特定個人への誹謗中傷が記載された称号欄なんてお見せできるわけがない(正論)
特に問題なく敵をやっつけた俺ちゃん。部屋の中央付近に佇む俺へ、香苗さん達が近づいてきて労いの言葉をかけてきてくださる。
毎度、俺の探査についてきてくれている香苗さんはともかくとして後のメンバー、横山さんに御陵さんに鈴木さんは驚きが顔に張り付いている。唖然って感じだね、まさに。
「お疲れ様です! さすがです公平くん、素晴らしい手際でした!」
「お、お疲れ……いや、疲れてもないか。あれだけあっさりと、スライムを捏ねるより簡単にゴールドアーマーを倒すなんて」
「ありがとうございます香苗さん、横山さん。いえまあ、さすがにアーマー系モンスターは面倒だなって思いました、ハイ」
うーん、あっさりと言われるとそりゃあっさりなんだけど、それを自分でも肯定するのはなんだかイキってるように思われそうで反応に困る。
一応B級、とはいえデビュー半年未満の新人がゴールドアーマーを即座に倒したのは、彼らにとってよほどのことだったみたいだ。
香苗さんの伝道は受けているって話だけど、まあ内容が内容だからね、信憑性なんて皆無か。どこの世界にそんな、救世主とやらがいるのかって話だからね。
それでも、目の前で起きたことがすべてだ。
御陵さんに鈴木さんも、口々に信じ難そうな顔をしながらも言ってきた。
「いやあ……スゴイね、本当。カナちゃんや鈴山くんの言うことを信じてなかったわけじゃないけどさあ」
「あ、ああ……マジヤバイな。ち、ちょっと探査者証明書見せてもらってもいいかな? 超気になる」
「あ、見たい見たい! 救世主くんのステータス私も見たーい!」
「えっ」
まさか、ってほどではない。ないんだけど唐突な言葉に焦る。
さっき俺も、みなさんの証明書見せてもらったんだから次は俺が見せる番だ。その理屈は至極真っ当で文句のつけようがない。
ないんだけど……み、見せるのか! アレを!
過去、多くの人をドン引き方向で感嘆させていた俺のステータス。それがまたしても衆目に、しかも香苗さんのお仲間さん達の目に触れるというのか。
瞬間、俺は心の中で瞑想した。もはや瞑想スイッチの入れ方が分かっちゃったもんだから、目を瞑らずとも心をフラットにできちゃうよ。平静な精神状態を整えて、俺は自身の探査者証明書を出した。
「こ、こちらになります……どうぞご査収くださいませ……」
名前 山形公平 レベル989 B級
称号 非記載申請認可済
スキル
名称 風さえ吹かない荒野を行くよ
名称 救いを求める魂よ、光と共に風は来た
名称 誰もが安らげる世界のために
名称 風浄祓魔/邪業断滅
名称 ALWAYS CLEAR/澄み渡る空の下で
名称 よみがえる風と大地の上で
名称 目に見えずとも、たしかにそこにあるもの
名称 清けき熱の涼やかに、照らす光の影法師
名称 あまねく命の明日のために
名称 風よ、遥かなる大地に吼えよ/PROTO CALLING
名称 神魔終焉結界─天地開闢ノ陣─
「!?」
「え、何、これ何? ……えぇ?」
「レベル!? 称号!? スキル!? ……ステータス!?」
「ステータスそのもの!?」
ほら見ろ案の定だよ3人とも固まっちゃった!
鈴木さんに至ってはツッコみどころしかない証明書にもはや、ステータスそのものへツッコむ始末だ!
レベルとスキルは言わずもがな、そうだね高すぎるアンドポエミーすぎるだね。そこは俺も理解できるよ。
あと称号についてだね。この"非記載申請認可済"ってのはもちろん俺の称号じゃないよ。これは諸事情により称号記載を避けたい探査者が、全探組を通じてWSOに申請して承認をもらうことで可能になる、非記載状態のことだ。
これについては最近、B級になったあたりで申請して即座に承認をもらったのだ。なんせ統括理事様に直談判したからね、早いよいろいろ。
主な理由はもちろん、俺の称号が傍から見て意味不明さの塊だからだ。今や完全にワールドプロセッサからのお便りコーナーと化している以上、世間様に触れさせて良い欄じゃないなーとは前々から思っていたからね。
今の俺の称号はたしか《誰が誰との漫才ですかおぞましい》だったかな。システム領域に還った時にわざわざ送ってきた、アルマとのやり取りを漫才なんてからかった時のコメントだ。
ジョークみたいでしょ? これ世界維持機構のお言葉なんですぜみなさん。こんなの誰にも見せられないよね。
こんな感じの称号がしかも、結構な頻度で送られてくるんだ。一々その度に証明書を更新なんてとてもじゃないけどしてられないってのもあり、もういっそ非公開にしてもらったわけだね。
「初めて見たぜ、称号非公開なんて……」
「ち、ちなみに名前だけ! 名前だけでも教えてもらえないかなぁ?」
「えっ……いえその、それもちょっと……」
名前こそ教えられないんだよなあー! 効果とか普通に"なし"なんだよなー!!
明らかに好奇心を抑えきれない、ワクワクした様子の横山さんと御陵さん。鈴木さんもだね、ソワソワしてるよ。
でも悪いけど教えられないのだ。というか教えようがないし教えても信じてもらえないと思うしね。
「みなさん、そこはプライバシーですよ……とはいえ私も気になるのは事実。どうです公平くん、事情を知る私にだけはこっそり教えていただけませんか?」
「えぇ……?」
ああっ香苗さんまで興味津々だ!
しれっとメモ帳片手に瞳を輝かせる我らが伝道師さん含め、先輩達に俺は無理でェす!! と叫んだのだった。
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