表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1105/1836

まただよ(笑)、もはや暗躍はワールドプロセッサのお家芸なのか

「現在、委員会と称して徒党を組み現世にて活動している概念存在達。かのモノ達の目的や扱う技術のいくつかに、システム領域が関係する事項があるのはすでにご存知のはずです」


 学校の先生さながら──格好は女神的ローブ姿だから絶望的に風景とはそぐわないけど──説明を始めるワールドプロセッサ。

 やはり話すべきは概念存在達、とりわけ現世においてこの100年、数多の暗躍と騒動を引き起こしてきた委員会を構成しているモノ達についてが主らしい。


 彼らの目的は数日前の、倶楽部幹部からの取り調べでも判っている通りだ。自分達の復権。

 ダンジョンやモンスター、並びにオペレータによって己達の存在理由を貶められたと思い込んだ末の、それらシステムそのものの掌握と支配こそが最終目標地点と言えるのだろう。

 俺はワールドプロセッサへと答えた。


「大ダンジョン時代社会の支配。そしてそのためのバグスキル、スレイブモンスター、スレイブコア……そして異世界の神」

「はい。バグスキルについては倶楽部壊滅とともに粛清が完了されましたが、残りについては依然、向こうに手段が残されているままです……とりわけ異世界の神。アレに至ってはそもそもが我々由来ですらない、正真正銘のストレンジャーと言えますね」

 

 倶楽部三幹部が個別に保有していたバグスキル、あれは本質的には委員会案件とは別の問題だったためにすぐ対応できた。

 だがスレイブモンスターやスレイブコアについては、こないだの取り調べの際に鬼島が言っていたのを信じるならばすでに委員会に技術ごと情報が渡っており、そちらへの対処は引き続き行っていかねばならないだろう。

 

 何よりも、異世界の神の問題がある。

 150年前、概念領域はギリシャ神話圏にて発見された権能だけの存在……システム領域に由来するモノでさえない、本来この世にあるはずのない力そのもの。

 未だ謎が多いその権能については、何をどうすれば良いのかってとこから考えていかねばならないのが実状だ。

 

 残る課題、対応していかねばならない問題は多い。

 だがその内の一つに対して、ワールドプロセッサは対策を講じているのだと言う。

 

「異世界の神については、実のところ私のほうでも対応策を用意しています。今回みなさんをお呼びしたのは、実際にその策を見ていただきたいがためのこと」

「対応策?」

「ええ。とは言ってもこれは完全に偶発要因から成るものでして……有り体に言うなら"偶然、かの神に対抗できる手段が見つかったから利用している"形になりますね」

「ふむ……?」

 

 興味深い話だ。そんなポンポンと偶然、異世界からやって来た神に対抗できる策に巡り会えるものなんだろうか?

 周囲の精霊知能達を見る。リーベやヴァールはもちろんのこと、シャーリヒッタやアフツストまで困惑しながら、難しい顔をしてワールドプロセッサを見ている。

 

 おいおい……これってまさか、またなのか。

 アドミニストレータ計画の遂行でそれどころじゃなかった前者二人はともかく、後者二人は立場的に知っててもおかしくないというか、知ってるべきなんだけど知らなさそう。

 といつことは、つまり。リーベがうんざりしたような声で呻いた。

 

「……またですかー! また誰にも言わずにしれっと一人で暗躍してたんですかー!!」

「言うまでもなく、邪悪なる思念への対抗こそが最優先事項でしたので。ハッキリ言えば些事に等しい事柄にあなたがたのリソースを回す必要はなかったため、こちらでひとまず預かりとしていました」

「にしたってアンタ、オレくらいには言っといてくれよォー!? なんのための補佐役なんだよ、なあ!?」

「対抗手段になりえる情報を得たのは150年前でしたが、それが本格的に成立したのはつい一月前でした。あくまでソースの一つでしかなかった以上、精霊知能と共有する必要性はないと判断していました」

 

 怖ぁ……紛糾してるよ、当たり前だけど。

 例の悪癖、情報共有の少なさを面と向かって追及するリーベとシャーリヒッタ。対するワールドプロセッサも、可能性だけの段階で言う必要はなかったと白々しいほどの微笑みとともに答弁している。

