ガワは物理で中身は浄化で。救世主のお手軽アーマー系モンスタークッキング教室
階段を降りて地下二階、3部屋目、お次は俺がソロで腕前を見せる番だ。
見えてきた部屋の中には一体だけ、ゴールドアーマーがいて俺達を見据えている。格好良い佇まいで、見た目もあって本当に騎士みたいだね。
こうなると一騎打ちの形になる、好都合だ。
もとより俺はソロ探査者、遠距離攻撃から広範囲攻撃もこなせるけどやはり本領は近接戦闘だからね。
スキル《風さえ吹かない荒野を行くよ》は当然発動している。今回はソレに加えて《誰もが安らげる世界のために》の倍率も20倍程度にしている。
他にもモンスター特効やらなんやら含め、バフの総合倍率は素の50倍ってところかな? この時点でもう、大概のモンスターには当たり負けしないだろう。
香苗さん達を置いて1人、部屋へと進み出る。
「さて、いよいよ直に見られるか。わずか半年足らずで新人世代の象徴ともなった天才の、戦いぶりを」
「私らはカナちゃん世代でしょー、それより一個下、大体4年前から2年前くらいまでの世代が愛知世代って呼ばれてるでしょー。で、それ以降とたぶん来年くらいまでにデビューする新人さん達がまとめてシャイニング世代って呼ばれるわけだねえ」
「弱冠16でS級入りした愛知九葉も大概おかしいが、たしかあの子でも3年はかけてたからな。山形くんは今のペースだとそれより早くS級になるかもしれないわけだ。ったく天才ばかりだな最近の若いのは!」
「お前も若いだろ! もちろん俺らもだけど!」
俺を背後から見守りながら実況めいたコメントをしていく横山さん達。特に最近の若手事情について軽く触れられているけど、聞き耳を立てる俺としてもへー、そうなのかー。ってなる話が多い。
今から遡ること7年前から5年前くらいまでの間にデビューした探査者達がまとめて御堂世代と呼ばれていることは知っていたけど、それ以降の世代にもちゃんと? 通称があったんだね。
4年前から2年前までの3年間を愛知世代──史上最年少のS級として名高い愛知九葉さんに由来してそう名付けられているらしい。
13歳で探査者デビューしたみたいだね。類稀なる召喚スキルを用いるとか、首都高神話生物ジョッキーだとかいろいろ話を聞くけどその人も今度の認定式には姿を見せるとかなんとか。
コマンドプロンプトとして、そこまで才能に溢れるオペレータというのは正直興味がある。
お会いするというか遠目から見る程度だろうけど、確認できるのが楽しみといえば楽しみだよ。
で、その愛知世代以降。去年から現行にかけての若手世代を不肖私、シャイニング山形から取ってシャイニング世代などと言うそうです。
せめて山形世代にしてほしいなあ……御堂世代、愛知世代ときていきなり横文字だもの、光り輝いているもの。俺の探査者界隈での立場も重なってどうにも浮いてる感じが半端ないよ。
「ヴァールにでも頼んでどうにかしてもらえんかなあ……いやでも世代の通称はあくまで非公式の俗称だし、WSO的には認めてない呼び方だから言ってもしかたないよなあ。はあ」
「────!!」
「とか言ってる間にやっこさん来ちゃってたりなんかしちゃったりして、と」
いわゆる時の権力者、WSO統括理事様になんとかしてもらえんもんかと一瞬、考えたものの。さすがに非公式の呼び方までWSOにどうこうできるわけないよねーと思いとどまる。
言ってる間にゴールドアーマーさんが向かってきてるし。鋭い踏み込みで素早く剣を振り上げ、俺に向けて斬撃を放ってくる。
そうなると俺としてもまあ当然、反応はするわけで。
振り下ろされた剣の柄、握る手をすかさず掴んで体勢を入れ替える。一本背負いよろしく敵の胴体を背負いこむ形に、即座に整えた形だね。
そしたらそのまま軽い力で、というか振り下ろしてきたゴールドアーマーの勢いを利用して背負投げるだけだ。いわゆる柔道なんだけど、合気めいた技法も取り入れていて身体への負担も少ない。
ビターン! と地面にモンスターを叩きつける。
「!?」
「ダブルアーム──スープレックス!」
後はこっちのもんだ、衝撃に体勢を崩したゴールドアーマーの両腕に組み付き、頭部を俺の胸元に潜らせてスープレックスの体勢に。
俺のフェイバリットホールドとも言うべきかな、お気に入りの技、ダブルアーム・スープレックスだ。組み方から投げ飛ばした後のブリッジまで含めて綺麗なんだな、これが。
今まで多くのモンスターを仕留めてきた技を今、また放つ!
「ぬぅぅぅうん!!」
「────!?」
思い切りの勢いで身体全体を逸らして敵を、背後の地面に叩きつける! 勢いで首、両腕がグシャリと潰れたのを確認して俺はすぐホールドを外し、立ち上がり敵に向き直る。
致命傷だ……だがアーマー系モンスターはこれで意外にタフと言うか、ガワの鎧を痛めつけるだけでは効果は薄いからね。
中身、ガス状の物体こそが本体、核とも言える部分であり、倒すためには鎧ごとガスまで切り裂くなりなんなりして散らさなければならないのだ。
「《あまねく命の明日のために》。ゴールドアーマー、その身に宿る魂よ──今こそ浄化の時だ」
「────」
と、いうわけで毎度おなじみ山形くんビームを右腕から放出。勢いよりは優しい感じに、まさに浄化光線って感じの光を放つ。
静かなソレを受け、光の粒子に変じていくゴールドアーマー。どこか安らかな雰囲気なのが、俺にとってはどこか救いだ。
さあ。まつろわぬあなたの魂を今、この世界の輪廻が受け入れます。
どうか安らかに。そして次なる命の旅を、どうぞ健やかに──
祈るような想いを込めて、ゴールドアーマーを見送る。
何ら問題ない勝利。後ろの横山さん達が唖然とした視線を向けるほどのスムーズさで、俺はこうしてモンスターを浄化した。
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攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど
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