それはもちろん。彼らの究極目的は概念領域と現世領域の関係健全化。であれば、その根本原因とも言えるあなた方については草の根分けても探し続けていたことでしょうとも」

「ってことは、下手すっとこれまで連中が関与してたモンスターハザードも、オレ達を誘き出すために仕掛けてた可能性があるってわけか。赤鬼のやつもなんか言ってたもんなァ、そんなこと」

 

 こうして聞いてみると、赤鬼こと鬼島は存外ペラペラと喋ってくれたもんだなと変なところで感心してしまう。

 これまで度々、大ダンジョン時代に混乱をもたらさんと引き起こされてきたモンスターハザード。それら事件において少なくとも委員会が関係しているものについては、システム領域のモノを表舞台に引きずり出すために画策された部分があるみたいだな。

 

 モンスターやオペレータなど、大ダンジョン時代特有の現象や存在を悪用すれば……それをもたらしたものは必ず現れる、と。

 他にも目的はあるだろうけど、委員会の中枢にいるナニモノかにとってそんな目論見もあった疑いは大いにあるよね。


 実際、アドミニストレータ計画が実行に移されるまでの100年間、唯一現世にいたシステム側と言えるヴァールはものの見事にすべてのモンスターハザードに参戦してたって言うし。

 とはいえ疑問も残る。俺は織田の予想、推理に質問を投げかけた。

 

「ヴァール──ソフィア・チェーホワとともにある精霊知能のことだけど、彼女にはそういった概念存在がこれまで、接触してきた様子もなかったみたいなんだがそのへんどうなんだ? 彼女もシステム側な以上、大ダンジョン時代をもたらしたモノを誘き寄せるって言うなら早期の段階で彼女に接触していてもおかしくはないと思うんだが」

「委員会は委員会で、彼女を警戒していたのだと思いますよ。あからさますぎて、自分達を誘き寄せる釣り餌ではないのかと……概念領域は神々カテゴリにおいても、ソフィア・チェーホワに対しては露骨に疑わしかったからこそ手出しを控え、様子見をせざるを得なかったところはありますし。自分達も似たようなことをしているならばなおのこと、警戒するものでしょう」

「特に自分達もシステム領域を引きずり出すための撒き餌としてモンスターハザードを引き起こしているってんなら、余計に警戒していたってことか……」

 

 ワールドプロセッサにそういう意図があったかは疑問だけど、ヴァールを単独で現世に降ろし、目立つ動きをさせたことで結果的に概念領域や委員会に対しての牽制ができていたってわけか。

 普通に考えて、あからさまに怪しいのがWSOの統括理事にまでなるくらい目立ってたら、たしかに警戒しちゃうものなのかもなあ。

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― 新着の感想 ―
[一言] あからさまな不審者、モンスターと勘違いされたまま倒される悪魔、予想外に実力をつけていく探索者たちと委員会側にたって考えると不審と憎悪と困惑だらけになりそう そして最後に救世主シャイニング山形…
[一言] やはりソフィアさんは不審者なのか…… >システム領域のモノを表舞台に引きずり出すため 藪をつついて出てくるのはただの蛇じゃなくでウロボロスなんですがそれは
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