行け鈴木!水鉄砲だ!!
横山さんと御陵さんのステータスを見せてもらったあたりで次の部屋に辿り着いた。
残る鈴木さんについてはモンスターを倒してから見せていただくことになるかな? と思ったんだけど……当の御本人さんが何やら俺に証明書を投げ渡してきて、爽やかに笑って言ってきたのだ。
「次は俺だな! 御堂、彼に解説してあげてくれ! ここは3人で受け持つから!」
「分かりました。鈴木の場合《水魔導》の説明からしてやや煩雑ですからね」
「おうよ! さすがに人様に説明しながら戦えるほど器用でもなけりゃ腕が立つわけでもないからなあ!」
部屋に飛び出る御三方。待ち受けるは2体のモンスター。
B級モンスター、ブルオークだ。オーク系のモンスターの一種で、口元の牙が猪見たく前に突き出ており、しかも大きく鋭いのが特徴だ。
その牙の重さが影響しているのか、他のオークと違って前傾姿勢なのも特徴的だな。
それゆえ突進攻撃を良くしてくる、いわばオークの形をしたイノシシって感じのモンスターである。
いかにもな見た目通り、直進的な動きばかりしてきて牙の他に武器がないということもあり、先程の狼人間やシルバーアーマーほど難敵ではない。
それでもパワーはかなりのものなのだけど、A級たるに相応しいだけの実力を誇る御三方なら問題なく対処できる相手ではあった。
「いいか、くれぐれも鈴山と混同して説明したりするんじゃないぞ!? 《水魔導》、降れよ大瀑布!!」
「さすがに銃使いと魔導系使いをごちゃ混ぜにはできませんね……というわけで公平くん、私から鈴木の戦法について説明させていただきます。お手元の彼の探査者証明書をご覧ください」
「あっ、はい」
鈴山さんと混同されがちとかさっきも仰っていたけど、ここでも釘を刺す念の入れよう。同時に《水魔導》が発動し、先程と同じく彼の背後から滝めいた水の流れが出現する。
怖ぁ……なんか知らんけどやたらごちゃ混ぜにされてるっぽいのな。見た目も戦闘スタイルも全然違うんだけど、なんでだろう?
でもたまにあるからねそういう、全然違うのになんか別の人と勘違いされがちなのって。
雰囲気とかが似通うのかな? 鈴木さんの立ち居振る舞いは、言われてみれば鈴山さんに近いものがある、のかな?
そのへんの話は微妙にデリケートというか、普通に鈴山さんにも鈴木さんにも失礼なので内心に留めることとして証明書を見る。
横山さん、御陵さんに次いでの香苗さんの仲間。彼の実力やいかに、と。
名前 鈴木敦 レベル494 A級
称号 司令塔
スキル
名称 水魔導
名称 気配遮断
名称 直感
称号 司令塔
効果 パーティに指示を出す際、思考能力に補正
スキル
名称 直感
効果 モンスターの気配を感知し、死角からの攻撃を自動で回避する
俺の目から見て、まず最初に目を引いたのは《水魔導》……ではない。称号の《司令塔》とスキル《直感》だ。
前者はパーティ戦闘において大きな役割を果たすだろうレア称号だし、後者に至っては進化スキルだ。同じくレアスキルに当たる魔導系スキルと比較してもなお、それらの異様さが際立っていた。
「称号そのものは鈴木さんの個性や性格に合ったものが付与されたって解釈で良いと思うので、元からリーダーシップを発揮する方ってことなんでしょうけど……《直感》って。後衛がこんなスキルを? 《気配感知》を持った上で一定回数以上、敵の攻撃を紙一重で回避しないと進化しないやつですよこれ」
「! さすがは公平くん、《直感》の進化条件をあっさりと開示してくださいましたねメモメモメモり、メモメモメモり」
《直感》は一昨日、ちょうど自由研究のスキルについて調べる中で触れていた話だね。《気配感知》を取得した状態で一定回数、敵の攻撃を紙一重で回避すると進化してこのスキルになるのだ。
"紙一重"ってのがまた厄介な基準でね、これが。普通にスレスレで避けた程度の話でなく、どう考えても直撃は免れないタイミングでそれでもどうにか回避できた場合にのみカウントされるという、極めてシビアな判定をしてくるんだよ。
しかもそんな命知らずな真似を約100回、重ねなければ進化しないのだ。似たようなスキルである《金剛身》同様、獲得している探査者は極めて少ないものと言えた。
普通に考えてそんな危ない避け方する前にどうにか対処するからね、みんな。エリスさんやマリーさんのような百戦錬磨の達人達でさえ素の《気配感知》のままなのがいろいろ、すべてを物語っていると言えよう。
香苗さんがひとしきりメモをつけてから改めて話した。
「いかにも鈴木はパーティの頭脳役、戦闘時のリーダーにも近しい立場です。連携の起点も概ね彼ですし、コンビネーションのパターン構築も行っています」
「やっぱり。後衛ってことで視界も開けてそうですし、適切な役割だと思います」
「ええ。ですが……彼は同時に、ソロ探査者としての一面も持っているのです。パーティとして活動する傍ら、1人武者修行めいた形でソロ探査も行っているのですよ」
「え……!?」
「──行くぜ水鉄砲! IN GAIN・魔滅!!」
思わぬ説明。彼も俺みたく、ソロで探査を? しかもパーティ探査の合間に?
同時に鈴木さんの叫びが響いた。先程とは違う技──香苗さんとのコラボレーションではない、彼自身の本来の技が放たれたんだ!
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攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど
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