ここでオリジナルチャートを発動します(いつもの)
戦闘、というかある種の試練というべきか? ともかくミュトスの力を見届けて俺達は、またしてもワールドプロセッサによって教室に早変わりした空間にて着席していた。
今度はワールドプロセッサも生徒側の席に着いている。その隣の席にはすべてを出し切って疲労困憊した様子のミュトスが、机に突っ伏して何やら呻いていた。
「どひー、はらほろひれはれー……疲れちゃいましたよ、トホホー」
「お、お疲れ様ミュトス……その、いろいろと驚かされたよ」
「大丈夫ですかー? ベッドのオブジェクトでも設置すれば寝ますー? あ、それこそ保健室とかー」
「放っておいても回復するだろうが、無理をしてはいかんぞ」
断獄の力を借りての一撃は、本当に彼女にとって全身全霊だったんだろう。アーマゲドン・アポカリュプシスだったかな? たしかにとんでもない威力だったからね、そうなるのも無理はない。
コミカルな疲れ方をしているものの実際は真面目に消耗しているのは誰の目から見ても明らかだよ。
それゆえかリーベやアフツストがしきりに心配そうな眼差しを向けているね。
まあ、とはいえ魂にまで影響が及ぶほどでもないからしばらくすれば全快するだろう。ミュトスもそれは自覚しているのか、ありがとうございますとだけ言って固辞していた。
「ワールドプロセッサ、どういうことだ。なぜ三界機構の力がミュトスに宿っている。かのモノ達をあなたは一体、どうしたというのだ」
「三界機構そのものは決戦スキル保持者達の奮闘によって無事、自我を取り戻して自壊したのはオレも当然ながら確認しているぜ。つまりあんたはそれ以降、輪廻に受け入れられようとする3体に何かを仕掛けたってことになる。説明してくれよ、何をしたってんだ、オレにさえ一言もなくよォ?」
一方でヴァールとシャーリヒッタはワールドプロセッサを見て、というかもはや睨みに近い形で見据えている。
怖ぁ……それなりにマジギレしてるよ。まさか三界機構まで絡んだ話になっているとは思ってもいなかったからか、特に因縁浅からぬヴァールの顔がかなり険しい。
シャーリヒッタもシャーリヒッタで、ワールドプロセッサの補佐役としての自分を差し置いてここまで独断で動いていると予想してなかったんだろう。
両者揃っての追及の視線に、当のやらかした本人はしかし、一切揺るがずの悠々たる態度でもって受け入れていた。
「何をしたのか、という問いに対してはこう答えましょう──三界機構に取引を持ちかけ、精霊知能ミュトス構築のための礎となっていただいた、と」
「取引だって? いつの間にそんなことを……」
「自我を取り戻し崩壊していく中で、かの3体の魂を私の下に引き寄せました。そして異世界の神にまつわる事情と経緯説明を行い、協力を要請したのです。3体とも快く受け入れてくださいました」
「邪悪なる思念との決戦の直後に、すぐさまそんなことをしてたんですかー……?」
呆れ返ってリーベがつぶやいた。控えめに言ってもドン引きの様相だ。
あの最終決戦の直後にすぐさま次なる展望を見据え、敗れ去ったモノ達でさえも己の目的のために利用せんと取引を持ちかけた──なんともはや、全力で暗躍してるねこのワールドプロセッサさん。
おそらくは150年前、ミュトスの魂を確保した時点で三界機構に取引を持ちかける画は描いていたんだろう。
その頃はちょうど世界がセーフモードに入り、オペレータ計画からアドミニストレータ計画までの企画立案にリーベが取り掛かり始めた時期と前後するしね。
そこから推測して、俺は当時のワールドプロセッサの腹の中を推理して語った。
「邪悪なる思念を倒し世界を正常な状態に戻すことに成功した、という前提条件を踏まえて考えた時……直後に異世界の神の権能に絡む問題が浮上してくるのは間違いなかった。それゆえにお前はその対応にも多少のプランを練らざるを得なかったんだな? もちろん邪悪なる思念に勝たなきゃ話にもならないから、誰にも言わず、自分の中だけで構想を練ったんだ」
「そうなりますね。魂だけとなったミュトスを、精霊知能として変質させるために必要なリソース確保……邪悪なる思念の端末を利用することは完全に予定外でしたが、三界機構についてはある程度、当初から考えていたプランでした」
「……さしものお前も、まさか俺が抜け殻同然の端末にさえ手心を加えるとは思ってなかったのか。何がどう転ぶか分からんもんだなあ」
元は概念存在だったミュトスの魂を、精霊知能の規格に適合させる。そのためのリソースについてワールドプロセッサは当初から、三界機構を利用してのプランをメインに考えていたみたいだ。
まあ、ミュトス絡みの話がどうあがいても邪悪なる思念を倒してからじゃないと対応できないだろうから、必然的に三界機構もどうにかして倒した体で考えるべきだからね。
ただそこに、邪悪なる思念の端末体のリソースが加わることまでは想定外だったみたいだ。
まさか邪悪なる思念討伐役のアドミニストレータが、こともあろうに敵対者に向け弔意を示しがてら、決戦においては無駄と言っていい行為に出るとは想定してなかったんだろうね。
ただそれを即座に逆手に取ってミュトス構築のリソースとして回収したのはさすがだ。
思えばこいつ、邪悪なる思念の侵略によって流入してきたスキルやレベル、ダンジョンやモンスターの概念を逆手に取って対抗策を練っていたものな。
アドリブを利かせての大逆転なんて、この500年ですっかり手慣れたものってわけか。
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