なんもかんも邪悪なる思念が悪い
思っていたのと違う! と叫びたくなるくらいにゴージャスな織田ことオーディンの現世での実態。
コンシェルジュさんまでついてるようなお高いマンションの最上階を、まるごと買い切って自分の所有物にしちゃうなんてスケール違いすぎるんだけど。
なんていうか、プルプル震えてぼんやり光るのが取り柄のシャイニング小市民くん的には、器の差を分からせられちゃってもう彼に会う前からお見逸れしましたって感じだ。
さすがは一神話の最高神だ……やることなすことド派手だものなあ。感心やら戦慄やらしきりだよ。
「織田様はこちらのフロアの中央部屋、謁見ルームにおわします。ご案内いたしますのでお付き添いくださいまし」
「え、謁見ルーム……普段生きていてまず間違いなく聞かないワードですね」
「このフロアだけでも20部屋ありますれば、謁見用、生活用、式典用、パーティー用などなど多数の用途に分けて部屋を使用しております」
「畏れ多くも我々従者にも数人に一部屋ずつ賜っております。さすがは我が君オーディン、いと高きにおわす北欧大神たる方のお振舞でしょう」
ひえー、この階だけでそんな部屋あんの!?
自慢気に、誇らしげに主のすごさを語る従者さん達だけどむしろ俺としては、このマンションのブルジョワ感をダメ押しに誇示された気がしてもうノックアウトだ。
すげえや、上流階級……いやまあ、これでもいわゆるタワマンとか億ションとかっていう大都市に存在してるという本気の本気、ガチで高級なお住まいに比べれば控えめなんだろうけど。
しばらく歩くこと数分。こんだけ大きいとフロア内を見て回るだけでも時間がかかる。
なんかフロア内に共有スペースとか談話室とか、果てはトレーニングルームとかまであってますます慄然としつつも……イヴさんはそして、一つのドアの前で足を止めた。
到着だ。
「こちらになります。謁見ルーム、この中に我らが至高の大神、オーディン様がお待ちになっています」
「ありがとうございます。たしかにいますね、織田……いえ、オーディン神」
「最高神にもなれば、さすがにかなりの気配ですねー」
「多少偽装してるみたいだが、それでも分かるってくらいの規格だなァ」
「……お分かりになるのですね。さすがです」
ドアの向こうからでも伝わる気配。間違いなく概念存在の、それも相当高等なモノの魂の波動を感じる。それもシャーリヒッタが言うように、多少の偽装など関係ないほどに強力な力だね。
そう告げるとイヴさんやダグルさん、ノットさんは微かに驚きに顔を染めた。まさか感知するとは思ってなかったのか?
というさすがって、織田から何を聞いているんだろうね、この人達。
まさかと思うけどシステム領域については話していまい。
それでも気になって部屋に入る前、尋ねてみると彼女達は冷静沈着さを取り戻しつつ、静かに答えた。
「オーディン様からは"我が盟友にして取引先、そしてこの世の何よりも軽んずるべきでないモノ"と伺っております」
「決して失礼のないように、仮に貴方様方の怒りを買えばその時には大神自ら誅すると……そう厳命を賜りました」
「こうして公平様やお連れ様と短いながら接して、その理由が痛いほど分かりました。あなた方はどこか、現世領域とも概念領域ともつかない何かしら、より大きなモノの気配を感じます。我らが偉大なる大神が、盟友としたことに心から納得していますよ」
「そ、そうなんですね……」
淡々と、けれどどこか微笑みを湛えて言ってくる三人に、むしろこっちがドン引きである。
織田としては決して粗相がないようにしたいのは分かるけど、俺らの怒りを買ったら誅殺するね宣言はなかなか過激すぎて怖い。
でもまあ、向こうからすれば俺達システム領域ってそう見えちゃうか。早い話、目の上のたんこぶも同然だもんな、彼らの存在意義的に。
本来、概念存在こそが人格を持った世界の管理者たるべきだったのを、ある時突然意志なきシステムが心を持って勝手に動き始めたのだ。
システム領域についてもそれなりに知識のある創造神クラス的には、さぞや鬱陶しいだろうとも。
最高神にさえその存在を隠し、話さないでいるのも理解できるよ。
もっともそのおかげでこちらも、未だ我々の存在を大きく露呈することなくやって来れているわけなのでウィンウィンではあるけどね。
ともかくそんなレベルの存在について知り、しかも協力者の立場になっちゃった織田だから気にしすぎなくらい気にしてもそこは仕方ない話だと言えた。
大体すべて邪悪なる思念が悪い、ということで彼にはどうか理解と納得いただきたいところだね。
『なんでだよ! なんでもかんでも僕のせいにするな、嫌ならさっさと人格手放してただのプログラムに戻れっての!! いや戻られたら僕も困るけど現状!!』
脳内のアルマさんが騒ぐけど実際、諸悪の根源なんだよなあ。
今さら妙な言い逃れをしないように! とだけ言って、とにかく俺達は案内されるがまま、開かれたドアの中──
オーディンの待つ謁見ルームとやらに入っていったのだ。
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