愛され系真面目天然古臭ノリ女神精霊知能、ミュトスちゃんに乾杯!
ミュトス絡みの話も一段落ついたことだし、今回のところはこれにて帰ろうか、という感じの空気になってきた。
現世の時刻にしてすでに昼過ぎ、システム領域全体を多少なりとも見て回るにはちょっと時間が足りなさそうだからね……それはまたの機会とするとして、サクッと都市部を見学して夕方を迎えたら山形家に帰ろうかと思うのだ。
「まさか異世界の神について、システム領域っていうかお前がここまでガッツリ絡んでたとは思いもしなかったからなあ。ミュトスの力試しも含めて、ちょっと情報過多まであるよ」
「そ、そのう、すみませんコマンドプロンプト様……せっかくのご帰省にとんだ水を差しちゃいまして、たはは……」
「いやいやとんでもない! むしろ今回君に会えて本当に良かった。今、現世で起きている事態への対抗策を知ることができたし、何より新しい精霊知能の仲間を快く迎え入れることができた」
やはりどこかノスタルジーな感じの振る舞いで頭を掻き、苦笑いするミュトスを宥める。
何やら恐縮してるけど彼女という、対ダンジョン聖教過激派における最重要ファクターであろう存在を事前に知ることができたのは非常に有意義だったよ、本当に。
三界機構の力をその身に宿す精霊知能ミュトス。真価を発揮するためには己の権能を取り戻す必要があるみたいだが……現時点でも瞬間的な火力においては全段解放シャーリヒッタに匹敵しているわけなので心強さがすさまじい。
早い話、俺に次いでの最高戦力がここに誕生しているってことになるからね。
まあ、とはいえそこまでの力を無制限に振るうことができるってわけでももちろんないみたいだ。
ワールドプロセッサから聞いた話を、俺は再度確認した。
「ミュトスにかけられた制限についてだけど……ワールドプロセッサ、俺、シャーリヒッタの3人のうちいずれかの意図に反した目的で力を行使した場合、任意で出力を封印できるんだな?」
「ええ。私とあなたはシステム領域の総責任者として、シャーリヒッタは直属の上司として。それぞれ、ミュトスの強大な力に枷をかける権限が与えられます」
「といってもオレの権限は最低限ですし、ワールドプロセッサも現世にいるわけじゃないですから。基本的には総責任者でありつつも現世にいらっしゃる、父様の御判断が優先されることになると思います」
コマンドプロンプトのアバター体としての山形公平が現世に住んでいるためか、俺は現地におけるシステム領域側の総責任者として今後、正式な形で扱われるらしい。
っていうかそうしたいみたいだ、ワールドプロセッサ本人が。現世ばかりに目をかけていられる立場じゃないし、対になる俺に現場監督を任せたいのも分かるよ。
まあ、責任だのなんだの言ってもやることに何か大層なものが付随するわけでもない。
以前同様に現世とシステムの間で双方を支えつつ、そこにミュトスの監督業務がつくってだけだ。
「責任重大だな……なるべくミュトスの自由を縛るようなことはしたくない。もっとも、ミュトスならそこまでしなくちゃいけないことをするとも思ってないけどさ」
本当は、誰かを縛ったり監視したりなんてするもんじゃないってのが個人的な本音ではある。
だからよっぽどまずいことをしない限りは自由にしてもらいたいところではあるんだけどね。正直、気まずさと申しわけなさはある。
そもそも彼女の場合、監督する必要なんてなさそうではあるのか? 短い間ながらその善性、慈愛と使命感はひしひしと感じていて、疑う余地なんてないように思える。
そんな気持ちから出た俺の言葉に、ミュトスは慈愛に満ちた微笑みで答えた。
「精霊知能として与えられた力を、与えられた役割に則り、システム領域の意向に沿う形でこれを行使する。これは新たな生、新たな力を授かった私が負うべき当然の義務と存じます。ですからもちろん従いますし、もしもこれに反したならば、その時はどうか遠慮なしに罰をお与えください」
「ミュトス……その、かつて神だったモノとして抵抗はないかな? 気位の高い方が多いからね、少なくともこの世界の概念存在は」
「まったくありません。そも私は水と豊穣、秩序と調和を司るモノ。精霊知能となっても根本は変わらないのですから、この世界の安寧のため、御身に従うことは当然のことと心得ております」
「君は……」
現世から仕入れたんだろうなんか変なノリを、一切感じさせない堂々たる態度。神だったモノとして、そして精霊知能となったモノとしての矜持に満ちた姿だ。
おそらくは元の世界においても、彼女はこのように振る舞われていたんだろう。水と豊穣、秩序と調和……いかなる世界においても尊ばれるべき、けれど実現の難しい理想を司ってきた神として何一つ瑕疵のない振る舞いと言える。
尊敬に値する。彼女こそは畏敬に値する神が精霊知能として昇華した、極めて特殊な存在たるに相応しい精神性の持ち主だ。
精霊知能のみんなも、心強い後輩の立ち居振る舞いに感心しつつもウンウンと頷いている。うーん後方先輩面。いや実際に先輩なんだけども。
「私も、いろいろと制限こそ設けましたがミュトスならば問題はないと信じています。与えられた力に恥じることのない、正しき行動をとってくれるでしょう。どうか無理せず、しかして奮励努力することを期待します」
「はい! 精霊知能ミュトス、粉骨砕身ガンバルンバ! なんちて」
「えぇ……?」
ワールドプロセッサ相手にもすかさずやるよね、そのノリ……
根深い現世の影響を垣間見て、なんやかやと笑う一同だった。
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