"御堂世代"の同期達
「カレチャかぁ。たしかに面倒くさかったなあ、あいつら」
「カナちゃんにちょっとでも近づこうと必死だったもんねー。あれ何年前だっけ、2年? 鈴山が大きめの怪我して入院してた頃だよね?」
「そりゃ俺のことだろ。ていうかそんなことあったのな」
「……うん?」
──と、話し込んでいると俺達に近づいてくる探査者がいた。
男性2人、女性が1人。みんな年若く、香苗さんと同じくらいの年かな。いずれも武装しているね。
なんだなんだと見てみると、彼らは陽気な調子で香苗さんに話しかける。
「あの時の御堂は学生達を塩対応ってかガン無視してて、俺らが取り繕うのに苦労したんだったか」
「あの頃のカナちゃん、本当にクールだったもんねえ。それが今では、うふふふ!」
「口元を歪めることさえ少なかった女帝が、なんともはや……救世主くんには感謝だなあ、これは」
何やら香苗さんと面識がお有りのご様子だ、この人達。っていうか口振りからしてはっきりと親しい感じが見て取れる。
実際、香苗さんも無表情ながら柔らかめの視線で彼らに振り向いたしね。
知り合い、どころではない付き合いだろう。香苗さんって割と初対面の人とかそんなに親しい人でない、親しくしたいと思わない人に対してはクールを貫きがちだし。
それに何より、女の人が香苗さんのことをカナちゃんと言っている……この人をそんなふうに呼ぶんだから、並大抵のことじゃないよね。他にはコミュ力おばけのリーベくらいだもの、あだ名で呼ぶのなんて。
俺の推測通りに、香苗さんはやはり面識のある感じで彼ら彼女らに応えた。
「奇遇ですね、3人とも。探査帰りですか? それとも今から? 他の3人も一緒ですか?」
「今から、都合のついたこの3人だけでな。っていうかこれから依頼を見繕うのさ。普段はアプリだけど、たまにゃあ寄ってみるかと来てみたら思わぬ出会いだ。そっちも依頼か?」
「見に来ているだけですね。青樹さんの見舞いの帰りです……こちらにおわす我らが偉大なる救世主にしていと尊き御方である山形公平様も、彼女を気遣い付き添ってくださいました」
「え。あ、ど、どうも……B級の山形公平です」
やっぱりそれなりに親しいみたいで、身内めいたやりとりをしている……んだけどいきなりこっちに話を振らないでよ困るよ!!
急に伝道師スイッチをちょっぴり入れた感じで俺を紹介してくるから、こっちも慌てて会釈するしかできない。
勘弁してよ、陰キャにとって友人の知り合い相手の挨拶ほど緊張と不安に苛まれる瞬間もなかなかない、わけじゃないけどそれなりにダメージ受けるんですけどぉ。
そんな内心の怖ぁ……をひた隠しにしつつどうにか名乗れば、お兄さん方とお姉さんは爽やかーに笑って、挨拶を返してくれる。
アッ、リア充の気配がする!
「初めまして、A級の横山だ。御堂の同期で一緒にパーティを組んでたりする。君のことは彼女から死ぬほど話を聞いてるぜ、山形くん」
「デビュー半年でB級って、マジでヤバいじゃん……あ、同じくA級でカナちゃんのパーティメンバー兼親友の、御陵でーす! よろしくね、救世主クン!」
「たしか鈴山のやつとは知り合いなんだよな、もう。俺は鈴木、A級だ。同期からはやけに鈴山と混同されがちな可哀想な鈴木くんだ、君は間違えないでくれよな」
「香苗さんの同期で、パーティメンバー……!」
ついにって感じだ、とうとうお会いできた!
今やS級探査者、ついこないだまではA級トップランカーとして世界に名高い探査者である香苗さんにも当然同期の探査者はいて、元々組んでいるパーティもあって、そしてそこでともに探査をしてきた仲間達ももちろんいる。
たしか香苗さん含めて前衛3人、後衛3人、サポーター2人という大所帯だとか。そのうちの前衛と後衛が2人ずつ今、この場にいるわけだね。
なんでも、彼女と同時期にデビューした探査者達をまとめて"御堂世代"と呼ぶそうだ。
香苗さんやアンジェさん、ランレイさんを筆頭にこの世代の探査者はやたら才能があり年若なのにA級まで登り詰めている人が多いことからも、探査者界隈のみならず、一般社会においても存在感を色濃く示しているらしいよ。
前々からお会いする機会があればぜひにと思ってたんだ、思わぬところで夢が叶ったなあ。
さらには香苗さんが俺に、3人について補足的な感じで紹介してくれる。
「横山は国内6人目のS級探査者、里見悟さんの弟子であり同期の中でも特に目立っていますね。御陵は能力者犯罪捜査官を目指しており勉強中の身です。鈴木は5年前、私とともにマリーさんの探査に参加した探査者の一人です……? いえ、あれ? それは鈴山でしたか?」
「いや俺で合ってるよ! 聞いたぞお前、GW頃に鈴山相手にも同じこと言って訂正されてたんだろ!? 覚えろよお前、そんな似てないだろ俺とあいつ!」
「ああ、失礼しました。なぜか印象がだぶるのですよ、あなた方」
「分かるわ……なんでか雰囲気というか、放つ空気が似てるんだよなお前ら」
「なんだよ放つ空気って……達人かよ……」
なんとまだ見ぬS級探査者さんのお弟子さんらしい横山さんに、能力者犯罪捜査官を志していらっしゃる御陵さんはさておき鈴木さん、ご自身で仰られた通り鈴山さんと混同されがちなんだな……
隣で横山さんと御陵さんも苦笑いしつつ頷いている。鈴木さんは鈴山さんほどスリムではなくがっしりしたスポーツマンタイプの体格をされていて似ても似つかないんだけど、不思議なこともあるもんだなあ。
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