この織田すごいフッ軽だよ!さすが北欧神話の最高神!
織田、もといオーディンとソフィア・チェーホワWSO統括理事の二者会談──転じてそれこそは神々と現世の同盟締結の証なり。
突拍子もない話に思われるかも知れないけれど、仮に彼女が俺と一緒に彼の元を訪れた場合にはそう解釈するモノが必ず出てくるだろう。
断言する俺に、電話越しのソフィアさんは戸惑いの声を上げた。
『そ、そんな……ことは、ないとは言い切れない、のでしょうか? 多少飛躍した危惧にも思えますが、仰りたいことはよく理解できます』
「残念ながら確実にそうなるでしょう。俺達を監視しているモノは今のところいなさそうですし、いたら返り討ちにしますけど……織田のほうはおそらく、その一挙手一投足が注目の的でしょうし」
オーディンが長期滞在、なんてそれなりに注視されているだろう。一神話の主神が何を思ってか現世に住み込みだなんて、目立たないはずもないしな。
少なくとも同カテゴリである神々については、間違いなく彼の動向を観察しているはずだ。大ダンジョン時代と距離を起きつつもなお、こちらをチラチラ見て気にしている様子なのはこの国の神話勢のスタンスからでも明らかだからね。
で。仮にソフィアさんを伴っての対談を、そんなふうに観察しているモノ達に気取られたりした場合には間違いなくこう解釈される──北欧神話が、現世となんらかの密約を交わした、と。
神々じゃなく悪魔、妖怪あたりの耳にでも入ったらもう終わりだ、北欧神話どころか神々全体の話にまで拡大解釈されるだろう。
「何しろ悪魔はともかく妖怪なんか、自分達こそがカテゴリ総出で倶楽部に与していましたからね。悪魔も多少は絡んでるとして、自分達がやってるんだから向こうもやっている、なんて考えるのは心理的にもありがちでしょう?」
『それ、は……』
「神々が自分達に対抗する形で現世の、探査者側についた。そう判断されてしまえば、妖怪はもう大ダンジョン時代に関わることができないため、基本的な構図としては神々と現世vs悪魔とサークル、ダンジョン聖教過激派という構図になります」
『現世を使っての、代理戦争めいた形になりますね……!!』
戦慄したような引きつった声。百戦錬磨のソフィアさんをしてここまでの反応を示させるのは、彼女がやはり人間であり、現世やシステム領域については多少詳しくとも概念領域についてはあまり知らないというのが大きいのだろう。
残念ながら彼女の言う通りだ。神々が現世に与したと悪魔が判断すれば、即座に首都圏での戦いの規模が概念領域を二分しての大戦にまで発展する恐れがある。
同時にそれは現世における秩序側とサークル、過激派との衝突が神々と悪魔をそれぞれ擁立しての、代理戦争の形にまで落とし込まれてしまうのだ。
いろんな意味で冗談じゃないよね。やるならせめて概念領域の中だけでやっとけってな話だよ。
「……とはいえ神にしろ悪魔にしろ、現世を巻き込んでの衝突はなるべく避けたいと思っているはずです。でなければ神々はここに至るまで静観を決め込んでないですし、悪魔だってもっと大っぴらに介入してきている」
『それにそもそも、大ダンジョン時代自体が概念存在にとっては謎に満ちた脅威。手を出すにしても火傷をしない程度に留めたかったのだとは、私にも分かる話です』
「ですね。だから正直、織田のフットワークの軽さには驚いてるところはありますよ、俺も」
そも神と悪魔は概念存在としての意義的にも対立構造にあるからな。大義名分があればすぐにでも開戦したっておかしくない。
あるいは神々はそれを危惧して引きこもっているのかもしれないほどだ。いやまあ、そうなると織田の動きが意味不明すぎるんだけどね。わざわざ火中の栗を拾いに行ったようなもんだよこれ!
単純に知的好奇心の旺盛さ故の行動なんだろうけど、なかなか大胆なことをしてみせたものだよ、オーディン。
邪悪なる思念が健在だった頃に接触しなくて良かった的なことをこないだ言った気がするけど、ぶっちゃけ今のタイミングでも大概まずいんだよねと。最近気づいた俺も俺だが、織田ももちろん織田である。
「まあ、というわけで……神々も悪魔も互いに現世を巻き込んでやり合うつもりもないと思われるところを、ソフィアさんが出向いちゃうと、そしてそれを知られると収拾がつかなくなるかも、と。そういう懸念がありまして」
『そうでしたか……理解しました。申しわけありません山形様、無知ゆえに浅はかなことを言ってしまいましたね』
「いえいえ! すみませんこちらこそ、せっかくのお申し出をお断りする形になってしまって!」
恥じ入るように謝るソフィアさんに慌ててフォローを入れる。彼女に悪いところなんて一つもないのだし、むしろ断る側のこちらこそが謝らなきゃいけない話だよ。
概念領域についてまではさすがにあまりご存知ない以上、ソフィアさんが神と悪魔、織田と現世の関わりについて把握しておくというのは無理がある。
統括理事としての使命を果たそうとされていた彼女を、それでも止めた者として……せめて精一杯の謝意と誠意を込めて俺は言った。
「ソフィアさんの責任感、使命感を決して無下にはしません。事前にこうして連絡したのも、先にソフィアさんから織田へ質問なり伝言なりがあれば代わりに伝えようと思ったからです」
『山形様……』
「先程述べた事情から、来ていただくのはお控え願いたいですが、代わりに俺があなたの分まで話を聞きに行きます。いわば名代のようなものとご理解ください」
『……お気遣いいただきありがとうございます。そう、ですね。それでしたらいくつか、私のほうから聞きたいことがあります』
ソフィアさんの分まで、俺が織田と話をしに行く。
そう告げれば彼女の声も多少、明るいものに変わってくれた。
少しは元気を取り戻してくれただろうか? だとしたら安心するよ。
ホッとしつつも俺は、ソフィアさんからの織田にあてた質問について聞き取りしていくのだった。
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