いろいろ複雑な?A級探査者の実力事情
遅れました、すみません!
放たれる水の砲弾。最初の戦闘時に放った技、ええとソーラー魔滅? よりは小粒だがその分、数が多い。
マシンガンさながらにばら撒くそれが、にわかに突進を仕掛け始めていたブルオークの足元付近に着弾しては水飛沫をあげる。直撃よりも先に牽制を、足止めをしたのか。
「《剣術》、振動剣・マグニチュード5!」
「《斧術》! ビッグトマホーク!!」
続けざまに横山さんと御陵さん、2人の前衛による攻撃が入る。今度は斬りかかるのではなく遠くから、距離を置いてのミドルレンジアタックだ。
さすが、A級ともなると近距離専門の方でも遠距離対応は普通にしてくるな! 横山さんは地面に突き刺した剣にて《振動》を放ちブルオーク達の足下まで衝撃を飛ばしているし、御陵さんに至ってはそのまんま、大斧を投げ込んでいるし。
「ブルルルルルァァァ!?」
「ブルォォォォアアアア!!」
鈴木さんの攻撃に足を取られたモンスター達は続け様、横山さんの振動を受けて体勢を思い切り崩した。
元より前傾姿勢で不安定な体幹なんだ、ここまで足下を狙われて転ばないはずもない。
そこに御陵さんの斧が鋭く横回転をしながら襲いかかってくれば、これはまさしくひとたまりもないってやつだ。
ブルオーク2体、仲良く地面に突き刺さった己の牙を横薙ぎにされ、見事なまでポッキリとそれらを切り取られしまった。
またしても連携の妙。俺は思わず叫んだ。
「上手い!」
「ブルオークの武器は事実上あの牙のみ。それゆえにアレらと戦う際のセオリーとしてはまず、牙をへし折ることが先決とされていますね」
「つまり先に武装解除させて無力化するってことですか……」
B級モンスターもさすがにこの100年、大ダンジョン時代が続く中で研究が進められて攻略に際してのセオリーが作られている。
今、目の前で行われた連携とはそのセオリーを完全に踏襲したものらしかった。バランスの悪いブルオークの足下から崩し、次いで武器を奪い無力化して仕留める。
なるべく被害を最小限に、リスクを最低限に。
ダンジョンを無理なく安全に踏破するために考え練られた方法論の、無駄のない美しさというものを俺は感じていた。
さらに香苗さんが続けて言う。
「そしてトドメは鈴木の《水魔導》。水鉄砲と名付けた技ですね」
「水鉄砲……たしかに水鉄砲ですけど、威力は折り紙付きですね」
「A級ですからね。加えて先程も言いましたが鈴木は一人、武者修行めいた形でソロ探査を日常的に行っています。それもあり、私達世代の中でも実力は高いほうにありますね」
「レベルも、横山さんや御陵さんに比べて高いですしね。ランレイさんやアンジェさんとまではさすがにいきませんけど、A級上位扱いも目前ってくらいですよね、たしか」
探査者証明書をチラ見しながらつぶやく。横山さん、御陵さんがレベル400代前半なのに比べて鈴木さんはすでに494とやや高めのところにいる。
これは今やA級トップランカーに近しいと目されるアンジェさんにさえ届くほどだ。つまりは鈴木さんもA級探査者の中において、上澄みに位置しているってわけだね。
「HIT YOUR CORE・魔滅! ──いやーさすがにアンジェリーナ・フランソワさんやシェン・ランレイさんを比較に出されるとキツいぜ。普通にA級トップランカー目前の二人じゃないか」
「っていうか山形くん、あの2人と知り合いなんだ? さっすがあ!」
「御堂世代の探査者において、御堂を除けばあの2人だけは別格扱いだしなあ。なんか最近はコンビ組んでるんだろ? 御堂も負けてられないな」
追撃の水鉄砲を放ちつつ、俺と香苗さんの評にコメントする御三方。やはりと言うべきか、アンジェさんランレイさんは同世代の中でも頭抜けて強い扱いをされているらしい。
レベルだけでなく、その他様々な要因で力関係は変動するからなあ。極端なケースはもちろん俺自身なんだけど、スキルや称号による補助や戦闘経験、培った技術で総合的な強さってのは決まる。
そういう意味ではやっぱり香苗さん、アンジェさん、ランレイさんこそが現状、同世代の中ではトップ3なんだろうな。
感心しながら納得しつつ、今しがた鈴木さんが放った水弾が見事、ブルオークの胴体を貫くのを見る。
今度のはそれぞれ一発ずつ、小さいながらも鋭く尖った槍のような形状で、スピード特化なのかすさまじい速度で武器を失い体勢を崩した敵を貫いた。
合体技は置いといて、牽制技にピンポイントで敵を穿つ速攻技か。この分だとおそらくはパワー特化の技もあるだろうし、さすが魔導系スキル保持者だ、こと戦闘においては隙の少ない立ち回りができる鍛え方をされていらっしゃる。
「ブルァッ──!?」
「ブェェェェェッ──!!」
「いようし一丁上がりっと! さすがにブルオークは連携で相手すると仕留めやすいな!」
断末魔の叫びを上げて粒子になるモンスター達。それを見て油断せず構えたまま、しかし口振りでは豪快に勝利宣言をする鈴木さん。
そのまま横山さん、御陵さんと並んでこちらにやってくるのを見ながら俺は、今の戦いの感想を率直に香苗さんに伝えていた。
「危なげない、安定かつ圧倒的な勝利でしたね。さすがはA級、さすがは香苗さんのパーティメンバーです」
「お褒めに預かり光栄です。彼らも日々、精進は重ねていますからね。安心して頼りにできる、同期の面々ですよ」
優しく微笑み、誇らしげにそうつぶやく香苗さん。
やはり彼女としても同期、同世代、ましてや同じパーティメンバー。思い入れはあるってことだろう。
仲間を自慢するような素振りに俺もまた、微笑むのだった。
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