神の居城(ギリギリタワマンじゃないくらいのマンションの最上階)
「山形公平様と、お連れの方々とお見受けします。我々は至尊なる主君、織田様の命によりみなさまをお迎えに上がった者です」
「アッハイ。ご丁寧にどうも……」
いきなりなんだけど怖ぁ……町中でいきなり見知らぬメイドさんと執事さん達に深々頭を下げられる恐怖よ。
周囲の方々の目が怖い。案の定みんなこっち見て、俺の顔や香苗さん、リーベに見覚えがあるのか次々になんかこう、ああ、なるほどね。みたいな顔をしてらっしゃるし!
「シャイニング山形……ついにメイドや執事まで持ったのかあ。あの年でいい趣味してるぜ」
「ていうか伝道師さんとアイドルリーベちゃんまで一緒じゃん! え、ヤバ。もう一人の子もチョーかわいい! メイドさんとか執事さん達もイケてるし、シャイニングさんは……うん」
「チラ見えしてる鎖骨が眩しい……!」
「御堂さん、俺ファンだったのになあ……ずいぶん遠くに行っちまったなあ……」
あまりにも容赦のない近隣の方々のひそひそ話に震える。
目の前の浮いてるメイドさん方は俺の関係者じゃないから趣味じゃないし、俺のこともイケてる判定下してほしかったし、鎖骨チラ見え眩しいさんはマジ怖いから止めてほしいし。
香苗さんのファンの方? ……そうですね、ずいぶん遠くに行っちゃいましたね彼女。元凶だろう俺からはなんとも言えないや。
とまあそんな感じの周囲の反応を耳にしつつも、やって来た3人を見る。
揃って海外の方みたいで、メイドさんは白磁の肌、銀に煌めく長髪をシニョンにまとめた可愛い系の美人さん。
執事さん方はそれぞれ線が細いながらも鍛え上げた肉体をしている様子の、アイドルめいたイケメンさんだ。
ただ、三人とも職務に忠実なんだろう、無表情のままだね。
織田の命でやって来た迎え。つまりはこの人達が、彼の現世での居城まで俺達を案内してくれるということだった。
「ええと、いかにも僕が山形公平です。こちらは御堂香苗さんと、リーベ・山形とシャーリヒッタ・山形。揃って今回の会談の場において、僕の付き添いの形で同行してくれます」
「公平様にリーベ様、シャーリヒッタ様。そして香苗様ですね。香苗様におかれましては山形姓の方をお名前でお呼びするのに合わせての呼び方でよろしかったでしょうか?」
「ええ、構いません。お気遣い感謝します。ええと……」
俺達をいきなり名前で呼ぶメイドさん。現世に倣ってリーベやシャーリヒッタも山形姓をつけて紹介したから、山形が3人も被っちゃったわけなのでまとめて下の名で呼ぶことにしたんだろう。
その煽りを食うっていったらおかしな話だけど、香苗さんも下の名前で呼ばれた。もちろん丁寧に確認を取るメイドさんに、彼女も否やはなく応えた。
都合、今度はメイドさん方のお名前を聞く段になる。
彼女らはまたも一礼して、優雅にそれぞれの名前を告げた。
「申し遅れました。私は織田様の従者筆頭、レギンレイヴ。イヴとでもお呼びください」
「同じく織田様の執事、ダグル」
「ノットです。以後お見知りおきを」
「分かりました、よろしくお願いいたします。あ、こちらお土産のクッキーです。よろしければどうぞ」
メイドさんことレギンレイヴさん、通称イヴさん。
執事さんのお二人はダグルさんにノットさん。
それぞれ名乗るお三方に俺達も挨拶してお土産品も渡したりなんかして、そうしてから案内を受けることとなった。
なんでも織田の居場所はここからでも見える、湖岸沿いにある一番大きくて新しい分譲型マンションの最上階全部らしい。
つまりは1フロア丸ごと買っちゃったらしいのだ。これには俺もビックリして、彼の元に向かって歩きがてら、イヴさんからお話を聞かずにはいられなかった。
「最上階丸ごとって……すごいことしますね。相当なお金がかかったでしょうに」
「当初はマンションそのものを買い取る方向で織田様はお考えでしたが、諸々の事情から最上階だけになさいました。かのフロアは現状、現世におけるヴァルハラとなっております」
「普通にどこか土地とか買って、屋敷なり豪邸なり立てたほうが良さそうな気もしますねー……まあでも、それだとこんな短期間にやって来れたりしませんかー」
「そのあたりにつきましてもおそらくは、直接会った際にお話をされるかと存じます。何しろ織田様は今日という日、山形様の御来訪を心より待ち望んでおられましたので」
リーベの気兼ねない言葉にも丁寧に答えてくださる、イヴさんてば無表情ながらしっかり対応してくる良いメイドさんだなあ。
件のマンションの入口に到達して、そのまま中に入る。なんとここ、いわゆるコンシェルジュさんがいてフロントで俺達を迎え入れてくれたりしてきた。
ブルジョワかよ〜。
そしてそのままエレベーターに乗り込むわけだけど、これがまた広い! 七人乗っても全然余裕の広々サイズだ。
しかも上昇速度も早く、でも全然揺れない。最上階は20階みたいなんだが、めちゃくちゃ早くに到着しちゃったよ。
もうこの時点で俺の日常とはかけ離れたセレブリティをいくつも感じさせられている。思わず感嘆の吐息だよ。
「すごいな……こんな豪華なマンションの、一階層を丸々買ったなんて世界観が違う感じだわ」
「とはいえ資金的には公平くんもそのくらいはできるのでは? 毎回の探査でも相当稼げるでしょうし」
「それはそうかもですけど、なかなか使うあてが……」
香苗さんの言葉に苦笑を漏らす。
貯金自体はかなりあるんだよね、俺。ただ残念ながら、収入に見合ったいわゆる大きなお買い物ってやつはどうにもしづらくて二の足を踏みまくっているのだ。
お金は使ってなんぼだってのは、わかる理屈なんだけどねー……小市民な一般ピーポー山形くんには、なかなか縁遠い世界だよ。
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