 

 っていうか、情報を得たのが150年前って。もはやその時点で諸々事情を察せなくもないぞ、これ。

 思えばワールドプロセッサは異世界の神について、その存在自体を以前から知ってたっぽいんだよね。精霊知能三姉妹も以前、その可能性に言及してたし。本人は知らぬ存ぜぬを決め込んでたらしいけど。

 

 それが今回、こうして打ち明けることになったのは進歩といえば進歩だろう。いい加減、秘密主義止めろよと声を揃えて言われたことで彼女なりに変わろうとしているんだとは思う。

 その結果こうしていきなり爆弾落としてきたのは、一言で言ってそういうところだぞって感じだけど、ねえ。

 俺は挙手とともに、彼女に確認を取った。

 

「ワールドプロセッサ。その情報を獲得したのは150年前、それが明確に異世界の神に対抗し得るプランとして成立したのが1月前って言ったな?」

「ええ、コマンドプロンプト」

「…………ってことは、お前。委員会に渡った異世界の神の権能以外の部分、すなわち魂を自分の手元に引き込んだんだな? 150年前、かの神がこの世界に漂着した時点で。そして事態の成り行きを知ったと」

「そうなります。人格と能力、2つに引き裂かれた神のうち人格はシステム領域に迷い込みました。そこを私が保護したのです」

 

 ──やっぱり! 案の定な答えに吐息を漏らす。

 権能だけの神がいるなら、分かたれた人格はどこ行った? とは前から疑問だったんだよ。

 早期の段階でワールドプロセッサが確保していたとは畏れ入る。そのものずばり、一次ソースを初手から引き入れてたんじゃないよ、こいつ。

本日12/29から来年1/3まで昼12時にも更新しますー

また来年1/1昼12時からは新作「大ダンジョン時代ヒストリア」を公開しますのでよろしくお願いいたしますー 

ブックマーク登録と評価のほう、よろしくお願いしますー


 【ご報告】

 11/30からの利用規約の変更に伴い、書籍販売サイトのURLを直接紹介することができるようになりましたので、改めて宣伝いたします。


 攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど

 書籍版、コミカライズ版併せて発売されております!


 書籍版

 一巻

 amzn.asia/d/iNGRWCT

 二巻

 amzn.asia/d/aL6qh6P


 コミック

 一巻

 amzn.to/3Qeh2tq


 電子版、書籍版、コミカライズともに好評発売中!

 みなさまにお求めいただければさらなる続刊、続編も視野に入っていくと思いますのでなにとぞ、よろしくお願いしますー!


 またコミカライズ版スキルがポエミーも好評配信中!

 下記URLからご覧いただけますのでよろしくお願いします!

 pash-up!様

 https://pash-up.jp/content/00001924

 はじめ、pixivコミック様、ニコニコ漫画様にて閲覧いただけますー!

 

 

 加えて、こちらは予告になります。

 来年、2024年1月1日昼12時より新作「大ダンジョン時代ヒストリア」を公開いたします。

 こちらは本作「攻略! 大ダンジョン時代」の外伝的な立ち位置になりますが……

 作中において100年続いた大ダンジョン時代を、その始まりから現代に至るまでに起きた出来事を断片的に、かつ短編連作的に描いていくお話になりますー

 

 本作に登場している年長さんキャラクター達の若い頃や、本作時間軸においてはもういないですが主要人物の縁者であり重要人物であるキャラクター達がたくさん出てきます。

 マリアベールさん18歳とか初代聖女さんとか、星界拳始祖さんとか、伝道師のひいおじいさんなども出ますので興味のある方はぜひ、ご覧くださいませー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 読み返して思ったんだけど、「ギリシャ神話領域で…」ということは、「黒幕」は「そういうこと」なんでしょうか? ※あそこの「主神」もいろいろやらかしてる…って聞いたことがあるし…。
[一言] 分かたれた権能の方も確保できたら、元の持ち主に返せるのですか?
[一言] なんか怖い(?)想像しちゃってるんだけど…… 味方と思ってたのが実は… まさかラスボスじゃないよな?>ワールドプロセッサ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