万物のプロパティを確認できる山形の邪気眼チートを見よ!
そこから夕方くらいまで、俺達は揃ってシステム領域は都市部をぶらりと観光した。いやまあ、観光ってほどの名所があるわけではないんだけどね。
それでもそもそものデザインイメージがSFチックな近未来都市だ、空には透明なチューブが走っていてビルとビルを繋げ、そこを車っぽい何かのオブジェクトが走っていたりするといういかにもな光景が広がっているわけで。
ぶっちゃけ楽しい、チョー楽しい。
こういう未来志向好きなんだよね、俺。光溢れる明日って感じがして、味わい深いものを覚えるよ。
「車……のオブジェクトを走らせてるのか。中には精霊知能がいるのかな」
「はい、コマンドプロンプト! 各部署間の交渉、折衝、会議会合などの際の移動に用意したものです!」
「そ、そう」
観光してるとやっぱりというべきか、来た時にアフツストと一緒に出迎えてくれた精霊知能達が群衆めいてついてくる不思議な光景になっちゃっている。
今日はずーっと彼ら彼女らを引き連れてあちこちを見て回ってきた感じだね。
まるで下町を芸能人が歩く様みたいで苦笑する。
ミーハーとまでは言わないけれど、コマンドプロンプトがどんななのか直に見たい、できれば言葉を交わしたいって子もそれなりにいてくれるんだろう。
さてそんな中で俺の近くにやってきて、やたら熱心に都市について語る精霊知能の言葉に耳を傾ける。男性型の精霊知能で、カジュアルなシャツにパンツを履いた大学生のお兄さんみたいな人だ。
なんと彼こそがこの都市部のオブジェクト設置にメインで取り組んでくれた精霊知能らしい。いわゆるプロジェクトリーダーってやつ。爽やかイケメンさんで精悍な顔つきに笑顔がよく映えて眩しいリア充さんである。
「ちなみに便宜上ながら免許制ですよ。とはいえ実際に運転しているわけでもなく、空間転移の応用技術でしかありませんけどね!」
「あー、ワームホールの接続面にオブジェクト設置してるのか。"空間を繋げている"って概念そのものを道として解釈したわけだね」
「はい! ……あの、そんなに分かりやすかったですか? かなり精緻に偽装して、元はワームホールだと気づかれないようにこだわっていたつもりなのですが。少なくとも、これまでに見破った同胞は一人もいませんでした」
なるほど、車を移動しているように見えていても実際は空間転移──すなわちワームホールで異なるニ地点を移動しているのを、それらしいオブジェクトを被せて視覚化させているってことか。
しかもその正体に気づかせないようにとうまいこと隠している。そうだよね、気づいちゃうと興醒めに感じる精霊知能もいるかもだからね。すごく配慮されたこだわりぶりだよ、感心するわ。
ただ、それでも俺からすれば見抜ける範囲のものではある。これでもコマンドプロンプト、すなわちこの世すべての因果を司る基盤システムだからね。
今でこそ人間としてほとんどの権能をセーブしているけれど、それでも事象にまつわる現在やそこに至った過去の性質をある程度見抜くくらいはできる。
つまりはオブジェクトが何に被せられたかくらいは分かるんだよね、さすがに。
そのへんの偽装には自信があったのか、あっさり見抜かれて驚いているイケメン精霊知能。するとシャーリヒッタが俺に抱きついて、はしゃいだ様子で笑いかけてきた。
「さすがは父様だぜ! ありゃあオレの目から見ても相当上手いことやってるんだが、それでも即座に見抜いてらっしゃる!」
「うむ、ワタシでは見抜けないほどの完成度だ。精霊知能ではまずワームホールが元になっているなどと、知識としては持っていても実感としては理解できまい」
「コマンドプロンプトだからこそ分かる領域の話ですねー。そんなに落ち込むことありませんよー、あなたはよくやってます。偉い、偉い!」
「あ……ありがとうございます、お三方!」
精霊知能三姉妹も、都市部オブジェクトのこだわりや完成度には舌を巻いているね。褒め称えられて爽やかイケメン精霊知能も嬉しそうだ。ホッコリする。
ここに限らず現世や概念領域もだけど、あらゆる領域のオブジェクトやデータはすべてデータ領域と呼ばれる数億を越える次元の層から成立している。
つまり世界全体の構造ってほとんどすべて、データ領域なんだよね。そしてそのデータ領域にも因果律ってのは当然あるわけで、言い換えるならコマンドプロンプトの影響下にあると言える。
要するにあらゆるオブジェクトは元々俺に紐づけされているも同然なわけ。多少偽装工作されていようが本質的なところは俺には丸見えなんだね。
そのへんをアフツストやリーベが、青年はじめ周囲で話を聞いてくれていた精霊知能のみんなに話し伝えていく。
「本質的にはコマンドプロンプトあってこそのデータだからな。因果なかりせばこの世界はそもそも存在していないのだから、オブジェクトの本質を見抜く程度はむしろ本領の部分だろう」
「普通にワールドプロセッサ……世界維持機構と同格ですしねー。ワールドプロセッサがいないとコマンドプロンプトが機能しませんし、コマンドプロンプトがいないとワールドプロセッサは世界を維持できない。まさしく比翼連理ってわけですー」
世界維持機構と因果律管理機構。ワールドプロセッサとコマンドプロンプト。ともにお互いなくてはならない、世界という大きな演算装置における中枢システム。
精霊知能以下あらゆる物事がすべてソフトであるのに対して、ただ2体だけのハード側。それゆえ俺とあいつは二体で一対、不可分のパートナー同士なのだ。
これについてはこの世界だけでない、他のあらゆる世界についても同様だろう。
疑似人格があろうがなかろうが世界とは畢竟、ワールドプロセッサとコマンドプロンプトという二者が土台となって成立している箱庭と言えるんだね。
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