タッグバトルだ!救世主と伝道師
俺の探査者証明書を見てひとしきり騒いだ香苗さんパーティの御三方。落ち着いたところでまたぞろ、次の部屋に向けて歩き出したわけなんだけども。
道中でもやはり、俺についていろいろと話題になっていたりする。よほどインパクトがあったみたいだね、俺ちゃんのステータス。
御陵さんがどこか間延びした調子でつぶやく。
「いやあビックリした~。そりゃ大ダンジョン時代始まって以来最高の天才とか言われるわけだよお」
「えぇ……?」
そんなこと言われてるの? 天才だなんてそんな、山形くんとは一番縁遠い単語でしてよいろんな意味で。
そもそもどこ界隈で言われてるんだって話なんだけど、どうやらこれが結構、洒落にならないところから言われているみたいだ。
横山さんが俺の困惑に答えてくれた。
「ネットで動画配信してるS級やA級の方、主に海外勢が相当評価してるよ君について。あとうちの師匠はじめ、日本国内のS級の人達も反応してる」
「そ、そうなんですか……」
「大体、今じゃネットの反応も大多数が君の天才性を認めてるからね。人脈、功績、そして昇級スピード……強さについてはさすがに半信半疑な人も多少いるけど、それにしたって最低限只者じゃないってのは伝わってるだろうし」
「俺達も正直、ちょっと侮ってたところはあったしな! まあさっきの戦いとステータスを見せてもらって、そんなのはどっか吹っ飛んじまったが!」
鈴木さんも快活に笑う。まあ、俺の強さを確認したいから一緒に探査しようって言ってきた時点で疑いというか、ちょっと信じられないとは思われてるだろうなってのは分かってたかな。
というか信じられるはずもないって自分でも分かるしね。だから今言われたような、S級さんからネットの皆様に至るまで概ね評価いただいている現状が中々に信じ難い。
これはひとえに香苗さんの、救世の光の活動の賜物なんだろう。こればかりは感謝するしかないよね、いつもありがとうございます。
伝道師さんに視線をやると、歩きながらの彼女はムフー! と鼻息も荒くドヤ顔で笑みを浮かべていた。ああ、句読点が飛びそう……
「当然の反応ですそれがまさしく正常な状態なのですいえむしろまだまだ足りていませんあまねく世のあらゆる世代時代場所性別年齢国籍思想哲学階級身分あり様問わずにすべての人々が我々の救世主様たる山形公平様を信じ奉りその御威光に救いを求めるこれこそが我々救世の光が提案するこの世の理想郷でありそれをもって人々は新たな領域へと進めるのですすなわち救世主様の教えを正しく受け取り理解し護り伝え広めていくことこれこそが救世主神話伝説が辿り着くべき約束の地とも言える光景なのです! おわかりいただけますね!!」
「怖ぁ……」
何一つお分かりいただけないと思うんですよ香苗さん! 案の定句読点さん達がどっか行っちゃって、大変な勢いでまくし立ててくる。
パーティメンバーのみなさんはもう慣れているのか笑って済ませてるけどそれってつまりは慣れちゃうくらい体験してるってことなんだよね。怖ぁ……
とかなんとか言ってるうちに次の部屋に辿り着く。部屋には今度は結構モンスターがいて、おもにB級モンスターであるところのアゲハペンギンが部屋内に10数匹、群れてヨタヨタ歩いている。
アゲハ蝶のような模様をしたペンギン、ゆえにアゲハペンギン。可愛らしくて人気のモンスターなんだけど、反面気質は凶暴で攻撃も残虐なのだと言う。
横山さんが解説してくれた。
「ペンギンってのは実は口の中、おろし金みたいに鋭い歯がビッシリなわけなんだけどアレも同様でね。しかもミサイルみたいに飛ばしてくることもある」
「遠距離攻撃もしてくるってことですか」
「挙げ句に群れで動くから連携もそこそこしっかりしてくる。半分が遠くから歯を飛ばしてきてこちらの足止めをする間に、もう半分が横合いから噛みついてきてそのまま頸動脈を切断、なんてのもなくはないとか」
「社会性があるモンスター。厄介ですね」
ペンギンったら大体可愛い動きをするんだけど、アゲハペンギンは戦闘となると何一つ可愛くないみたいだ。
足止めしつつ別働隊で一撃必殺狙ってくるってとんでもないよ、殺し屋だろもはや。
そんな恐ろしいアゲハペンギン達は群れで身体を寄せ合いながら、すでにこちらを把握しているようでチラチラ見てきている。
縄張りたるこの部屋に入ったら即、襲いに来るかもしれない。さてどうしようか。
「ちゃっちゃと済ませるなら俺が行きますよ。範囲攻撃で一網打尽にできますし」
「それか御堂の《光魔導》だな。俺の《水魔導》は実のところ、単独だと範囲攻撃がちょっと苦手なんだ。できなくもないけど、2人に比べると手間は食うと思うし、わざわざ御堂とまたコラボってのも芸が無い気はするなあ」
「ふむ……それでは私と公平くんの2人でいきましょう。救世主様と伝道師のタッグです」
この場にいるメンツで広範囲攻撃を持つのはやはり後衛のお二人とオールレンジ対応、一家に一台山形くんだ。
とはいえ鈴木さんにとっては苦手分野みたいで俺か香苗さんの二択になる。時間があるなら鈴木さんでももちろん良いんだけど、なるべくさっさと済ませたいところはあるからね。
そんなわけで俺と香苗さんのタッグで今回は戦うことになった。香苗さんが提案したのなら俺からは異論はない。
初めてかもしれないタッグバトル……さあ、始めようか!
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